ホンダSpec4、メルセデスの新型V6に匹敵か…高速F1ベルギーGPで各社一斉アップグレード
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今シーズンの集大成とみられるホンダ製F1パワーユニット「RA619H」のスペック4が、第13戦ベルギーGPで実戦投入された。舞台となるスパ・フランコルシャンのエンジン全開率は、チームによっては80%を超えるレベルで、屈指のパワーサーキットとして知られる。
ホンダの最新型エンジンの馬力については、以前より様々な噂が流れていた。ドイツメディアは予選モードで20馬力のゲインがあると予想。Skay F1の解説陣が情報筋からのインフォメーションとして、スパの週末に語ったところによると、スペック4は従来のスペック3と比較して明らかにパワフルであり、メルセデスに匹敵する性能を秘めているという。
スパでは、ホンダを含めた全てのエンジンサプライヤーが、アップグレード版エンジンを投入し、14台が新しいコンポーネントの封を切った。その内、年間上限数を超える交換によって6台がグリッド降格ペナルティを受ける見通しだが、スパはラ・ソースの手前やケメル・ストレート終端、またはバス・ストップ・シケインなど、オーバーテイクのチャンスが豊富で、最後尾スタートによるディスアドバンテージが他のコースと比べて少ない。
メルセデスはカスタマーを含む全6台に、”フェーズ3エンジン”と呼ばれるアップグレードを投入。同新型を搭載したレーシングポイントは初日に、2台揃ってトップ10へと食い込むパフォーマンスを示し、セルジオ・ペレスに至ってはレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンを上回る5番手タイムで初日を締め括った。
だが、メルセデス側はフェーズ3の性能向上幅は少ないと主張。「革命を期待しないで欲しい」と述べた。また、ルイス・ハミルトンは「シーズンのこの段階においては、効率と信頼性を重視した開発が重要。1周あたりコンマ1秒未満のゲイン程度しかないはず」と語り、いずれも慎重な姿勢を見せている。決してブラフではなさそうだ。
Auto Motor Und Sportは、ホンダのスペック4が2桁改善を果たしているのは間違いないと考えており、メルセデスとルノーが同じ週末に投入した新しいV6ターボ以上のパワーを発揮すると予想。更に、ロシアGPで予定されているエクソン・モービルの新しい燃料が加わることで、最終的に25馬力以上のゲインをレッドブルとトロロッソにもたらすはずだ、としている。
メルセデスと互角の性能を手にしたのか等、実際の数値がどうであるかはさて置き、メディアのホンダに対する注目度は明らかに高い。ベルギーGPの金曜公式会見でもスペック4への質問が投んだが、出席したホンダF1の現場統括責任者を務める田辺豊治テクニカル・ディレクターは通常通り、あまり多くを語ろうとはしなかった。
スペック4の利点を問われた田辺TDは「Spec-4パワーユニットは、パフォーマンスの向上をもたらすものであり、目的はそれにあります」と返答。続けて「かねてから申し上げている通り、トップランナーと我々との間には埋めるべきギャップがあり、我々はキャッチアップしている最中です。ホンダはPUパフォーマンスを改善する必要があります」と述べた。
今回マックス・フェルスタッペンとピエール・ガスリーへのスペック4投入を見送った理由については「現在の立ち位置と、シーズンの残りの期間でのパワーユニット使用状況を想定した上で、チーム側と話し合い、戦略的観点から決定を下しました」と返した。
惜しむらくは、今週末にホンダの最新スペック4を使うアレックス・アルボンとダニール・クビアトが、グリッド降格ペナルティを受ける事だ。降格が確定している以上、エンジンの寿命を縮めかねない強力なモードを予選で使用する可能性は低い。つまり、スペック4の真価、予選モードの実力を確認するためには、次戦モンツァでのイタリアGPまで待つ必要があるという事だ。
2019年シーズンは残り9戦。1基のスペック4のみでこれを乗り切ることは難しく、コース特性とマシンとの相性に応じて適時、ストック済みの旧型エンジンを使い分けてのオペレーションが行われる見通しだが、状況如何によってはスペック5、つまり、2020年仕様エンジンのパイロット版が、シーズン最終盤にお披露目される可能性もありそうだ。