レッドブルRB17、ヴァルキリーを「遥かに超える」F1レベルの性能…”禁じられたあらゆるトリック”を総動員

レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表と最高技術責任者のエイドリアン・ニューウェイ、2022年6月28日にミルトンキーンズで行われたハイパーカー「RB17」の記者会見にてCourtesy Of Red Bull Content Pool

エイドリアン・ニューウェイによると、1,100馬力超のV8エンジンを搭載するレッドブル「RB17」は、アストンマーチン「ヴァルキリー」を遥かに超えるF1レベルの性能を備えるハイパーカーとして開発が進められる計画だ。

3つのF1チームでコンストラクターズタイトルを10回、ドライバーズタイトルを5回獲得したF1史上最も成功したレーシングカーデザイナーは、F1で培ってきたあらゆる技術をレッドブル初のハイパーカーに注ぎ込むつもりのようだ。

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インタビューに応じるレッドブルの最高技術責任者を務めるエイドリアン・ニューウェイ、2022年6月28日にミルトンキーンズで行われたハイパーカー「RB17」の記者会見にて

アストンマーチンとの共同プロジェクトによって生み出されたヴァルキリーは、RB17と同じくニューウェイが設計・開発に関与したクルマだが、一方は法的制約が厳しいロードカーであり、もう一方は公道走行不能なクローズドルーフの2シーター競技車両だ。

RB17についてニューウェイは「事実上のルール無用車両」であるとして、フォーミュラ1レベルの性能を持ちながらも、あらゆる速度域において気兼ねなく快適に走行できるマシンを目指していくと説明し、ヴァルキリーよりも「遥かに高いパフォーマンス」を備えると約束した。

このプロジェクトの誕生のきっかけは新型コロナウイルスの世界的大流行だった。ニューウェイ曰く、2020年のクリスマスから新年にかけてスキーに出かける事ができなかったため、代わりに図面を描き始めたのだという。

COVID-19の大流行と次世代F1レギュレーションの導入延期がなければ、2005年のRB1から続く系譜に連なるものとして昨年のレッドブルF1マシンには「RB17」の名が与えられるはずであったが、現実にはシャシーがキャリーオーバーされたために「RB16B」と呼ばれる事となった。

意図して「RB17」のネーミングを取って置いたわけではないものの、F1レベルのパフォーマンスを目指して開発が進められるレッドブル初のハイパーカーに、本来であれば本物のF1マシンに与えられるはずだった「RB17」が採用されたのは興味深い話だ。

ヴァルキリーとの比較で言えば、低重心を追い求めるためにRB17のホイールベースはより長くなる見通しで、車両重量は350kg近く軽い900kgを目指していくと言う。

製造されるのは僅か50台で、レッドブルはF1マシン用のラインを利用して年間に15台を生産していく予定だ。納車は順次という形となるが、最初のデリバリーは2024年を予定する。

サプライヤーはまだ確定していないものの、軽量のカーボン製シャシーには150馬力の回生システムを備えるV8ツインターボ・ハイブリッドエンジンの搭載が計画されている。ニューウェイによるとERSは主に、加速時のラグ軽減のために使う事を想定している。

RB17では「先進的」なグランドエフェクトを用いてダウンフォースを発生させる方向との事で、今季F1のバズワードの一つ、ポーパシングが懸念されるところだ。

ただF1と異なりレギュレーションという制限がないため、サイドスカートや1992年のウィリアムズFW14Bに搭載されたアクティブサスペンション等、F1規定で禁止されているものを含めて「F1で学んだあらゆるトリック」を総動員し、クルマづくりを進めていくと言うから過度な心配は無用だろう。

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インタビューに応じるレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表、2022年6月28日にミルトンキーンズで行われたハイパーカー「RB17」の記者会見にて

設計、開発、製造のすべての工程は英国ミルトンキーンズの自社ファクトリーで行われる。これは予算上限ルールがF1に導入された事により生じた余剰人員の再配置という点で合理的だ。

クリスチャン・ホーナー代表は「これは我々が持つスキルを活用するという点で完璧なプロジェクトだ。それ故、F1活動の妨げになるのではなく、むしろそれを補完するものになるだろう」と説明し、ヴァルキリーのオーナーでもあるマックス・フェルスタッペンやセルジオ・ペレスが何らかの形で開発の一翼を担うことになるだろうとも付け加えた。

まだまだ詳細は不明ながらも以上の内容及び「シミュレーターへのアクセス権や車両プログラムの開発、トラックでのトレーニングや体験を通じて、レッドブル・レーシング・チームと密接な関係を築くことができる」事を踏まえると、500万ポンド、約8億2,920万円という驚愕の価格も頷ける部分がある。

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