超過額は1%未満、ホーナーの説明で僅かに見えてきたレッドブル予算違反騒動の輪郭

険しい表情で質問を受けるレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表、2022年10月22日F1アメリカGP土曜プレスカンファレンスにてCourtesy Of Red Bull Content Pool

機密扱いであるが故に憶測でしか語れないレッドブルのF1予算超過問題の輪郭が、おぼろげながらも徐々に見えてきた。2021年の超過額を巡っては180万ドルという数字が頻繁に取り上げられているが、クリスチャン・ホーナー代表によると実際にはそれよりも低い金額のようだ。

国際自動車連盟(FIA)は2021年度のレッドブルの会計報告について、5%未満の「軽微予算違反」に該当すると指摘した。上限が1億4500万ドルに設定されていたため、これは725万ドル未満の予算オーバーを意味する。

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レッドブル・レーシングの英国ミルトンキーンズにあるファクトリーの外観、2021年2月12日

論争の対象は「数十万ドル」ベネフィットは「0」

ライバルはこの725万ドルという数字を元に批判を繰り返してきたが、ホーナーはF1アメリカGPのイベント2日目に行われた会見の中で「我々がFIAとの間で争っているのは数十万ドルの話だ」と述べた。これが超過額を意味するのであれば1%未満と言える。

現在の状況についてホーナーは「FIAと共にプロセスを進めている段階」だとして自ら詳細に踏み込むことは避ける姿勢を見せつつも、財務規定を「52ページもある複雑なレギュレーション」と表現し、会計の専門家の間でも「様々な解釈」があるとして、FIAとの間でルールを巡る見解の相違があると認めた。

解釈の違いという事であれば、監査報告以前にFIAとの対話を通じて違反を防げる可能性があったのではとも考えられるが、ホーナーは「2021年に中間報告を行った際には、我々が規制に反することをしているというフィードバックや指摘はなかった」と述べ、今年3月の会計報告提出後も9月後半に至るまで何の連絡もなかったと説明した。

そして「FIAに関しては、コンプライアンス遵守を導かなければならないとする条項も存在する」と指摘し、責任の一端はFIA側にもあると示唆した。

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報道陣の質問に答えるレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表、2022年10月22日F1アメリカGP土曜プレスカンファレンスにて

一部のライバルチームは、超過した予算によって当該シーズンだけではなく、その翌シーズン以降も競争上のアドバンテージを得る事になると批判しているが、ホーナーは「2021年または2022年に関して開発または運用という観点で得たベネフィットはゼロ」だと反論した。

レッドブルチームの最高経営責任者は「我々の提出物は上限を大幅に下回っていた」と強調し、その絶対的な自信の根拠を次のように説明した。

「全く新しい規制であっため、特定の事柄に異議が申し立てられたり、明確化が行われたりする可能性を見込んでいたが、外部の第三者機関である外部の会計の専門家によれば、52ページから成る文書の解釈に揺らぎのある余地はなかった」

「従って2021年、22年、23年、24年、あるいは一部のチームは26年についても話していたが、我々に何らかの利点があったとは絶対に、そして断じて考えていない。それは完全にでっち上げだ」

詳細知らずの告発に「愕然」

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マクラーレンのザク・ブラウンCEOとレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表、2022年10月22日F1アメリカGP土曜プレスカンファレンスにて

マクラーレンのザク・ブラウンCEOがFIAに対し、予算超過は「詐欺的な行為」にあたるとして厳格な処罰を求めたことについては「事実も詳細も知らないライバルチームがこのような告発をするなんて本当に衝撃的だ」と批判した。

「我々はシンガポールでの告発以来、裁判沙汰になっている。詐欺だとの表現に晒され、途方もない利益を得ただとか、あるいは現実とはかけ離れた数字がメディアに掲載されたりしている」

「メンタルヘルスが注目されているこの時代において我々は今、ブランドやドライバー、パートナーや従業員への損害という重大な問題に晒されており、子どもたちが遊び場でいじめられている従業員もいる」

「これは他のチームからの偽りの申し立てによるもので、正しいことではない」

「事実や実体もなしにそのような主張をするのは間違っている。我々はライバルチームの行動に愕然としている」

オースティンでのファンステージでは、登場したマックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスに一部ファンが「詐欺師」コールを始める場面があった。

既に水面下でABA合意済みか

ホーナーは具体的にどういった項目で超過が生じたのかについては明らかにしなかったが、その一部あるいは全てが、会計報告提出後に変更されたと見られている未使用スペアパーツの扱いを巡って生じたものだと認めた。

当初、2021年仕様のマシンに設計されたもので翌年の新車に引き継げないパーツは予算上限の対象から除外されていたものの、今年6月にルールが変更され、こうした部品も予算総額に含まれるようになった。

噂ではこの他に、チームスタッフの疾病手当金やケータリング、英国税制に関わる税額控除といった分野の関係コストで超過が生じたのではと考えられている。

ホーナーは、今後半年、向こう9ヶ月と終結が長引く可能性のあるコストキャップ裁定委員会での審理は望んでいないとして、違反是認(ABA)締結に意欲を示すと共に、早ければ週内の決着を期待していると述べた。

ただ一部報道では、レッドブルはFIAとの間で既にABA締結の方向で合意したと伝えられている。本来であればアメリカGPの週末に公にされる予定であったものの、予選を前に亡くなったレッドブル創業者のディートリッヒ・マテシッツに敬意を払い、後日発表される見通しだという。

なお制裁内容については、2023年シーズンに許可される風洞の稼働時間の25%減と罰金が提示されたと取り沙汰されている。

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