議論呼ぶルクレールの予選赤旗クラッシュ、F1は”銀の弾丸”ではないインディカー式ルールを採用すべきなのか?
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シャルル・ルクレールのクラッシュを受けF1と国際自動車連盟(FIA)は、予選で赤旗の原因を作ったドライバーのラップタイムを抹消するという、インディカー・シリーズ等で採用されているルールを採用するかどうかについて検討していくという。
2006年の”ラスカス・ゲート”を彷彿とさせる出来事であっただけに、F1第5戦モナコGP予選でのルクレールのクラッシュは大きな注目を集めた。暫定ポールタイムを刻んだフェラーリドライバーはQ3最終アタックでプールサイド・シケインに激突。セッションは赤旗終了を迎え、ライバル達はラップタイムを計測する事が出来なかった。
2006年のモンテカルロでの予選では、暫定ポールのミハエル・シューマッハがラスカス(ターン18)でマシンを停め、後続のフェルナンド・アロンソとマーク・ウェバーのアタックラップを故意に妨害したとして予選タイムを抹消された。
ルクレール本人は「もしわざとやるんだったら、もう少し壁にぶつからないように上手くやっただろうね」と述べ、故意に事故を引き起こしたわけではないと主張。2006年に苛立ちを募らせた経験を持つアロンソは、ルクレールを擁護するスタンスを示した。
インディカー・シリーズを含む幾つかの米国のシリーズは、予選で赤旗を出したドライバーのファステストラップを抹消するルールを採用している。これを今回の事例に当てはめると、ルクレールはハブの故障の有無に関わらずポールポジションを失っていた事になる。
例えばインディカーのルールブック第8条3項4は「レッドコンディションを引き起こした車両は、当該セグメントのベスト2ラップタイムが無効とされ、そのセグメントでの走行を続けることはできず、次のセグメントに進む事もできない」と定めている。
メルセデスのトト・ウォルフ代表は米国式ルールについて、ルクレールの故意性を否定した上で「混乱を避けるための賢明なルール」と意見した。
実際にF1がルール改定に乗り出すかはさておき、当事者であるF1ドライバー達はインディカー式のルールを真似る必要はないと考えている。
赤旗によりポールポジションを奪われたと激怒していたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は「ミスをして壁にぶつかるのと、故意にやるのとでは違う」と述べ、ルクレールのポール獲得には正当性と公平性があると主張した。
「今後、もしルール改正が行われたとしても、彼のラップは削除されるべきじゃないと思う。フェアじゃないよ。だって僕らは誰もが全力で攻めているんだから。特に限界ギリギリのコースでこれをやるのは簡単な話じゃないんだ。ミスなんて容易に起こりうる」とフェルスタッペンは付け加えた。
フェルスタッペンと同様に、最終ラップでのタイム更新を確信していたバルテリ・ボッタス(メルセデス)もまた、予選でクラッシュしたドライバーにペナルティを課すようなルール変更を望んでいない。
「このままのレギュレーションで問題ないと思う。このスポーツでは自分の思い通りにならないこともあるし、運が良い時もあれば悪い時もある。そういうものなんだ」とボッタスは語った。
是非はさておき、仮にF1がインディカー式ルールを採用しても論争が尽きる事はないだろう。これは一発で全てを解決できるような、いわゆる”銀の弾丸”ではない。
今回と同じような状況下でレースディレクターが「黄旗」を選択すればルクレールはポールポジションを獲得する事になるが、「赤旗」を選択すればルクレールはポールを逃す事になる。つまり最終的にはマイケル・マシの判断が全てを左右する形になる。
人為性が介在する限り、どう転んでも論争を避ける事はできない。