コロナ世界流行:開催に突き進むF1に賛否…複雑な心境を吐露するF1ドライバー。中止のシナリオは?
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新型コロナウイルスの世界的大流行を受けて、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が11日にパンデミックを表明したのとは対照的に、F1と国際自動車連盟(FIA)、そして現地プロモーターは、オーストラリアGP開催に向けて突き進んでいる。
パンデミックの表明と呼応するように、米国アメリカプロバスケットボール=NBAは12日以降に予定されていた全試合の中止を宣言。事実上のシーズン打ち切りとも見られる苦渋の決断を下した。また今月18日からカナダで開催が予定されていたフィギュアスケート世界選手権も中止が宣言された。
開催の正当性に懐疑的なベテラン
アルファロメオ・レーシングのキミ・ライコネンは、感染拡大が懸念される状況の中で、このままグランプリを開催する事に疑問を感じている。2児の父でもあるグリッド最年長ドライバーは「僕らが今この場にいる事が正しい事なのかどうか、僕には分からない。恐らくは正しくないだろう」と懐疑的なスタンスを示した。
映画撮影のためにオーストラリアに滞在中の俳優トム・ハンクス夫妻が感染を告白したこともあり、同国内における危機意識は一層高まっている。
ウイルスはパドック内にも忍び寄っており、マクラーレンやハースのチームスタッフが自己隔離状態に置かれている。12日午後には少なくとも2名の検査結果が明らかになる見通しだが、陽性の場合は開催が一層危ぶまれる事になる。
木曜のFIAプレスカンファレンスに出席したディフェンディング・チャンピオンのルイス・ハミルトンは「僕自身、この場にいる事に酷く本当に驚いている。レースが出来るのは素晴らしいが、全員がこの部屋の中で座っているのは僕にとって衝撃的だ」と述べ、ライコネンよりも更に踏み込む形で懸念を表明した。
判断は専門家に委ねるべき、との声も
一方、同じメルセデスのバルテリ・ボッタスの考えはハミルトンとは異なる。ボッタスは「ここでレースが出来ることは本当に素晴らしい。僕はそれ以上の事は何も聞いていないし、何より僕は世界情勢の専門家じゃない。無論情報はアップデートされているし、チーム、ファン、参加者全員の安全確保が最優先事項だけど、上手く対処されると確信している」と語っている。
レッドブル・ホンダのアレックス・アルボンも、ボッタスと同じ様にレースの開催を望んでいる。アルボンは「F1やFIA、そしてチームの皆が多くの専門家の協力を得て問題に対処している。僕らよりも彼らの方が状況を正確に理解している事は間違いないんだから、僕らは彼らを信頼すべきだ」と述べ、主催者の判断に身を委ねるべきだと主張した。
中止の可能性とシナリオ
中止のシナリオは2つある。一つは現在隔離中のチームスタッフが陽性を示した場合だ。
ビクトリア州の地元メディアはブレット・サットン主席医療官の話として「検査結果が陽性であった場合、その者と接触した全ての人々を隔離する必要がある」と伝えており、チーム内に感染者が出た場合はスタッフの大部分が検疫措置に晒される可能性がある。この場合、検査結果に関わらずセッション参加が不可能になる恐れがある。
2つ目は外圧だ。事実上のパンデミック宣言がなされた状況でグランプリ開催を結構した場合、F1やFIA、地元プロモーターが世界中からの批判に晒される可能性がある。
無事にレースを終えたとしても、その後にイベントとの関連が疑われる症例が多発すれば、責任の所在を巡って激しい非難も予想される。こういった結末を避けるために、中止が決断される可能性は否定できない。