ホンダF1エンジン、E10燃料対応で「信頼性が著しく低下」も2023年に向けて期待を誘う前向き要素
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「レッドブル・パワートレインズRBPTH001」のバッジが付けられたホンダの2022年型F1パワーユニット(PU)が、E10燃料への対応で信頼性を大幅に犠牲にしていた事が分かった。
レッドブル及びアルファタウリが昨年のF1世界選手権で搭載したPUは、マックス・フェルスタッペンと共にホンダがV6時代初のF1タイトルを勝ち取った「RA621H」をベースとしている。
性能を第一として信頼性を犠牲に
F1は昨年、持続可能性並びに温室効果ガス排出量の実質ゼロを指す「ネット・ゼロ・カーボン」の実現に向けた取り組みの一環として、化石燃料90%、バイオエタノール10%がブレンドされた、いわゆるE10燃料を導入した。
これに伴いホンダを含む各PUサプライヤーはICE(内燃エンジン)を変更。20馬力程度と推計される出力低下に対応した。
PUは2022年に2段階に分けて開発が凍結された。ただし信頼性の改善を目的とする開発は引き続き許可されるため、フェラーリやアルピーヌ(ルノー)はパフォーマンス優先で開発を進めた事を明かしている。
英「Autosport」によるとHRCの角田哲史エグゼクティブ・チーフエンジニアは「昨年はどのPUメーカーもパフォーマンスを優先して開発を進めたと思いますが、我々も同じでした」と述べ、性能を第一として信頼性を犠牲にしていた事を認めた。
新燃料への対応のために行った調整により、エンジン内部の負荷は前年と比べて「大幅に増加」した。その結果、2022年型PUは「信頼性が著しく低下」する事となり、シーズンを通して「幾つかの問題が表面化」したという。
期待される2023年型パワーユニット
トラブルを受けホンダは、2023年シーズンに向けて「問題が顕在化したエリアを改善するだけでなく、各パーツの限界を見極め、そのポテンシャルを最大限に引き出す」との戦略を以て準備を進めてきた。
2023年型PUは例え馬力そのものに変化がなくとも信頼性の改善を背景に、理論的に言えば制御ソフトのアップデートと合わせて運用面を最適化する事でパフォーマンスの底上げが可能になるものと思われる。
角田チーフエンジニアは「信頼性を改善できれば、パワーユニットをどう使うかという戦略的観点において、選択肢を増やす事に貢献できると思います」と説明する。
「信頼性の向上に加えて我々は、制御やエネルギーマネジメントの更なる最適化を図るため、PUに対する理解を深めてきました」
ただ、2023年シーズンに向けた前向きな材料はこれに留まらない。
角田チーフエンジニアは電動化技術、特にMGU-Kのデプロイメントに関しては昨年、ライバルに対して「明確な優位性」を持っていたとまで断言した上で、今季に向けて一層の磨きをかけてきたと主張し、次のように続けた。
「加えて、製造、品質検査、ガバナンス、そしてパワーユニットの精密な組み立てなど、部品の精度を向上させるためにサプライヤーとの協働を続けてきました」
大注目のプレシーズンテストは2月23日よりバーレーン・インターナショナル・サーキットでスタートを迎える。
角田チーフエンジニアは「HRC Sakuraは今シーズンに向けて全力を尽くして取り組んでいます。今週から始まるプレシーズンテストへの準備は万全だと考えています」と付け加えた。