F1ルール解説: 2段階のパワーユニット凍結、第1回テスト後に早くも第一期限…2023年以降も変更可能な部位と例外
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現行の1.6リッターV6ハイブリッド・ターボエンジンがF1に導入され8年が経過した。2022年はレギュレーションによってパワーユニット(PU)開発が凍結されるが、それは2段階で行われる。また、2023年以降も変更が許されるパーツ並びに例外も存在する。
2026年には100%持続可能な燃料を使用するMGU-Hを廃止した次世代ハイブリッドPUが採用される。現行PUは既に成熟期を迎えており、開発の費用対効果は低下しつつある。
凍結のメリットはカスタマーチームの金銭的負担の低減だけではない。メーカーは新たな時代のエンジン開発にリソースを回す事ができる。
開発が凍結される9種と期限
2022年にホモロゲーションが必要なのはICE(内燃エンジン)、ターボチャージャー、MGU-K、MGU-H、ES(バッテリー)、CE(コントロール・エレクトロニクス)、エキゾースト・システム、燃料、エンジンオイルの9種類だ。
いずれも今季は1度限りのアップグレードが認められているが、以下のように別個のデッドラインが設定されている。期限を過ぎての仕様変更は禁止される。燃料やオイルを含め、2023年から2025年まで新たな開発物を投入する事は認められない。
コンポーネント | 凍結期限 |
---|---|
ICE | 2022年3月1日 |
ターボチャージャー | 2022年3月1日 |
MGU-H | 2022年3月1日 |
MGU-K | 2022年9月1日 |
ES | 2022年9月1日 |
CE | 2022年9月1日 |
エキゾースト | 2022年3月1日 |
燃料 | 2022年3月1日 |
オイル | 2022年3月1日 |
パワーユニット・メーカーは国際自動車連盟(FIA)に対して「ホモロゲーション・ドシエ」と呼ばれる資料を提出する。FIAは審査を経て14日以内に承認を行う。
凍結期限は2回に分けられた。ICE、ターボチャージャー、MGU-H、排気系、そして燃料及びオイルに関してはバルセロナテスト(2月23~25日)後の3月1日に早くも凍結される。ホンダやフェラーリ、ルノー、メルセデスが目下、改善に注力しているのはこれらのコンポーネントだ。バーレーンでの開幕実戦投入を待たずに最終仕様を決定しなければならない。
MGU-K、ES、CEに関してはサマーブレイク明けの第14戦ベルギーGP後、9月1日に期限を迎えるため、まだ幾らかの猶予がある。
2023年以降も変更が認められる場合
例外も設けられている。技術規定は「信頼性、安全性、コスト削減、または最小限の付随的な変更のみを目的とした」変更を認めている。一旦信頼性に関わる問題が発生すれば、そのメーカーのPUを使うチームは以降4シーズンに渡ってその問題に悩まされ続ける事になる。
変更の申請はFIAテクニカル部門にて書面で受け付ける。メーカーは必要に応じて問題が発生しているという明確な証拠を出さなければならない。妥当性を判断するためにFIAは、提出された書面を全メーカーに配布し見解を募り、変更の可否を判断する。
なお、排気系や各種配線、ターボ/コンプレッサー/ウェイストゲートの位置など、シャシーに搭載するに際して調整が必要な部位も存在する。これらに関してはFIAの承認を得た上で「最小限の変更」が認められている。
更に燃料とオイルに関しても、性能の追求を目的としたものではなく商業的な目的であれば変更が認められる。
加えて、上記に関わらずバラスト、フライホイールやPU/オリフィス間のブリーザー・システム・ダクト、ヒートシールドとその取り付け金具、ヘッダータンク、熱交換器関連、一部の燃料供給ポンプ等は2023年以降も引き続き変更する事が可能だ。