目を疑うホンダ1-3の劇的結末!不遇DNFもフェルスタッペンが選手権首位を維持 / F1アゼルバイジャンGP《決勝》結果とダイジェスト
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例年、大波乱のレースを演出してきたバクー市街地コースに例外はない。6月6日の2021シーズンFIA-F1世界選手権 第6戦アゼルバイジャンGP決勝レースもまた、目を疑うような劇的結末を迎えた。
2度のクラッシュと4台のリタイヤを出し、赤旗による中断を強いられたこの日のレースでは、6番グリッドからスタートしたセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)が油圧トラブルによるリタイヤの危機を乗り越えてキャリア2勝目を飾り、2位にセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)、3位表彰台にピエール・ガスリーが滑り込む結果となった。
11番グリッドからスタートしたベッテルは、ソフトタイヤで19周という最多周回を走り複数台をオーバーカット。これがアストンマーチン初の表彰台に大きく寄与した。
ホンダエンジン勢としては1-3の好結果を収める形となり、角田裕毅も開幕バーレーンGP以来となる7位入賞を飾った。ただ、ポイントリーダーとして初のチャンピオンを狙うもう1台は、チェッカーフラッグを受ける事なくレースを終えた。
予想し得ない衝撃の最終盤
誰もがマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)の優勝とチャンピオンシップでのリード拡大を疑わない状況であったが、ドラマは最終盤に待ち構えていた。
フェルスタッペンはオーバーテイクとオーバーカットによって序盤にラップリーダーに浮上して51周のレースの大部分を支配していたものの、残り4周のホームストレートで単独クラッシュを喫し、優勝を目前にリタイヤを強いられた。
レース中盤に同じようにホームストレートでクラッシュを喫したランス・ストロール(アストンマーチン)と同様に、フェルスタッペンは左リアタイヤの破損に見舞われた。ピレリは後日「走行状態」が原因のタイヤトラブルだったとの調査報告を発表した。
失意と怒りに震えたフェルスタッペンは、コックピットを降りるとリアホイールを蹴りつけフラストレーションを爆発させた。だが、ドラマはまだ終わらない。
30分近い中断を経て残り2周のスプリントがスタンディングで再開されると、チャンピオンシップでフェルスタッペンを追うルイス・ハミルトン(メルセデス)がトップを走るペレスを強襲。だが、ターン1で大きくオーバーランするミスを喫し、完走16台中の最下位でレースを終えた。
この結果、ドライバーズランキングでの首位と2位は変わらず、フェルスタッペンがハミルトンに対して4点差でのリードを維持する奇跡的な結末を迎えた。
ポールシッターのシャルル・ルクレールは3周目にハミルトン、7周目にフェルスタッペンに交わされ、早々に表彰台圏外にはじき出されたが、ランド・ノリス(マクラーレン)に対してポジションを守り切り、4位フィニッシュした。
復帰6戦目にして初めて予選でチームメイトを下したフェルナンド・アロンソは角田裕毅を7位に抑えて6位入賞を果たし、11周目にランオフエリアに捕まりポイント圏外15番手に転落したカルロス・サインツ(フェラーリ)は、見事なカムバックで8位を獲得した。
9位はダニエル・リカルド(マクラーレン)。ポイント圏内最後の一枠、10位はキミ・ライコネン(アルファロメオ)と、入賞者にはベテランが目立つ結果となった。
レース概要
日曜の現地バクーは雲に覆われながらも日差しに恵まれ、チャンピオンシップポイントを争う決勝のフォーメーションラップは気温25℃、路面40℃のドライコンディションで開始された。
レース前には、先日亡くなった元FIA会長のマックス・モズレーと、レース当日の朝に亡くなったマクラーレンの大株主、マンスール・オジェへの黙祷が行われた。
なおフェルスタッペンは、前日の予選での計量の際に、ピットレーン路面のペイントがタイヤに付いたとして、FIAの許可を得た上で同等程度の履歴のソフトタイヤに履き替えグリッドに付いた。
注目のオープニングラップではペレスがサインツとガスリーを抜き去って4番手に浮上。8周目にはルクレールを交わして3番手となり、レッドブル・ホンダによる対ハミルトン包囲網が完成した。角田裕毅はアロンソに交わされ1ポジションダウンの8番手に後退したが、7周目に抜き返して奪還した。
ジョージ・ラッセルは何らかのアクシデントに巻き込まれたか、1周目に最後尾にまで転落してピットイン。ハードタイヤに履き替えた。ストロールはターン1へのエントリーの際にミック・シューマッハとタイヤを接触させる場面があった。
