ホンダF1、メルセデスPUの予選ペースに「驚く」一方で「勝負できる」

ホンダF1の山本雅史マネージング・ディレクター、2020年F1オーストリアGP予選にてcopyright Honda

後に黄旗無視の裁定によってルイス・ハミルトンが3グリッド降格を受けたものの、2020年シーズンの開幕F1オーストリアGP予選では、ディフェンディング・チャンピオンのメルセデスW11の2台が、後続にコンマ5秒以上のもの差をつけてフロントローを独占する展開となった。62秒サーキットとしては、著しく大きなギャップだった。

メルセデスの予選ペースに驚いたホンダF1

メルセデスが圧倒的なコンテンダーであろう事はフリー走行の結果からある程度は伺いしれた事ではあったが、もう一つの優勝候補に挙げられていたレッドブル・ホンダに対して、格下扱いせんとする程の驚愕のタイム差をつけたのは、誰の目にも驚きを以て迎えられた事だろう。

それはホンダF1の山本雅史マネージング・ディレクターにとっても同じであったようだ。

山本MDはレッドブル・リンクでの第1レースについて「プラクティスでは、ダイナモでの結果から期待していた通りの成果を確認する事ができていました」と振り返った。

「特にロングランに関してはそうでした。そのため全てが計画通りに進んでいたのですが、メルセデスの進歩には驚きました。予選に関しては特にそうです。彼らとのギャップに少し驚いてしまいました」

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行の影響は、コンストラクターだけでなくパワーユニットサプライヤーにも大きな影響を与えている。国際自動車連盟(FIA)はシーズン中のパワーユニットのアップデートに制限を加えた。これは原則として、オーストリアGPでの使用スペックがシーズン最終戦まで継続される事を意味する。

遅れているのはエンジンと車体の双方

コンマ5秒のギャップは一体どこから来たのだろうか? その大半はエンジンではなくむしろ車体側、バランスとエアロパーツの剛性に起因するものと見られている。

フェルスタッペンはプレシーズンテスト以降のホンダエンジンの進化の程度を「大きなステップ」と称し、メルセデスに匹敵するには「シャシーとエンジンの双方をプッシュする必要がある」と述べた。

更に「コーナーの進入からミッドコーナーに至るまでのバランスが悪く、自信を以てプッシュできなかった」と説明し、「予選で勝てるとは言わないが、コンマ2・3秒以内に食らいつけば間違いなく決勝で勝負できる」と述べ、第二レースに向けて自信を示した。

開幕の地、レッドブル・リンクにアップデートを持ち込んだのはメルセデスとホンダだけであったが、ホンダが性能と信頼性の両面を追求した一方で、メルセデスが重点を置いたのは信頼性のみであった。

目標は依然「勝利」メルセデスと勝負できる

新型肺炎による経済的ダメージを抑えるべく、FIAとチームは今回新たにシャットダウンの対象にパワーユニットメーカーを加えた。これによりホンダを含むメルセデス、フェラーリ、ルノーの各エンジンサプライヤーは、当初予定していた開発計画のリスケを強いられた。

ホンダのF1パワーユニットは栃木県のHRD-Sakuraで開発されている。山本MDは「今季もシーズン中に複数回のアップデートを計画していましたが、これを変更してオーストリアGPまでに全てをまとめ上げなければならなくなりました。これが一番の課題でした」と説明する。

開発計画は変更されたものの、信頼性を考慮したシーズン中のアップグレードは許可されているため、シャットダウン後のファクトリーではそのエリアを含めつつも、専ら翌シーズンに向けた開発に注力している。

「必要であれば信頼性にも取り組んでいくつもりですが、パフォーマンスについてはできる事が何もありませんので、今は2021年のパワーユニット開発の焦点を当てています」と山本MDは続ける。

「開幕戦を終えた事で課題も見えてきました。特に予選でのパフォーマンスに関してはレギュレーションで定められた範囲の中で改善していかなければなりません。ですが、決勝レースでのパフォーマンスには励まされましたし、メルセデスに対抗することは可能だと思っています。シーズンを通して彼らと競い合うこと。それが我々のターゲットです」

ホンダは2020年シーズンの目標について「勝利を目指す事に変わりはない」としている。

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