何故ジェームス・キーはトロロッソ・ホンダを離脱しマクラーレンに移籍したのか?その理由が明らかに
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今シーズンの興味深い謎の一つであった、ジェームス・キーのマクラーレンへの移籍の理由が明らかになった。レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、ジェームス・キーがレッドブルとトロ・ロッソの将来的のビジョンに不満を持っていた事を明かした。
マクラーレンは第12戦ハンガリーGPが行われた7月下旬、ファエンツァの技術部門を率いるジェームス・キーを引き抜き、同チームのテクニカルディレクターとして迎え入れると発表。だがその直後、フランツ・トスト代表が、キーとの間には長期的な契約があると主張し、泥沼の争いへと化した。
英国出身の実力派エンジニアであるキーは2012年以降、テクニカルディレクターという肩書でトロ・ロッソF1マシンのデザインを手掛けてきた。中堅チームを渡り歩いてきたキーにとっては、ホンダとの提携が決まった今年がワークスチームでの初仕事。シーズン前、これまでと比較して自由にマシンを設計できる喜びを口にしていただけに、マクラーレンへの移籍は不可思議な出来事であった。
何故ジェームス・キーは念願のワークスチームでの仕事を放り出してまで、低迷続くマクラーレンへの移籍を希望したのか? その背景には、トロロッソとレッドブルとの関係見直しに関する計画があった。
トロ・ロッソは来年、レッドブルのデイトリッヒ・マテシッツ総帥からの指示を受けて、ホンダエンジンだけでなく、ギアボックスを含めたリアエンド広範のコンポーネントをレッドブルと共有。技術的なシナジー効果を高める取り組みを行う予定となっている。
「デイトリッヒ・マテシッツから、レッドブルとトロ・ロッソとの関係をこれまで以上に緊密なものにするよう指示があったのだ」とヘルムート・マルコ。Motorsport Totalとのインタビューの中でジェームス・キー離脱の事情を説明した。「そのため、両方のチームで同じ職務に付く従業員が発生しないようにしなければならなかった」
「我々はこのタスクを達成するための計画を立てた。まだ完成はしていないがね。ジェームズ・キーはこのプランに賛同しなかったんだ。最終的に、彼の事を気にしないようにした方が楽だと考えた。(キーの離脱は)最善の解決策だと思っている」
昨今のF1では、規約で許される上限目一杯の技術供与をフェラーリから受けているハースF1が成功を収めており、”緊密な協力関係”が注目を集めている。2019シーズンのレッドブル「RB15」の設計に際しては、空力の鬼才と称されるエイドリアン・ニューウェイが全面関与しており、トロ・ロッソ「STR14」に関してもニューウェイのアイデアが多数実装される事になる。
コストの観点から、マテシッツ総裁はエイドリアン・ニューウェイをレッドブルとトロ・ロッソにおける唯一のテクニカルディレクターとする新しい組織図を考案。トロ・ロッソにおけるジェームス・キーの役割は縮小する事となった。やりたい事が出来ない…キー離脱の理由はそこにあった。ヘルムート・マルコは、ジェームス・キーの後任を決めるつもりはないと言う。
「トロ・ロッソのテクニカルディレクターの欠員を埋める予定はない。レッドブルの(マシン)コンセプトを流用するようになる以上、その職はトロ・ロッソでは不要なのだ」
ルノーエンジン搭載2シーズン目を迎える英国の名門チームは来年、カルロス・サインツとランド・ノリスを起用してラインナップを一新。移籍問題は未だに解決しておらず、ジェームス・キーは2020年型F1マシン「MCL35」の設計からチームに合流するものとみられている。