「ホンダは依然としてICE継続に乗り気じゃなかった」とレッドブル、実現しなかったF1再提携交渉の経緯
Published: Updated:
ポルシェとの交渉決裂を経た昨年9月以降、2026年に向けてホンダが公式F1パワーユニット・サプライヤーとして再びレッドブルと提携するとのシナリオが一時、有力視されたが、実現に至ることはなかった。
フォードとの技術提携の内容からも読み取れるように、レッドブルは順調に開発が推移していたICE(内燃エンジン)を含め、大金を投じて設立したレッドブル・パワートレインズ計画を白紙撤回する気はなく、ハイブリッド領域に限定した支援をホンダに求めていた。
対してホンダ側は、アストンマーチンとの提携がPU一式のフル供給である事から明らかなように、自動車メーカーとして2040年までにEV・FCEV販売比率をグローバルで100%にするとの方針を維持しつつも、100%持続可能燃料を使用するICEを含めたパッケージ全体の開発を望んでいた。
故に交渉は頓挫したわけだが、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表によると、ICEに関するホンダの立ち位置は決して一貫していたわけではなく、昨年秋以降に180度転換したようだ。
ホンダとアストンマーチンの提携発表を受けホーナーはF1第7戦モナコGPのFP1を経て、実現に至らなかったホンダとの交渉の経緯を説明し、昨年秋の段階までホンダが依然としてICEから距離を置くスタンスを取っていたと明かした。
「我々はここ数年、大切なパートナーとしてホンダと多くの話し合いを重ねてきた。当初の契約では、2022年末までにホンダはこのスポーツから完全に去り、我々がエンジンの組み立てを行うことになっていた」
「だが2025年末まで引き続きエンジンの組み立てを続けてくれるよう、ホンダを説得する事ができた」
「その後、昨年の秋から冬にかけて、電動化に関して何らかの形で連携が取れないかどうか、その可能性について議論した」
「なぜならホンダは当時も依然として内燃機関の継続に乗り気でなかったからだ」
「しかしながら、実現のためにはおそらく双方にあまりにも多くの妥協が必要だった。そこで我々はフォードとのオプションについて検討し、提携する事を決定した」
ホーナーによれば、ホンダが辛抱強くF1に留まり続けていれば、あるいは撤退発表後早々にF1復帰を決断していれば、レッドブルは多大なコストをかけて独自エンジン開発プロジェクトを実行に移す事はなかった。
結果的にではあるが、それは僅かなタイミングのズレが”レッドブル・ホンダ”としての長期政権の芽を摘んだ事を意味する。だがホーナーはこの状況を受け入れ、前を向いている。
「ホンダは26年からライバルになるわけだが、F1にとってプラスだと思うし、彼らにとっても前向きなことだと思う」とホーナーは語る。
「ホンダはパートナーとして迎えるに素晴らしい企業だ。シルバーストンのチームはきっと、彼らとの仕事を楽しむ事だろう。まだ2年半先のことだがね」