リタイヤ第1号はエステバン・オコン(アルピーヌ)。4周目に無線で「パワーを失った」と叫び、その後クルマをガレージに入れリタイヤした。
上位勢としてはアロンソとノリスが8周目という非常に早い段階でピットイン。角田裕毅はルクレールと同じ10周目にピットに入った。
ラップリーダーのハミルトンは12周目にピットストップを行なうも、後方からレーンに入ってきたガスリーの通過を待ったため4.6秒と大きくタイム。これを好機と見たレッドブル・ホンダはオーバーカット狙いで翌周にフェルスタッペンをピットインさせ、見事ハミルトンの前方でコースに送り出した。
ミルトンキーンズのチームはこれに飽き足らず、14周目にペレスをピットストップさせたものの、タイヤ交換に4.3秒を要する痛恨のミス。ただ、辛うじてハミルトンの前方でコースに送り出し再びオーバーカット。1-2体制を築いた。
1回目のセーフティーカー(SC)は31周目。ストロールがホームストレートでクラッシュを喫して黄旗が振られた。突如、左リアタイヤがパンクした。幸いにもストロールに怪我はなかった。
ピット入口が閉鎖された事で全車がステイアウトを強いられたが、清掃が終わりコース上が片付くと開放され、入賞圏外のアロンソ、アントニオ・ジョビナッツィ、ラッセル、シューマッハが交換に動いた。なおシューマッハは左フロントの取り付けが甘かったためにタイムを大きくロスした。
レースは35周目にリスタートを迎えた。ランキング4位のバルテリ・ボッタスはアロンソ、ライコネン、リカルドに追い抜かれ、ポイント圏外の13番手に弾き出された。ガスリーはベッテルに追い抜きを許し5番手に後退した。
その後暫くは平穏な展開が続いていたが、前述の通り、ドラマは最終盤に待っていた。
2021年F1第6戦アゼルバイジャンGP決勝リザルト
Pos | No | Driver | Team | Laps | Time | PTS |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 11 | ペレス | レッドブル | 51 | 3:33.686 | 25 |
2 | 5 | ベッテル | アストンマーチン | 51 | +1.385s | 18 |
3 | 10 | ガスリー | アルファタウリ | 51 | +2.762s | 15 |
4 | 16 | ルクレール | フェラーリ | 51 | +3.828s | 12 |
5 | 4 | ノリス | マクラーレン | 51 | +4.754s | 10 |
6 | 14 | アロンソ | アルピーヌ | 51 | +6.382s | 8 |
7 | 22 | 角田裕毅 | アルファタウリ | 51 | +6.624s | 6 |
8 | 55 | サインツ | フェラーリ | 51 | +7.709s | 4 |
9 | 3 | リカルド | マクラーレン | 51 | +8.874s | 2 |
10 | 7 | ライコネン | アルファロメオ | 51 | +9.576s | 1 |
11 | 99 | ジョビナッツィ | アルファロメオ | 51 | +10.254s | 0 |
12 | 77 | ボッタス | メルセデス | 51 | +11.264s | 0 |
13 | 47 | シューマッハ | ハース | 51 | +14.241s | 0 |
14 | 9 | マゼピン | ハース | 51 | +14.315s | 0 |
15 | 44 | ハミルトン | メルセデス | 51 | +17.668s | 0 |
16 | 6 | ラティフィ | ウィリアムズ | 51 | +42.379s | 0 |
17 | 63 | ラッセル | ウィリアムズ | 48 | DNF | 0 |
18 | 33 | フェルスタッペン | レッドブル | 45 | DNF | 0 |
NC | 18 | ストロール | アストンマーチン | 29 | DNF | 0 |
NC | 31 | オコン | アルピーヌ | 3 | DNF | 0 |
コンディション
天気 | 晴れ |
---|---|
気温 | 25℃ |
路面温度 | 40℃ |
セッション概要
グランプリ名 | F1アゼルバイジャンGP |
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レース種別 | 決勝 |
レース開始日時 |
サーキット
名称 | バクー市街地コース |
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設立 | 2016年 |
全長 | 6003m |
コーナー数 | 20 |
周回方向 | 時計回り |