【F1】10年以内に完全なEV=電動化の可能性…内燃エンジンを放棄しフォーミュラE化?

電動モーターを搭載するフォーミュラEマシンcopyright Sam Bloxham/LAT/Formula E

市販車の電動化が急速に進む中、4輪フォーミュラの世界最高峰を自認するフォーミュラ1は、2018年現在ハイブリッドエンジンを使用しており、新たなレギュレーションが発行される2021年以降もこれを継続する見通しとなっている。だが、今後5年、あるいは10年以内に完全なEV化を果たす可能性が浮上した。

フォーミュラ1のモータースポーツ担当マネージングディレクターを務めるロス・ブラウンは、F1の将来的な電動化を阻害する要素は存在しておらず、10年後のエンジンが内燃機関である保証は何処にもないとの見解を示した。

「F1はスポーツとしての適切なバランスを保ちつつ、世界的動向との調和を考え、ファンに対するエンゲージメントのある方向に発展していくと考えている。5年あるいは10年という年月で見た場合、今とは違う種類のパワーユニットの必要性や希望といったものがあれば、我々としてはそれを受け入れる事になると思う。将来的にF1の電動化を阻害するものは何もない」

「F1が永遠に内燃エンジンにこだわる事はないだろう。10年前に現在の状況を予測できた人間がどれほどいただろうか?それを思えば、今後10年で我々がどこに向かうかは誰にも分からない。ただ言えるのは、F1は正しい方向に向かって進んで行くだろうという事だ」

F1にも及ぶ世界的なエコ化の流れ

自動車産業は今、100年に1度の変革期にあると言われ、日本のみならず世界中で急速にEVシフトが進んでいる。欧州ではイギリスやフランスを中心に旧来の内燃エンジン車両を廃止する方針を発表。日本を代表する自動車メーカーの一つであるトヨタも、2025年を目処にエンジン専用車の廃止を明言している。

誰もが知る大手自動車メーカーの参戦なくして、競争力・訴求力の維持、マネーの呼び込みは難しく、F1とて産業界の動向とは無縁ではいられない。ファンや関係者が愛してやまない轟くような爆音を捨ててまで、運動エネルギーと熱エネルギーを回生するハイブリッドがF1に導入されたのは必然。2014年以降、F1は1.6リッターの小排気量エンジンに2つのハイブリッドシステムを統合したパワーユニットを採用している。

化石燃料を使用しない電気自動車のモータースポーツは、現時点ではFIA フォーミュラE選手権のみが存在する。2014年9月に初開催された同シリーズは、大気汚染や騒音といった問題が生じないことを強みとして、パーマネントサーキットではなく世界各国の大都市の市街道路を利用したストリートサーキットでレースを開催。年々知名度を上げながら、今年12月15日に第5シーズンの開幕を迎える。

未熟ながらも破竹の勢い示すフォーミュラE

ブラウンは現在のフォーミュラEについて「レースとしてはまだまだ幼稚」だと述べる一方で、その方向性やレース以外の領域すべてを総合的に考慮した場合、敬意を払うべきシリーズに成長していると言及。ただし、それを倣ってF1が一気に電動モーター化する事には慎重な姿勢を見せている。

「現在F1に参戦しているエンジンメーカーは、内燃エンジンを伴う今のパワートレインにコミットしているわけで、急進的な変化が必要かと言えばそうは思えない」

「現時点では、フォーミュラEのレースはモーターレーシングとしてはかなり幼稚であり、F1と比較すると単調と言わざるを得ない。マシンは取り立てて速いわけではないし、著名人を輩出しているわけでもない」


2018/19シーズンに導入される予定の第二世代フォーミュラEマシン

2017/18シーズンのフォーミュラEマシンは、幅を除けば2016年型のF1マシンサイズとほぼ同じ寸法を持つものの、搭載される電動モーターの最高出力は、1000馬力のF1マシンを比べると見劣りする270馬力。最高速度は225km/hに制限されている。

とは言え、今年末に開幕する第5シーズンのマシンは最大335馬力に増強される見通しで、トップスピードは時速300kmを超えてくる可能性がある。これから先の10年というスパンを経てなお、フォーミュラ1が世界の頂点に立ち続けられる保証はない。

フォーミュラEに勢いがある事は、参戦する自動車メーカーの数を見ても明らかだ。F1には現在エンジンサプライヤーを含めて計4社が参戦しているが、フォーミュラEの第6シーズンのエントリーリストには、日本の日産を含めてメルセデス、アウディ、BMW、ジャガー、ポルシェ等、11社が名を連ねている。

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