「トロロッソには、ホンダが求める水準の車体を用意する重大な責任がある」とジェームス・キー

ジェームス・キーとピエール・ガスリーCourtesy Of Honda

トロ・ロッソのテクニカル・ディレクターを務めるジェームス・キーは、プライベーターとワークスチームとの間には仕事のあり方やプレッシャーといった点で大きな違いがあると述べた上で、トロ・ロッソにはホンダが要求する水準の車体を用意する重大な責任があるとの認識を示した。

イタリアの小規模チームであるトロ・ロッソは今年、ホンダからパワーユニットの独占供給を受け、チーム史上初のワークス体制に意欲と情熱を燃やしている。2006年の初参戦から数えて今季で13シーズン目を迎えるものの、これまでにワークス待遇を受けた事はない。

サプライヤーからエンジンを購入する「お客様」の立場だったこれまでとは180度異なり、チームにはエンジンメーカーであるホンダに対し、競争力のあるシャシーを用意する「義務」があるとキーは考えている。

「ワークスでは、あらゆる点で大きな責任がのしかかる」とキー。「とは言ってもそれは非常にポジティブな重圧だし、楽しんでいるけどね。我々トロロッソには、ホンダが求める水準の車体を用意する重大な責任がある」

自動車メーカーとの協業という形で参戦するワークスチームにおいては、チーム全体に多くのプレッシャーと責任がのしかかる。キーによれば、昨年と比べ作業範囲は増大し、労働量も大幅に増えているという。

「冷却システムのテストなんかにも関わっているんだが、そんな事はこれまでに経験したことないよ。プレッシャーはあるけど素晴らしいチャンスでもある。製造しなければならないパーツの数はこれまでより遥かに多いし、イタリアのみならず欧州や日本においても技術的なサポートを迫られるんだ。凄い重圧さ」

昨年のルノー時代とは対照的に、マシン設計やダイノテスト、そしてR&Dリグテスト等、トロ・ロッソはPUサプライヤーのホンダとともにあらゆる領域で共同開発を行っている。例えば、トロ・ロッソ側の担当であるギアボックスはエンジンと密接に関連するパーツであるため、ホンダの拠点である日本とミルトンキーンズの両方に送られ、ホンダ側がテストを続けているという。

異なるのは関係性や仕事のあり方、責任の重さだけではない。ルノーとホンダとではパワーユニット本体も大きく異る。ホンダのPUはICEの前方にコンプレッサー、後方にターボを配し、MGU-HをVバンク内に収めるレイアウト。一方のルノーは、Vバンク内前方にMGU-H、ICE後方にターボとコンプレッサーが配置されている。

両者のエンジンレイアウトの違いのために、トロ・ロッソは空力やサスペンション等を再検討する必要に迫られた。結果、2018年マシン「STR13」のリアエンドは昨年までとは別物であるかのごとく鋭く絞り込まれ、ギアボックスも全く異なる設計となった。キーによれば「共通する部分が全くない」程に両者のエンジンには大きな差があるという。

人の情熱や熱意といった類ものは、契約という鎖でコントロールする事はできない。人が意欲と責任をもって仕事に取り組むのは、双方の間に信頼関係が構築されているからに他ならない。相手方の期待に応えようとするからこそ、そこに重圧が生まれる。

トロロッソ・ホンダは先日行われた第一回合同テストで、メルセデスやフェラーリを凌ぐ計324周の最多周回数を記録。また、テスト最終日のスピードトラップでは、王者メルセデスと並ぶ333.3km/hの最高速を記録し4番目の速さをみせるなど、順調な滑り出しを見せている。

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