図らずもフェルスタッペン戴冠を演出した悲劇のニコラス・ラティフィ、クラッシュの原因を説明
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ウィリアムズのニコラス・ラティフィは図らずも、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)対ルイス・ハミルトン(メルセデス)のチャンピオンシップ争いを決定付ける要因の一端を担う事となった。
F1アブダビGPのレース結果と2021年シーズンのドライバーズチャンピオンシップに決定的な影響を与える起点となったのは、ターン14でバリアに激突したラティフィの事故だった。
これにより導入されたセーフティーカーによって、それまで圧倒的優勢だったハミルトンは危機的状況に置かれ、逆に勝利の流れは一気にフェルスタッペンへと傾いた。
ソフトタイヤを履いたフェルスタッペン。そしてステイアウトする他になかったハミルトン。レースは残り1周で再開され、バックストレートでのオーバーテイクを決めた24歳のオランダ人ドライバーが大逆転の劇的戴冠を果たした。
ラティフィは「今日はタフなレースで、終始ペースが掴めなかった」とレースを振り返り、クラッシュの原因となった事故について説明した。
「終盤にミック・シューマッハと争っていた際に、ターン9で少しばかり追いやられた。でもフェアだった。コースを外れた事でタイヤのグリップが失われ、その後、僅かにミスを犯して残念ながらクラッシュしてしまった」
「こんな形でシーズンを終えたくはなかったから、本当にガッカリだ」
ビークルパフォーマンス部門を率いるデイブ・ロブソンはラティフィのクラッシュついて次のように説明した。
「ニコラスはシューマッハとのタイトなバトルに巻き込まれ、幾度となくオーバーテイクを試みたが、シューマッハの懸命の守りに阻まれ追い抜く事はできず、最終的にダーティーエアの中でミスをしてウォールに激突した」
レッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表は「セーフティーカーのきっかけとなったニコラス・ラティフィに感謝したい。スチュワードにもお礼を言わなければならない。彼らはレース再開に向けて素晴らしい仕事をしてくれた」と語った。
この事故がタイトル争いを決定付ける一つの要因になった事は確かだが、コースマーシャルによる事故車両の撤去作業がもう少し遅ければ、あるいはレースコントロールがレース再開を決断しなければ、別の結末を迎えた事だろう。ラティフィには何も非はない。
チームメイトのフェルスタッペンを支えるためにハミルトンと激しいサイド・バイ・サイドを繰り広げ続けたセルジオ・ペレスが「誰だって他人のチャンピオン争いに関わりたくはない」と指摘したように、タイトル争いとは無関係のラティフィが選手権結果を左右する要因になりたいと望むわけもない。メルセデスとハミルトンにとっても悲劇だが、ラティフィにとってもまた、悲劇だった。
思い出されるのは2008年のティモ・グロックだ。
雨のインテルラゴスでの最終ブラジルGPでグロックはチェッカーに向けてスリックを履いていた。そして、雨脚強まる中での最終ラップの最終コーナー手前でオーバーテイクされた事で、フェリペ・マッサが僅か1ポイント差で幻の初タイトルを逃す事となった。なお、この時にグロックを抜き去りチャンピオンに輝いたのは皮肉にも、今回不運にもタイトルを逃したハミルトンだった。
当時はグロックに対する批判や誹謗中傷が相次いだ。ラティフィが同じ扱いを受けない事を願うばかりだ。