大半のドライバーが歓迎したF1最速ラップボーナスポイントの廃止、125レースのデータが示す実態
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ファステストラップを巡るチーム戦略は、レース終盤やチャンピオンシップ争い終盤の注目ポイントとして機能してきたが、2024年シーズン限りで廃止されることが決定した。
F1では2019年シーズンを前に、決勝レース中に最速ラップを記録したトップ10フィニッシャーに1点のボーナスポイントを付与する制度が導入された。
このわずか1ポイントを巡る攻防は、タイトル争いの当事者だけでなく、普段、一貫してポイントを獲得することが困難なミッドフィールダーにも刺激を与え、レースに新たなスパイスを加えた。
しかしながら、世界モータースポーツ評議会(WMSC)は2025年の競技規定を改訂し、ファステストラップに対するボーナスポイント制度を廃止することを決定した。理由は明らかにされていない。
様々な見解があるのは確かだが、現役F1ドライバーの大半は廃止を歓迎しており、惜しむ声は少数派だ。
実力とは無関係の茶番、と否定派
ボーナスポイントについてカルロス・サインツ(フェラーリ)は、エンターテインメント性を付与するだけの茶番だったと考えており、「必要ないと思っていた」と全面的に否定した。
「結局のところ、このポイントはレース終了の1周前にフリーストップが可能なドライバーに与えられることが多い」
「これが本当に最速のドライバーに与えられるなら意味があるけど、大抵は偶然や運、レース状況によるもので、実力を反映しているわけではないからね」
エステバン・オコン(アルピーヌ)も同様に、「レースは勝つために戦うものであって、必ずしも1周だけ最速を刻むために戦っているわけじゃないし、このシステムを良いと思ったことは一度だってない」と疑問を投げかけた。
また、ケビン・マグヌッセン(ハース)は「トップ10に入っていても、フリーストップが得られる状況は本当に稀で、僕らにとっては全く無関係のシステムだった」と述べ、中団チームにとってボーナスポイントを狙える状況は皆無だったと指摘した。
メルセデスのジョージ・ラッセルも「廃止を惜しんだりはしない」と語り、この「少しばかり奇妙」なシステムの欠点を指摘した。
「冴えないレースを戦っているドライバーがピットに入り、新しいタイヤを履いてファステストを記録することが多かった。実際には、5~10番手を走るドライバーが、そのチャンスを得ることが多く、実際にそのレースで一番速かったドライバーに与えられてきたわけじゃないしね」
制度に対する批判の背景
2019年の導入以降に行われた125レースの中で、「最速のドライバー」、つまり優勝者がファステストラップを刻んだレースは37回、29.6%に過ぎなかった。
また、トップ11以降のフィニッシャーがファステストを記録した例は14回あった。この全てが、というわけではないが、この中には、自らがポイントを獲得できないにも拘らず、他チームのポイント獲得を妨害する目的で記録されたケースもあった。
レース終盤に新品のソフトタイヤを履いたドライバーと、ポジションを最大化すべく何十周にも渡ってタイヤをマネジメントしたドライバーとのラップタイムに差が生まれるのは必然で、ファステストラップが必ずしも最速のドライバーを称えるものでないことは確かだ。
廃止を惜しむ声
とは言え、このルールの廃止を惜しむ声もある。ランド・ノリス(マクラーレン)は、このルールの存続を望んでいた少数派の一人だ。
「どうして変更されたのか、さっぱり分からない。個人的にこのルールは気に入っていたんだ。何か別のことをするチャンスがあるという点でね」とノリスは語った。
「時にはリスクを取って挑戦する価値があったし。リスクというのは、ピットストップで失敗したりといったことだけど、それも競争の一部だ」
セルジオ・ペレス(レッドブル)は、「特にタイトル争いが熾烈な状況で、それが大きな違いをもたらすようなレースもあった」として、1シーズン全体で24ポイントに達する点を強調した。
「あまり賛同できない。かなり良いアイデアだと思っていたから、どうして変更されたのかよく分からない」
一方で、グリッド上で最も経験豊富なフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)は、ボーナスポイント廃止が大きな影響を与えるとは考えていない。
「僕はキャリアの90%を通して、このポイントがない状況でレースをしてきたけど、何の問題もなかった。だから、これが最善の策だと判断されたのであれば、それを支持する」とアロンソは語った。
今後の影響
ボーナスポイントの廃止によってレース戦略にどのような影響があるかは、2025年シーズンを通じて注目されるだろうが、多くのドライバーにとっては、特に気にする必要のない変化のようだ。