エイドリアン・ニューウェイ、F1から完全撤収か…規則上の課題を受けレッドブルが検討との報道

ペンとノートを手にピットウォールに座るレッドブル・レーシングのエイドリアン・ニューウェイ、2022年9月2日F1オランダGPフリー走行Courtesy Of Red Bull Content Pool

予算上限を定めた財務規則上の課題から、最高技術責任者(CTO)を務めるエイドリアン・ニューウェイがレッドブル・レーシングのF1プロジェクトから完全に手を引く可能性が取り沙汰されている。

米リバティ・メディアは2017年のF1買収を経て、市場拡大と新たなファンの開拓に向けて、チーム間競争力の平準化を中長期的な目標に掲げた。結果が予測できてしまうレースほど退屈なものはない、というわけだ。

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レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーとリバティ・メディアのグレッグ・マフェイCEO、2022年10月30日にエルマノス・ロドリゲス・サーキットで行われたF1メキシコGPにて

フェラーリ然り、メルセデス然り、そしてレッドブル然り。F1は資本集約型のスポーツであり、投資額が競争力に直結する。そして一旦技術的なリードを確立すると優位性を維持し続けることが容易となるため、特定の1チームが数シーズンに渡ってチャンピオンシップを席巻し続ける傾向がある。

技術開発、最先端の設備、トップクラスの人材の雇用など、常勝チームの財布は決まって青天井…この問題への対処として導入されたのが財務規則だった。チームの年間予算を制限するこのルールは2021年から段階的に導入された。

当初は1億4,500万ドルに制限された。2024年シーズンは基本上限が1億3,500万ドルで、インフラ補正と例外規定を考慮すると1億5,000万ドル程度となるが、それでも大部分のチームが上限目一杯の金額を投じる見込みだ。

各チームの高給取り上位3名の給与は予算上限からの免除が認められており、レッドブルにおいてはニューウェイがこの内の一人となっている。

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優勝を喜ぶレッドブルのヘルムート・マルコ、エイドリアン・ニューウェイ、クリスチャン・ホーナー、2022年5月8日F1マイアミGPにて

予算上限ルールの打撃は大規模チームほど大きい。レッドブルは高い専門性を持つエンジニアを確保し続けるため役職を増やし、昇格、昇進という給与以外の面で従業員の満足度を上げようと手を尽くしているようだが、この方法にも限界がある。

当然ライバルはこの点に目をつけている。技術部門の要であったダン・ファローズとロブ・マーシャルがそれぞれ、アストンマーチンとマクラーレンに引き抜かれるなど、近年のレッドブルは人材争奪戦で狙い撃ちにされている。

テクニカル・ディレクターのピエール・ワシェとエアロダイナミクス責任者を務めるエンリコ・バルボもヘッドハンティングの対象となった。二人は誘惑に抗ったが、何らかの対策を打たない限り人材流出のリスクは高まる一方だ。

こうした状況の中でレッドブルは、ニューウェイをF1プロジェクトから完全撤収させる計画を立てているようだ。独『AMuS』によるとチームは現在、ニューウェイをハイパーカー・プロジェクト「RB17」に専念させる中長期的な計画を検討しているという。

ニューウェイは現在、F1とRB17の両方のプロジェクトに関与している。F1プロジェクトから完全に離れれば、予算上限の免除枠の一つが空くことになる。

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レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表と最高技術責任者のエイドリアン・ニューウェイ、2022年6月28日にミルトンキーンズで行われたハイパーカー「RB17」の記者会見にて

ニューウェイの異動計画にはもう一つの背景がある。統括団体の国際自動車連盟(FIA)とF1は、RB17の開発がF1マシンの開発に技術的なアドバンテージをもたらす可能性があるかどうかについて注視している。

FIAは昨年、レッドブルを含む4チームが予算上限ルールの盲点を突き、規定の意図に反する方法で利益を得ていた疑いがあるとして技術司令TD45を発行した。

財務規則には予算上限の対象外であるF1以外の活動を通して培った技術や知見、ノウハウをF1プロジェクトに還元できる抜け穴が存在していた。疑惑の目はRB17に向けられた。

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