燃料トリック制限とUSでのフェラーリ失速を結びつけるのは短絡的、とホンダF1田辺TD

クルーに手押しされてピットレーンを移動するフェラーリのセバスチャン・ベッテルcopyright Ferrari S.p.A.

マックス・フェルスタッペンの「不正行為」発言が大きな波紋を呼んでいるが、ホンダF1の現場統括責任者を務める田辺豊治テクニカル・ディレクターは、率直な物言いが度々物議を醸す若きオランダ人ドライバーとは異なり、慎重な姿勢を見せている。

F1第19戦アメリカGPの週末、レッドブル・レーシングからの問い合わせに対して、FIAは技術指令書を発行する形で燃料流量制限の穴を塞いだ。流量の測定は連続的ではなく断続的なタイミングで行われており、レッドブルのエンジニアは、未測定のタイミングでより多くの燃料を通過させエキストラパワーを得る方法を実証した。

当然のことながらFIAは、これ違法と断定。流量制限を回避する技が明確に禁じられた事で、COTAでのFP3以降の跳馬のパフォーマンスに大きな注目が注がれた。

田辺豊治TDはMotortrendとのインタビューの中で、「1回のレース結果だけを元に何かを断言する事は非常に困難です」と切り出し、フェラーリの失速がFIAの技術指令書に関連していると考えるのは短絡的だとの考えを示した。

「我々はサーキット毎にパワーユニットだけでなくシャシー、つまりエアロダイナミクスも最適化しています。最高速度、つまりストレートスピードは、PUのパワーとダウンフォースのバランスにより生まれるものです」

「もしメカニカルグリップが十分でタイヤマネジメントに問題がなくとも、苦手意識のあるコースであれば、より多くのダウンフォースをつける事になりますが、この場合トップスピードは低下します」

「我々は常にバランスをとる必要があります。非常に強力なパワーユニットと優れたシャシーがあれば、トップスピードは高くなりますが、例え強力なパワーユニットがあったとしても、車体の空力効率が悪い場合、最高速度は低くなります」

「同じパワーユニットを使用していたとしても、シャシーの効率の程度はトラック毎に変化しますので、最高速度も変わります。つまり、ほんの数日間のことだけで何かを語るのは簡単ではないということです」

フェラーリは今年、ライバルに対してパワーアドバンテージを誇ってきた。マラネロが開発した今季型SF90は、前戦メキシコで6戦連続でポールポジションを獲得。フェラーリが6戦連続PPを成し遂げたのは、過去これまでに1961年と1974年の2度しかなく、45年ぶりの快挙であった。

だが、アメリカGPでのフェラーリはセバスチャン・ベッテルの予選2番手が最上位に留まり、連続記録更新ならず。シャルル・ルクレールは決勝で、トップから52秒遅れという大差での4位フィニッシュに留まった。

“リザルト的”に、疑いの目を向けられてしまう状況があったのは確かだが、フェラーリの失速の原因が燃料流量制限に関連したものであるかどうかを現時点で判断する事は難しい。シーズンは後2戦残されており、次戦ブラジルでフェラーリが再び勢いを取り戻す可能性もある。

フェルスタッペンはレース後、フェラーリが突如失速した理由について「不正行為をやめたため」だと語り、直球ストレートを投げた。「不正行為」という表現ではないものの、メルセデスAMGのルイス・ハミルトンも予選後に、フェルスタッペン同様の疑いの目を向けている。

当のフェラーリ側は、パフォーマンス低下の原因はFIAの技術指令書とは無関係であり、車体構成の違いやタイヤマネジメントの失敗によるものだと主張。マッティア・ビノット代表の怒りは大きかったようで、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表に抗議している様子が確認されている。

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