笑いのネタにされる”バクー事件”、17年最後のF1木曜記者会見は爆笑の渦。4冠王者達とリカルドの競演
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シーズン最後のアブダビGP木曜記者会見は、笑いの渦に包まれた。カンファレンス第一部には、4度目のタイトルを決めたルイス・ハミルトン(Mercedes-AMG)と惜しくも敗れ去ったセバスチャン・ベッテル(Scuderia Ferrari)、そしていつも笑顔の絶えない陽気なダニエル・リカルド(Red Bull Racing)の3名が登場した。
既にチャンピオンシップが決している事もあり、質問はアブダビでのレースではなく今シーズンや来シーズン全体に関してのものが多く飛び交った。3人は終始リラックスした様子で、会場は度々笑いに包まれた。
話題の中心になったのは”バクー事件”。セーフティーカー先導中の19周目、先頭を走るハミルトンが減速、2番手ベッテルがこれに追突した。フロントウイングを壊したベッテルはハミルトンに横付けして猛抗議、怒りに我を忘れたのか操作を誤ったベッテルは今度はハミルトンの左サイドに衝突した。
クラッシュにより両者はマシンを破損、ピットインを余儀なくされ優勝争いから脱落した。このアクションは審議対象となり、ベッテルには10秒のストップ・アンド・ゴー及び3点のペナルティポイントが科せられた。レース後は非難合戦に発展。ハミルトンは厳しい時こそ人間の本性が出ると応酬。責任を問われFIAからこっぴどく叱られたベッテルは自身の公式サイトで謝罪するとともに、ハミルトンにメールで謝った。レースはリカルドがかっさらった。
ベッテル、バクー事件をネタ化し笑い取る
既に勝敗が決した今シーズンのハイライトについて質問飛ぶと、話題はバクーに集中した。当時のハミルトンとベッテルはかなり緊迫していたが今は昔、ベッテルは自ら笑いのネタを買って出た。
Q:今シーズンのワールドチャンピオン争いは接戦の一騎打ちとなりました。お二人に決闘のハイライトをお伺いしたいと思います。
セバスチャン・ベッテル
(ニヤニヤしながらハミルトンに向かって)じゃあ、、バクーの話から始めようか?
ルイス・ハミルトン
(爆笑)そうだね、そこからいこうか。グフフフフ…
セバスチャン・ベッテル
言われる前に自分から言っとかないと。(二人笑顔で見つめ合いながら)もうああいった接触をしないようにしないとね。今年は良いシーズンだったと思うよ。接近してたしホイール・トゥ・ホイールのバトルも多く楽しかったし…
ルイス・ハミルトン
(セブの話を遮り薄ら笑いを浮かべながら)バルセロナの時みたいなレースが増えると良いよね?
セバスチャン・ベッテル
あそこは君にとってオーバーテイクし易い場所なんだからそりゃそうだろ。まぁ、誰の立場から見るのかによって意見は異なるけどさ。確かに追いかけまわしてる時は楽しいよね。あれは激しくとても良いレースだった。
僕的にはスパが良かったなぁ。レースの間ずっとプッシュしてルイスを捕まえようとしたんだ。丘を駆け上がるオールージュの所なんかで幾つかチャンスはあったけど、上手くディフェンスされちゃったね。でも楽しいシーズンだったと思う。ハードな接戦だったし幾らかミスもあったし。公平に言えば、ルイスは僕よりもミスをしなかったからこそ最終的に僕を上回ったんだと言える。彼はタイトルに相応しいよ。
Q:何か付け加える事はありますか?
ルイス・ハミルトン
いや、セブの意見に同意するよ。今年は接近したバトルが多くて最高だった。スパはヤバかったよ。自分が尊敬する4度の世界チャンピオンとのバトルなんだから。ベストレースだしミスもなかった。スパみたいなサーキットではミスを最小限に抑えたドライバーが勝てるわけだけど、僕らはふたりともミスしなかったんだ。これから先もっとこういったバトルがたくさんできるといいね。
Q:ダニエル、あなたもこの話題に参加したいんじゃないかと思いますが。
ダニエル・リカルド
そりゃそうさ。(突然面白い事を思いついたような顔をして)僕らは3人合わせて8つの世界タイトルを獲得しているわけよ?凄いだろ?(会場爆笑 ※4冠のハミルトンとベッテルをあわせて8つ。リカルドは一度もチャンピオンになっていない)
そして来年は僕が9つ目をゲットする。最高じゃん。(隣に座る王者達は下を向きながらほくそ笑む)今シーズンにはかなり満足している。まだ改善の余地はあるけど、自分の力を更に引き出せることを楽しみにしてるよ。
鋭い突っ込みを披露するハミルトン
インタビューアの質問は今シーズンのベストオーバーテイクについて。エアロ特性のために現代のF1ではオーバーテイクが難しく、他のカテゴリと比べてその数は多いとはいえない。3人共必至に思い出そうとするが、中々思い浮かばない様子。特にこの3人はフロントランナーとなる事が多く、追い抜く対象がいない状態でのレースも多い。
今シーズンの印象的なオーバーテイクとは言えば第2戦中国GPの22周目。4位を走行していたベッテルは、3位を走っていたリカルドにアウト側からのブレーキング勝負でオーバーテイクを仕掛けた。真横に並んだ両者はコーナーからの立ち上がりでサイド・バイ・サイドとなり、時速270kmという超高速下で両マシンのタイヤが激しく接触、タイヤ側面に塗られた赤と黄色の塗料が完全に剥がれ落ちた。あわやクラッシュの名勝負を制したベッテルは3位に浮上した。
Q:3人にお聞きします。今シーズンのベストオーバーテイクを理由含めて教えてください。それぞれの個人ベストは何ですか?
ダニエル・リカルド
うーん。。多すぎて選べないよ!(そんなに追い抜いていないだろ、と3人笑)えーと、オースティンでバルテリに仕掛けたやつは楽しかったなぁ。モンツァの1コーナーでキミを追い抜いたのも良かったよ。バクーでのベストは”例のやつ”しかないよね。
ルイス・ハミルトン
同意。バクー以外にはあまり思い出せないなぁ…
セバスチャン・ベッテル
(笑いながらハミルトンの方を向いて)思い出せるわけないじゃん。だって今年の君はトップばかり走ってて、オーバーテイクする必要なんてなかったんだからさぁ。
ルイス・ハミルトン
(ベッテルの方を向いて)そんな事ないさ。俺に何度か抜かれといて何言ってんだかね。(ベッテル苦笑)あぁ、それがあった。あれは最高に興奮したよ。
Q:セブの思い出は?
セバスチャン・ベッテル
う~ん…なんだろな。。バクーの事はダニエルが既に言っちゃったし…
ダニエル・リカルド
またまたぁ!中国でしょ?
セバスチャン・ベッテル
(腕を組み上の方を見つめながら懸命に思い出すベッテル)あぁあれか!あれはかなり良かったね!完全に忘れてたよ!バルセロナでのバルテリとの争いを言おうかと思ってたけど、ダニエルの言う通りだね。教えてくれてありがとう!
2017年最後の木曜プレスカンファレンスは和やかな内に終わった。リカルドは常に場をなごませてくれる。リカルドではなく仮にフェルナンド・アロンソが右端の席に座っていたらどうだっただろうか。3人の絡み合いはあっただろうか。笑顔の秘密について、かつてリカルドは次のように説明した。「F1でドライバーができるだけで幸せな事。だから僕は笑顔を絶やさない」