F1︰予選エンジンモード禁止、メルセデスに有利?「25周分のパフォーマンスゲインに繋がる」
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予選エンジンモードの禁止は、”圧倒的な差での”フロントロー独占の機会をメルセデスから奪うかもしれないが、チャンピオンシップへの影響は微々たるもの、場合によっては利する可能性もある。チーム代表のトト・ウォルフはそのように考えている。
具体的な詳細についてはまだ明かされていないものの、週末を通して単一のパワーユニット(PU)モードの使用を義務付けるためのFIA技術指令書が、次戦F1ベルギーGPを前に発効される見通しとなっている。これはすなわち、予選モードの禁止に繋がる。
各々のパワーユニットメーカーは現在、呼称は様々であるものの、週末のセッションを通して様々なモードを運用している。フリー走行ではエンジンに優しい低負荷仕様のモード、決勝では性能と負荷のバランスが高次元で統合された仕様のモード、そして予選ではハイパフォーマンス仕様のモードというように。
多様なモードが存在する背景の1つには、レギュレーションによるPUの使用基数制限がある。規約はPUの全6コンポーネントに対して1シーズンに使用しても良い基数を定めており、これに違反した場合はグリッド降格ペナルティが科される。無制限にPUを投入できるのであれば、エンジンへのダメージを考慮する低出力モードは必要ない。
ルイス・ハミルトンは予選モードの禁止措置について、「自分たちの優位性を奪い去ろうとする試みである事は明らか」であるとした一方、それを企んだ者達の「望む結果につながるとは思わない」と語り、リザルトに影響を及ぼす可能性を除外しているが、トト・ウォルフ代表は逆の意味での影響がある考えている。
「もしF1がシーズン中にパワーユニットのモード変更を禁止する事になれば、実際のところ、それは我々のレースを助ける事になるだろう」とトト・ウォルフ。
「予選Q3の数ラップで受けているパワーユニットへのダメージを避ける事ができれば、ダメージメトリックスが劇的に低下する事となり、その分をレースで使える様になる」
「つまり、予選モードを使用していた5周分を、エキストラパフォーマンスとして決勝での25周分に回せるという事だ。我々はこの措置が自分たちにより多くのパフォーマンスを与えてくれると考えている」
アルファロメオのキミ・ライコネンに言わせると今季のフェラーリ製PUには予選モードがないようだが、週末を通してシングルモードの運用を義務付けるルールは全ての陣営を対象とするものであり、その影響はメルセデスだけでなく、ホンダ、ルノー、フェラーリにも及ぶため、程度の差こそあれ1発のラップタイムで妥協を強いられるのはライバルも同様だ。
「私はそうなるとは考えていないが、たとえ予選で我々が陥れられる事になったとしても、それはコンマ数秒に過ぎず、同じことは他のすべてのライバルにも言える。(予選モード禁止の影響を考える上では)この点を考慮しなければならない」とトト・ウォルフは付け加える。
「我々は常にパワーユニットを限界まで活かし、そのパフォーマンスを絞り出そうとしている。そのため予選モードが制限されるのであれば、我々は決勝レースで強さを増すことになる」
マックス・フェルスタッペンを始めとするレッドブル・ホンダ陣営が度々言及している通り、RB16が予選よりも決勝で高い競争力を発揮する傾向にあるのは、メルセデスがホンダを上回る強力な予選モードを備えているからだと考えられている。トト・ウォルフの指摘を単純に当てはめれば、予選モードの禁止によってレッドブル・ホンダが得る決勝でのゲインはメルセデスよりも限定的となる。