24時間で一転…何故ラッセルはF1ハンガリーでポールを獲得できたのか?メルセデス躍進の要因とは

キャリア初のポールポジションを獲得したジョージ・ラッセルを祝福するメルセデスのクルー、2022年7月30日F1ハンガリーGP予選Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

F1第13戦ハンガリーGP予選の勝者はジョージ・ラッセル(メルセデス)だった。24歳のイギリス人ドライバーは最強フェラーリの二人のドライバーを打ち負かし、カルロス・サインツを1000分の44秒差で振り切った。

これによりラッセルは、セルジオ・ペレス(レッドブル)とサインツに続くF1史上105人目のポールシッターとして歴史に名を刻むと共に、メルセデスに今季初のポールをもたらした。

24時間で一変した勢力図

初日金曜のシルバーアローは道を踏み外していた。W13はトップに対して1周あたり1秒ものペースダウンを抱え、ラッセルは8番手、僚友ルイス・ハミルトンに至っては11番手で初日を締め括る事となった。

ラッセルが「今季最悪の金曜」と称した初日2回のセッションを終えてドライバーたちは、エンジニアと共に夜11時までコースに残り、改善策について検討し続けた。

「昨日はおそらく、今シーズンの中で最もタフな金曜だったと思う。昨晩は23時までここにいて頭をかきむしっていたし、士気もかなり下がっていた。それに迷いを感じていた」とラッセル。

「その24時間後にこうしてポールポジションを獲得できた事は、昨夜の経験があるからこそ、余計に嬉しい。予選ではポイントを得られないけど、この結果は僕ら全員にとって本当に本当に大きな意味がある」

メルセデス / ラッセル躍進の要因

劣勢から一転、ポール獲得の要因は何処にあったのか。この点についてラッセルは「兎に角、完璧にウインドウに入ったんだと思う」と答えた。

「F1においては細かいマージンの積み重ねが重要で、さまざまな側面がある。全てを完璧にウィンドウに収めたとき、クルマは飛ぶように走れるようになる」

「逆に言えば何かひとつでも欠ければ、すべてが台無しになってしまう」

チーム代表のトト・ウォルフは「Q3の出だしからタイヤが適切なウインドウにありクルマのバランスも良く、全てが上手く噛み合っていた」と補足した。

Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

キャリア初のポールポジションを獲得したジョージ・ラッセルを祝福するメルセデスのクルー、2022年7月30日F1ハンガリーGP予選

予選は今週末のいずれのセッションとも異なる未知のコンディションの中で行われた。初日の2回のフリー走行は路面温度が60℃近くにも達する灼熱に、そしてFP3は雨に見舞われた。

3ラウンドの予選は初日と同じドライコンディションながらも路面温度は30℃に満たず、また、雨により表面のラバーが洗い流されたためにコースはグリーンだった。

メルセデスの好調はフェラーリ不調の裏返しでもあった。跳馬の二人は逆にタイヤに熱を入れる事ができず、ハンドリングに苦しんだ。

予選3番手のシャルル・ルクレールは「Q1、Q2は凄く良い感じだったけど、Q3に入るとコースが少し変わって、太陽も出てきて、突然、タイヤが適切なウィンドウに入らなくなったんだ」と説明した。

Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

ポールポジションを獲得して笑顔を見せるジョージ・ラッセル(メルセデス)と渋い表情のシャルル・ルクレール(フェラーリ)とカルロス・サインツ(フェラーリ)、2022年7月30日F1ハンガリーGP予選

ただしラッセルの勝因は、単にタイヤとクルマのウインドウが”完璧”だったから、というだけではない。

同じW13を駆るハミルトンはDRSが機能しなくなる不運に見舞われ、チームメイトに遅れること0.765秒の7番手に留まった。

ただ、ハミルトンの各セクターのベストタイムをつなぎ合わせても1分17秒926に過ぎず、ラッセルには0.549秒届かない計算で、これは5番手止まりのタイムだ。

ラッセルは「純粋なドライビングという意味では今日が一番だと思う」と述べ、ウィリアムズで予選2番手を記録した昨年のベルギーGPや、予選3番手につけた同じく昨年のロシアGPよりも、この日の方が限界まで攻める事ができたとの考えを示した。

未知数の決勝、初勝利なるか?

Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ポールポジションを獲得してパルクフェルメに停めたクルマを飛び降りるジョージ・ラッセル(メルセデス)、2022年7月30日F1ハンガリーGP予選

土曜のハンガロリンクはラッセルに微笑んだが、チャンピオンシップポイントが得られる日曜がどうなるかはまた別の問題だ。

「昨夜に施した変更が明日のレースに反映されるかどうかについては何の保証もないし、もっと言えば、今後のレースにおけるパフォーマンスを保証するものでもないんだ」とラッセルは語る。

「確かなのは、今日のこのコンディションでは確実に効果があったって事だ」

「ロングランペースは全くの未知数だ。昨日の段階からクルマをひっくり返しているからね」

「それに明日はもっと涼しくなりそうだし、コンディションも違う」

「昨日のハイフューエルペースはおそらくこれまでで最悪のものだった。その点、フェラーリはズバ抜けているように見えた」

先行き不透明とは言え、ここは予選結果がリザルトに決定的な意味を与えるハンガロリンクだ。ラッセルはポールの感慨に浸る事をせず、キャリア初優勝に向けて既にレースの攻略法に頭を巡らせている。

「頭の中は、もう明日のことでいっぱいだよ。スタート、ターン1、どうやってリードを保つか、レースに勝つためにはどうしたらいいか、そんなことを考えてる」

「ポールは素晴らしい事だけど土曜の結果にはあまり意味がない。勿論、チームとして進歩したこと、そして夏休みに入る前に、こういう予選が戦えた事に関しては凄く大きな意味がある」

「僕らの目標はあくまでも世界選手権を戦うことであって、その意味においてポールポジションやレースでの勝利が必要というだけに過ぎないんだ」

「今日は確かに素晴らしい1日になったけど、そんな事に固執するつもりはなくて、僕としては兎に角、最高の仕事をしたい。そういう事なんだ」


30日(土)のF1ハンガリーGP予選では、ジョージ・ラッセル(メルセデス)がキャリア初のポールポジションを獲得。2番手にカルロス・サインツ、3番手にシャルル・ルクレールと、後方にフェラーリの2台が続く結果となった。

2022年F1ハンガリーGPの決勝レースは日本時間7月31日(日)22時にフォーメーションラップが開始され、1周4381mのハンガロリンクを70周する事でチャンピオンシップを争う。

F1ハンガリーGP特集

この記事をシェアする

関連記事

モバイルバージョンを終了