フェルスタッペン「チェコなくして僕はこの場にいなかった」摩耗足で気迫の攻防、決定的5.9秒を作り出した”レジェンド”ペレス

2021年F1ワールドチャンピオン獲得を喜ぶマックス・フェルスタッペン、エイドリアン・ニューウェイ、ヘルムート・マルコ、セルジオ・ペレス、クリスチャン・ホーナー代表、2021年12月12日F1アブダビGPにてCourtesy Of Red Bull Content Pool

決して自分だけの力で獲ったわけじゃない…レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンは、F1アブダビGPで壁となってルイス・ハミルトンの前に立ちはだかった僚友を「レジェンド」と称し、セルジオ・ペレスの奮闘なくしてチャンピオン獲得は叶わなかったと語った。

58周の劇的なレースを終えて行われたチャンピオン会見の中でフェルスタッペンは「メルセデスがセーフティーカーのピットギャップを得ていたかもしれないわけで、チェコがいなかったら、僕は今ここに座っていなかっただろうね」と述べ「今日のチェコは本当に途方もない走りをしてくれた」と付け加えた。

全くその通りだった。

フェルスタッペンとハミルトンが1回目のピットストップを行った後、レッドブルはペレスを敢えてステイアウトさせた。コース上に留め置くことでハミルトンを抑え、後方から追い上げるフェルスタッペンを援護させるためだ。

摩耗したソフトタイヤながらも、ペレスはレースのハイライトの一つに上げられるべき見事なバトルを披露した。1本目のバックストレートでDRSを許して一旦はハミルトンに前を許すも、続く2本目のストレートで気迫のオーバーテイクを決め、その後、1周に渡ってハミルトンを抑え込んだ。

Courtesy Of Red Bull Content Pool

ルイス・ハミルトン(メルセデス)の猛攻を凌ぐセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)、2021年12月12日F1アブダビGP決勝レースにて

ハミルトンと激しくやり合うチームメイトの姿を後方から見ていたフェルスタッペンは、無線を通してペレスを「レジェンド」と呼んだ。

それまで1周あたりコンマ数秒しか縮まらなかったフェルスタッペンとハミルトンとのギャップは、18周目から21周目にかけて12.071秒から1.746秒にまで一気に縮まった。あの攻防の1周だけで5.972秒、計約10.3秒ものゲインを得た計算だ。全ては必殺仕事人、匠ペレスの走りの賜物だった。

ニコラス・ラティフィのクラッシュにより最終盤にセーフティーカー(SC)が先導された際、ラップをリードするハミルトンと2番手フェルスタッペンとのタイム差は約13秒だった。

SC下でのピットストップによるロスタイムは14秒プラス静止時間。ハミルトンにピットインするという選択肢はなかった。入ればフェルスタッペンにトラックポジションを奪われるタイム差だった。

もし仮にペレスの活躍がなければ当時の両者のタイム差は少なく見積もっても18秒、最大22秒程度の計算だ。ハミルトンは躊躇なくソフトタイヤに履き替えトップでコースに戻っていた事だろう。そしてフレッシュなソフトタイヤという同一条件であれば、トップチェッカーはフェルスタッペンではなくハミルトンだった可能性が極めて高い。

最終的にホンダ1-2フィニッシュでの戴冠という結末も見えたが、残念ながらSC先導下で3番手を走行していたペレスはパワーユニットのデータに異常が確認されたためリタイヤした。更なるセーフティーカーの原因を作り、フェルスタッペンの逆転の芽が潰えぬようにとの判断だった。

Courtesy Of Red Bull Content Pool

セーフティーカーを利用してマックス・フェルスタッペンの33号車にソフトタイヤを履かせるレッドブル・ホンダ、2021年12月12日F1アブダビGP決勝レースにて

高い実力を持ちながらも、あれほど献身的なチームメイトと巡り合うのは滅多にあるものではない。フェルスタッペンは今後も末永く、ペレスとのコンビを続けていきたいと願っている。

「もちろん、誰かと新しく仕事に取り組み始める際は、実際に上手くいくのかどうか分からないものだけどチェコは違った。かなり早い段階にそう分かった」とフェルスタッペン。

「F1での仕事仲間ってだけじゃなく、本当に良い奴で、また素晴らしい人間でもあり、本当の家族のように感じる存在だ」

「こういうチームメートに恵まれるのは本当に稀な事だと思うし、これからも長くこの関係を続けられる事を心から願ってる」

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