角田裕毅のDNF劇を受け陰謀論に言及するメルセデス「タイトル争いをしていたら入念に調べている」
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メルセデスのチーム代表を務めるトト・ウォルフは、9月4日(日)に行われたF1第15戦オランダGP決勝レースの終盤における角田裕毅(アルファタウリ)のリタイヤ劇を受け陰謀論に言及した。
この日、角田裕毅のコース上での停車に伴い導入されたバーチャル・セーフティーカー(VSC)によって優勝のチャンスを奪われたと感じているメルセデスの指揮官は、一件がシニアチームのために行われた姉妹チームによる策略だとの考えに手を染めた。
角田裕毅は10番手を走行していた42周目の終わりにピットストップを行い、ハードタイヤに履き替えコースに復帰した直後にクルマの異常を察知した。タイヤが正しく取り付けられていないのではとチームに訴えた。返答がないため怒鳴り散らす場面もあった。
ピットウォールからの指示に従い一旦コース脇にクルマを停め、リタイヤするためにシートベルトを緩めたものの、タイヤに問題はないから再始動せよとの指示を受けピットに向い、タイヤを交換した上でシートベルトを締め直し、ファストレーンへと向かった。
だが、依然としてクルマに異常を感じた角田裕毅は「何かがおかしい…リア側が変だ。デフが壊れているのかもしれない」と報告。その後、チームからの指示を受けて再びコース上に停車。これによりVSCが導入された。
この不可解なリタイヤ劇についてSNS上ではすぐさま陰謀論が飛び交った。
VSCによってマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がロスタイムを最小限に抑えてタイヤ交換を行うチャンスを得て、1ストッパーを狙っていたメルセデス勢の後ろに下がる事なくトップを維持したためだ。
この説を後押ししたのはアルファタウリのオペレーションだ。角田裕毅はインラップの段階で既にデフの故障の可能性をチームに伝えていたが、チーム側はタイヤに問題はないとしながらもタイヤを交換しただけで、そのまま再びコース上に送り出した。
SNSは似た価値観や興味関心を持つ人と繋がりやすいため、フェイクニュースや陰謀論の温床になりやすい側面がある事は広く知られるところだが、チーム代表がこれに言及した事でその勢いは更に加速した。
テレグラフ紙によるとトト・ウォルフは「角田はコース上で止まった後に再び動き出し、シートベルトをしていない状態で戻って来て再びマシンを走らせ、その半周後に故障…?」と疑いの目を向けた。
更に「もし我々がチャンピオンシップを争う立場にあったとすれば、あれは入念に調べるところだろう」とも述べた。
角田裕毅の所属するアルファタウリはレッドブルの姉妹チームであるため、これまでにも幾度か大なり小なり、こうした陰謀論に晒された事がある。ある種の宿命と言える。
トト・ウォルフは「つまり、それは恐らく我々が勝てたかもしれないレース結果を変えたのだろう。だが、いずれも見当違いかもしれない。私はもうその事は考えていない。終わったことだ」と付け加えた。
陰謀論を追求する気はないとするトト・ウォルフだが、安全面からの詳しい調査は必要だと指摘した。
「ドライバー達、そしてその場にいる全ての人々の安全のために調査されるべきは、あのドライバーが停止し、シートベルトを外して1周を走り、問題が解決されないままシートベルトを締めてクルマを走らせ、その後再びクルマを停めた事についてだ」
エマニュエル・ピロら4名から成るスチュワードはシートベルトの件について、角田裕毅及びチーム代表者からの聴取、並びに映像及び音声証拠を検証の上、「安全ではない状態でコースを走行した」として戒告処分(非ドライビング)を下している。