F1新車解説 マクラーレンMCL35M:”黒塗り”に隠された複雑奇怪なバージボード…メルセデスPU搭載でホイールベース拡大
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英国シルバーストン・サーキットでのシェイクダウン時の映像や画像が公開された事で、マクラーレンの2021年型F1マシン「MCL35M」の”真の姿”がほんの少し明らかとなった。
結局のところ敵に対して事前に手の内を見せる理由はなく、新車発表からプレシーズンテスト、そして開幕戦と、マシンはその姿を変えていく事になる。特にローンチイベントの際に公開されるレンダリングが実車と異なるのは珍しい事ではない。
”黒塗り”に隠された複雑奇怪なバージボード
ウォーキングの名門チームは15日(月)、全10チームの中で先陣を切って2021年シーズンに投じる新車を発表。レンダリング画像を公開した。
ホモロゲーションを受けてアップグレードが殆ど認められていないため、ノーズを始めとする一部が昨季最終形と同じ様に見えるのは当然だろう。ましてや容易に交換可能なボルトオン式のフロントウイングに主だった変更が見られないのも頷けるが、その一方で空力関連の変更は些細な範囲に収まっていた。
2021年の技術規約変更の目玉は、フロア形状の変更を含むダウンフォース削減を目的とした空力に関わるものであり、またメカニカルコンポーネントとは異なり基本的に空力面の開発は可能であるため、公開されたレンダリングのエアロが”本物”の「MCL35M」と異なるであろう事は広く予想されていた。
企業秘密は出来るだけ隠しておきたい…そんなチームの思いはシェイクダウンで鮮明となった。
英国シルバーストン・サーキットでシェイクダウンを行うマクラーレンMCL35M
初の実地走行を経て公開された画像の殆どはマシン前方からのショットであり、バージボードやフロア、ディフューザー周りの詳細が確認できる構図のものはなく、ピットレーンで撮影された集合写真に写るMCL35Mに至っては、その一部が”黒塗り”にされていた。前から見る分にはどうぞ。でも横はダメというわけだ。
これを見る限り、特に秘密にしておきたいのはバージボード、フロア、リアウイング翼端板とも思われるが、これ自体がMCL35Mの真のトリックを秘匿するためのブラフなんて事もあるかもしれない。何しろ気づいて下さいと言わんばかりに画像加工が露骨過ぎる。
しかしながら全てを隠し切るというのも簡単な事ではなく、走行映像に処理を施したところ非常に複雑なバージボードの一端が明らかになった。リアタイヤ前方のフロア部分にダクトというか整流フィンのような形状が写っているのも気になるところだ。
シェイクダウン時の「MCL35M」とレンダリングイメージの比較
ただ、テクニカルディレクターを務めるジェームズ・キーが説明しているようにエアロ面はフィックスしておらず、開幕戦までに更なる変化が加えられる可能性もある。
メルセデス製PU搭載で軸距拡大
パワーユニットはアーキテクチャの根幹に関わる重要部品であり、メルセデス製PUはエンジンやバッテリーなど、その多くのコンポーネントが昨年までのルノーとは異なる形状をしている。そのためマクラーレンは実質的にマシン全体を再設計する必要があった。
とは言えコスト削減の一環として2トークン制の開発制限が設けられたため、チームはPU載せ替えに際して必要となる作業を優先せざるを得ず、載せ替えなければ開発を進められたであろう箇所に目をつぶらなければならなかった。
メルセデスエンジンへの切り替えに際しては、モノコック、ギアボックス、燃料・油圧周り、電装系、冷却システムが一新され、更にはギアボックスのベルハウジング(クラッチハウジング)が長くなった事でホイールベースが若干拡大された。
レンダリング上ではややローレーキ化(マシンを横から見た際の傾斜が緩くなった)されたようにも見えるが、ホイールベースが長くなったためにそう見えるだけなのかもしれない。
新車発表に際して公開されたレンダリングの中で、昨季型と比較して最も大きな変化が見られた部位の一つがボディーワークだった。内部に収められたメルセデス製パワーユニットがルノーよりコンパクトである事を指し示すものとも思われるわけだが、チームによるとボディーワークに関わる変更部分の殆どはPUの切り替えとは無関係であり、そのコンセプトは原則として昨季型MCL35と変わらず、単に開発の進化の表れだとしている。
規約変更に伴うリア側ダウンフォースの削減を補うべく、MCL35MにはツインTウィングが装着される。前後バランスを如何に取るかが課題の一つ。
バーレーンテストまで後1ヶ月。中東でお披露目されるMCL35Mは一体どのような姿をしているだろうか。