F1重量戦:開幕に向け期待されるレッドブルの更なる進化、めっぽうスリムなアルファロメオの軽量化手法
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開幕バーレーンGPに向けてF1は、世界モータースポーツ評議会(WMSC)を招集してマシンの最小重量を3kg増の798kgへと引き上げる計画だ。マクラーレンを含めた9チームが賛同したとみられている。
これほど重いF1マシンは過去に存在しない。2008年は595kgに過ぎなかった。14年間で200kg以上増加した事になる。これにはドライバーやオイル類も含まれており、含まれていないのは燃料(レースの場合110kg)のみだ。
アルファロメオだけは3kg増にすら反対していた。それもそのはず、ザウバー・モータースポーツAG製のシャシーはフィールドの中で唯一、”バラストを使用できるクルマ”だった。つまり、最小重量を下回っているが故に”重り”を搭載しなければならない程に軽かったのだ。
今年、車重が問題となり、また注目される背景にはコスト上限がある。チームは1億4000万ドル(約161億円)の予算の範囲内でやり繰りしなければならない。多くが重量より空力にリソースを割いた一方、アルファロメオは軽量化に金を使った。
C42はどの様にして規定最小値を下回る重量を達成したのか?
噂では、ギアボックス・ハウジングとリア・サスペンションをフェラーリから購入せず自作する事で、ホイールベースを短く抑えたためだとみられている。跳馬の供給品でこれを実現する事は不可能だったことだろう。
だが、独AMuSによるとテクニカルディレクターのヤン・モンショーは「我々のクルマが他より短いとは思わない」と述べショートホイールベース説を否定し、リアエンドを自作とした理由について「フェラーリから購入するより安いから」と主張。フレデリック・バスール代表は「軽量化のために、リアに巧妙な解決策を講じることに資金を費やした」と説明した。
予想外にクルマが重くなった理由は主に3つある。一つは安全性強化、一つは18インチホイール導入、そしてポーパシングへの対処としてのフロア補強だ。
18インチ導入に際しては当初の予定より増加量が増えた。またポーパシングがこれほど大きな問題になるとは想定されておらず、フロア補強はやむを得ない措置であった事から、アルファロメオは最終的に3kg増で譲歩した。だが、幾つかのチームは更なる引き上げを要求し続けている。
バスールはトト・ウォルフが「3kgより5kgの方が良かったが、妥協できる範囲だ」と述べ、メルセデスが798kgへの引き上げに概ね納得したと仄めかす一方、「特にレッドブルは最低重量をさらに大幅に引き上げるよう懇願している」と付け加え、幾つかのチームが今も不満を抱えていると説明した。
なお今季タイトル争いで有力候補筆頭の一つに数えられているフェラーリのマッティア・ビノット代表は、3kg以上の引き上げは過剰だとしてライバルを牽制している。
アルファロメオを除く各マシンの超過重量は5~20kgとみられている。中でも最も贅肉がついているとされるのがレッドブルRB18だ。
レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、20kgと言う数字を否定しつつも、エイドリアン・ニューウェイ率いる技術部門が作り上げた今季のチャレンジャーが肥満体型であることを認めている。
だが、そんなグリッドの中で最も重いとされるRB18はバーレーンテストで総合トップタイムを叩き出した。Sky SportsのF1アナリスト、マーティン・ブランドルが「疑問の余地はない」と指摘した様に、新型サイドポッドを含むアップグレードは確かにレッドブルを押し上げた。
RB18はバルセロナテストの段階からポテンシャルを秘めているように見えていたものの、真のパフォーマンスはアンダーステアによって制限されていた。リヤ側のダウンフォースが強く、フロントの荷重を増やす必要があった。最終日に持ち込まれたアップグレードはこうした問題へのソリューションだった。
コースを含む様々な変数に依存するものの、一般に10kgはラップタイム換算でコンマ1~2秒の差を生むとされる。軽タンの予選と燃料を積み込んだ決勝のタイム差が示すように、車体が軽いほどマシンは速くなる。
マルコによるとレッドブルは開幕戦までにRB18の軽量化を目論んでいる。
レースではクルマの素の速さだけでなく、信頼性を含む無数のファクターが結果を左右する。誰がバーレーンを制するのかは全く分からない。だが、重すぎるが故にレッドブルには多くの伸び代が残されている。残り5日間でライバルとの差を更に広げる可能性は少なくない。