大阪観光局、民間主導での大阪F1誘致方針…吉村知事が協力に意欲
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大阪観光局が1月15日(月)、FIA-F1世界選手権の大阪への誘致を目指す方針を明らかにしたことを受け、大阪府の吉村洋文知事が協力に意欲を示した。
産経新聞によると大阪観光局の溝畑宏理事長はF1について「民間ベースで運営可能なビジネスモデル」に変わってきているとして、民間主導で誘致を進める方針を示すとともに、「一歩一歩クリアすれば、誘致は可能」と述べた。
大阪にはF1マシンが走行できるような常設のレーシングサーキットがないため、公道を利用したストリートコースでの計画が予想される。
この発言の背景には2025年に開催が予定されている大阪・関西万博がある。「世界的なスポーツエンターテイメント都市OSAKA・KANSAI」を掲げる大阪観光局は万博を契機として、スポーツと観光を組み合わせることで交流人口や地域経済への波及効果の拡大を目指している。
溝畑理事長の発言を受けて吉村知事は、民間主導での誘致は「大歓迎」として、「できる限り協力したい」とバックアップに積極的な姿勢を示した。
F1を巡って吉村知事は大阪市長時代、夢洲の万博跡地での公道レースを念頭に誘致を表明したが、サーキットの仮設を巡る課題や採算が取れないことなどを理由に断念した経緯がある。
万博の成功次第では、国際的な注目を集めるイベントになる可能性もあるが、採算や開催コース以外にも課題は多い。今やF1の誘致は狭き門だ。
F1は2024年に年間24戦を計画している。この内、現行契約が2030年を超える開催地は10箇所に上る。例えばバーレーンGPは2036年まで、オーストラリアGPは2035年まで契約を結んでいる。
世界的なF1人気の高まりを背景に各国が関心を寄せ、開催を巡る競争が激化する中、年間30~80億円近いホスティング料が発生するにも関わらず、現地プロモーターはこれまでには考えられなかったような長期契約を望んでいる。
3日間に渡る現在のイベントフォーマットが改定されない限り、年間25戦以上の開催は物流、人的負担の観点から不可能に近い。フェラーリのシャルル・ルクレールやマクラーレンのザク・ブラウンCEOは24戦が限界と訴えている。
ゆえにF1大阪GP、あるいは世界屈指のトップドライバー達がこぞって絶賛する鈴鹿サーキットに代わる大阪でのF1日本GPの開催は、超長期契約国を差し引いた残り14枠を巡る争いに勝てるかどうかに依ると言える。
F1の代名詞と呼ぶべきモナコGPですら毎年のように脱落が噂され続けているほど、F1カレンダー入りを巡る昨今の争いは熾烈だ。
伝統のモンテカルロ市街地コースや1950年の世界選手権創設以来、グランプリを開催し続けている英国シルバーストンや高速の殿堂、イタリア・モンツァでのレース以上のメリットを大阪観光局はF1に提案できるだろうか。興味深い。
F1のステファノ・ドメニカリCEOは将来的な開催地について昨年、中国とアフリカの名を挙げた。中国は既に上海でグランプリを開催しているが、F1は同国での2つ目のイベントを積極的に目指している。
誘致は決して楽な道のりではないが、成功した際のメリットは計り知れない。昨年、初開催されたF1ラスベガスGPは深夜のレースにも関わらず、31万5,000人が市街地ストリップに集まった。経済効果は推定12億ドル(約1,750億円)と見積もられている。