レッドブルRB17、素人でさえ「F1ポールタイムを1秒」上回る脅威の速さ…特注タイヤすら破壊する強大なダウンフォースへの対策
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エイドリアン・ニューウェイの最新作にしてレッドブルでの最後の仕事となるハイパーカー「RB17」は驚くべきことに、シミュレーターにおいてアマチュアドライバーでさえシルバーストン・サーキットのF1ポールタイムを1秒上回る速さを発揮しているという。
4.5リッターV10自然吸気エンジンから生み出される1,200馬力という途方もないパワー、900kg未満の軽量な車体、そして最大1,700kgとされる強大なダウンフォース…レッドブルRB17はまさに驚異的と言うに相応しいモンスターマシンだ。
F1に匹敵するパフォーマンスという桁外れな目標が設定されているにもかかわらず、アクティブ・サスペンションによるバランス調整と、速度やセッティングに応じた「テーラーメイドのダウンフォース」により、アマチュアでもF1のラップタイムを達成できる扱いやすさを兼ね備えているとされるから、さらに驚くほかにない。
レッドブルのポッドキャストに出演したニューウェイは「比較的経験の浅い人でもドライブしやすいクルマを目指した。ドライバーがクルマを感じることができ、扱いやすく、急激な動きがなく、運転が難しすぎないクルマだ」と語った。
「そして、ドライバー自身の能力の向上に合わせてクルマもこれに適応できるようにした。チューニングできるんだ。タイヤやダウンフォースレベルなどが調整できるようになっていて、最終的にはプロの手にかかればF1のラップタイムを出すことも可能だ」
「実際、プロではないものの、かなり腕の立つアマチュアドライバーである顧客の一人が先日、シミュレーターでドライブしたのだが、その走りはシルバーストンのポールポジションタイムを1秒上回るものだった」
この記録はRB17のために特別に開発された「機密」扱いのミシュランタイヤで達成された。LMDhやハイパーカーで使用されるものに似たコンパウンドだというが、その成分は公にされていない。
RB17は、そんな特注タイヤですら耐え切れないほどのダウンフォースを生み出すため、一定の速度を超えるとタイヤを守るべく、おそらくは2026年のF1マシンに導入されるアクティブ・エアロにインスピレーションを得たものだろうが、ダウンフォースを意図的に減少させる仕組みが備わっている。
ニューウェイは「タイヤは大きな課題だった。かなり早い段階でミシュランと契約を結び、このクルマのために特別なタイヤを開発してもらった。だがそれでもなお、時速150マイル(約241km/h)以上ではダウンフォースを減少させる必要があった」
「当然のことながら、タイヤに掛かるトータルの負荷は、クルマの重量と空力的な負荷の合計だ。重量を可能な限り低く抑えることに注力した理由の一つは、最終的には高速域でタイヤが限界に達することが分かっていたからだ」
RB17の開発には英国ミルトンキーンズのファクトリーの約140人が携わっている。最終仕様の決定までには数多くのバージョンが検討された。前輪にハイブリッド駆動システムを搭載するという当初の計画は破棄され、実車には自然吸気エンジンが搭載されることとなった。
「最初はフロントアクスルに電気モーターを搭載して四輪駆動にする予定だったのだが、シミュレーションの結果、重量を減らしてリアアクスルにだけパワーを配分した方が速いことが判明した」とニューウェイは語る。
「当初はV8ツインターボで始まった。もちろん、誰もが自然吸気を望んでいたのだが、設定したパワー、パッケージサイズ、重量目標を達成するために自然吸気エンジンをどのように実現するかが課題だった」
「これはかなり難しい課題だったが、タイミングよくパワートレインのチームが始動し、若手グループとともに解決策を検討し始めた結果、V10自然吸気エンジンに至ったんだ」
50台限定のRB17は今夏に初のサーキットテストが行われる予定で、ニューウェイはRB17の完成を以てレッドブルでの職務に終止符を打ち、2025年第1四半期を以てチームを去る。