過酷な復帰のハードル、ヒュルケンベルグに感銘受けるライバル達「彼はF1にいるべき人物」とフェルスタッペン
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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染したセルジオ・ペレスの後任として、FP1開始の22時間前にオトマー・サフナウアー代表から電話を受け、急遽、第4戦F1イギリスGPでレーシング・ポイントF1チームに合流したニコ・ヒュルケンベルグは、ライバルのドライバー達に感銘を与えている。
異次元の速度域で矢継ぎ早にコーナーを駆け抜けるF1マシンは、ステアリングを握る者にトップアスリートの肉体を要求する。最後にF1マシンをドライブして243日。他のシリーズに参戦するでもなく、F1浪人生活を送っていたヒュルケンベルグが、何らの準備もなく突如トップクラスのマシンに乗り込み、目立ったエラーもなく堅実なペースを刻んだ事は驚きでしかない。
ましてやここは、右に左に5GものGフォースを受けながら、時速300kmという途方も無いスピードで超高速コーナーを走る事が求められるシルバーストン・サーキットだ。予選後のトップ3カンファレンスで今週末のヒュルケンベルグのパフォーマンスについて聞かれたルイス・ハミルトンは、シルバーストンの身体的要求の厳しさを指摘する。
「最初のプラクティスとレースがここだなんて、首の事を考えれば全く以てベストじゃないよ」とハミルトン。
「コップス(ターン9)はエンジン全開だし、ここのコーナーの組み合わせは本当にキツイんだ。今朝、彼が目覚めた時に、首にアザや痛みがあっても何も不思議はない。でもどういうわけか、彼はずっと調子良さそうなんだ。彼が歩いて入ってくるのを見た時は、とてもF1から離れていたようには見えなかった」
「でも、それ以上に準備が大変だよ。クルマの事を理解しているかどうかが多分一番重要なんだ。クルマのことを知らないと、ツールやチームが使っているシミュレーションのことも分からない…そういった点について彼がどれだけ遅れを取っていたのかは僕には分からないけど、彼は優れたドライバーだし、それを成し遂げられる人物がいるとすれば、それが彼であることは間違いないね」
予選3番手につけたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は、シルバーストンの超高速コーナーがもたらす強烈なGフォースの影響で、FP1終了後のヒュルケンベルグの首が「片側に垂れ下がっていた」と冗談を飛ばした。
「彼は首がかなり長いから、F1には適してないんだ。彼がまだF1にフルタイムで参戦していた頃、その事を彼に話したんだけど、全く面白がってくれなかった」
「幾らトレーニングを積んだとしても、こうした(超高速コーナーを持つ)コースで初めてF1マシンをドライブすると痛みを感じるものなんだ。常にね。今朝起きた時に彼が痛みを感じたのは100%間違いないよ」
「でもまぁ、彼にとってはどうでも良い話だろうね。なんであれ彼はこの場にいられる事を幸せに思っているし、彼はこの場にいるべきドライバーなんだから。僕は今でも彼がグリッドに並ぶに相応しい人物だと思ってる」
隣に座っていた2番手のバルテリ・ボッタスも2人の意見に同意する。
「そうだね、彼が痛みを感じているのは僕も間違いないと思うよ。だってフィジカル的に準備が出来ていなかっただろうからね。でも彼は本当に良くやってると思う。こんなにも土壇場での出走なんだから凄く高いハードルだと思う。にも関わらず良いラップを刻んでいる。彼は経験豊富だからね。明日は是非、良いレースをして欲しい」
ヒュルケンベルグは表彰台経験なしの最多出走記録(177戦)という悪名高い不名誉?な記録を持っている。果たしてヒュルケンベルグはこの千載一遇の好機を活かし、批評家達を黙らせる事ができるだろうか? ヒュルケンベルグは日曜の決勝レースを13番グリッドからスタートする。