レッドブル、低抵抗ウイングに逆転の布石…追い抜きではないトップスピード重視の意外な狙い
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ロングストレートが中心の第2セクターでの圧倒的なスピードに表れるように、レッドブルはフェラーリとは対照的に、レースを見据えて低ドラッグ仕様のパッケージに懸けた。それは単にオーバーテイクに焦点を当てたからではない。
ミストラル・ストレート中間地点のターン8手前で計測されるスピードトラップでレッドブルは、後続に5km/h近い差を付ける驚異的なトップスピードを叩き出した。以下は予選でのスピードトラップ記録の集計だ。
Pos | Driver | Team | km/h |
---|---|---|---|
1 | ペレス | レッドブル | 339.9 |
2 | フェルスタッペン | レッドブル | 339.8 |
3 | シューマッハ | ハース | 335.1 |
4 | 角田裕毅 | アルファタウリ | 334.3 |
5 | マグヌッセン | ハース | 334 |
6 | ルクレール | フェラーリ | 333.8 |
7 | アルボン | ウィリアムズ | 333.5 |
8 | ラティフィ | ウィリアムズ | 333.4 |
9 | ラッセル | メルセデス | 332.5 |
10 | アロンソ | アルピーヌ | 332.1 |
11 | ガスリー | アルファタウリ | 332 |
12 | オコン | アルピーヌ | 331.6 |
13 | サインツ | フェラーリ | 331 |
14 | リカルド | マクラーレン | 331 |
15 | ノリス | マクラーレン | 330.8 |
16 | 周冠宇 | アルファロメオ | 330.4 |
17 | ベッテル | アストンマーチン | 329.7 |
18 | ボッタス | アルファロメオ | 329.7 |
19 | ハミルトン | メルセデス | 329.6 |
20 | ストロール | アストンマーチン | 329.1 |
ポールポジションを獲得したシャルル・ルクレール(フェラーリ)は時速333.8km止まりで、予選3番手のセルジオ・ペレスとは6.1km/hもの開きがあった。週末を通してドラッグレベルの低いリアウィングを使い続けたレッドブルは、他の3箇所の計測地点でもトップスピードを記録した。
予選を終えてクリスチャン・ホーナー代表は、フェラーリとレッドブルのセットアップの違いについて次のように説明した。
「今日はフェラーリが優位を築いた。我々がウイングをより切り詰めた一方、彼らは今週末のサーキットを攻めるという点において我々より少しダウンフォースが多かった」
空気抵抗が低いという事はダウンフォースが少ない事を意味するため、予選では特に第3セクターで不利となる。ただ、決勝ではこれがレッドブルに対して有利に働く可能性がある。
ホーナーは決勝に向けて「ターン11やターン12、セクター1といったロングコーナーをフロントタイヤがどう乗り切るかが決め手となる」と語った。
フェラーリは予選において、ストレートで失う代わりにこうしたコーナーでその不足分を稼ぎ出した。だが、決勝でも予選と同じ様に全開で走ればタイヤはたちまちオーバーヒートしてしまい、フロントタイヤは早々に音を上げる事になりかねない。
予選を終えたフェルスタッペンは、タイヤを殺さないようにしながら、如何に一貫したペースを刻むかが重要だと指摘した。
「明日は今日よりも更に気温が上がる可能性があるから、タイヤ的にもっと厳しくなると思う。つまり、タイヤを如何に活かすかがカギになる。要はスタートのペースが良いだけじゃ駄目で、それをキープすることが大事なんだ」
また、レッドブルが採った低ドラッグ戦略と決勝でのタイヤのデグラデーションの見通しについて次のように説明した。
「僕らはストレートでかなり速いと思う。もちろん、それは良いボーナスなんだけれど、もう少し高速パフォーマンスに目を向ける必要があると思う」
「どんなウイングを装着しても、僕らはフェラーリと比べて常に高速性能で少し劣勢にある。でも明日はタイヤがものすごく過熱する事になりそうだから、予選ラップのように高速区間でプッシュすることはできない」
「だから当然、場所によってDRSが使える予選の時よりもトップスピードがモノを言うだろうし、そうなる事を期待してるんだ」
レッドブルが低ドラッグ仕様のセットアップとした狙いは、決勝を見据えてタイヤを守りつつラップタイムを最適化する点にあった。
カルロス・サインツがエンジン交換ペナルティで最後尾に下がった点もレッドブルにとっては追い風だ。ルクレールが孤独な戦いを強いられる一方、レッドブルはフェルスタッペンとペレスの2つの駒を駆使する事ができる。
「初日を経てファクトリー共々、夜通しでシミュレーション作業に取り組んだ結果、今日に向けて改善し、最終的に2・3番グリッドを手にする事ができた。決勝ではここから何かできると信じている」とホーナーは語る。
「2台対1というのは常に戦略的に有利だし、ここは戦略が決定的な役割を果たし得るコースだ」
「明日は暑く、風も少し強まりそうだから、魅力的な戦いになるだろう。もしそれがレース展開を左右し、オーバースピードでシャルルに近づけたなら、その時がオーバーテイクのチャンスだ」
2022年F1フランスGP予選ではシャルル・ルクレール(フェラーリ)がポールポジションを獲得。2番手にマックス・フェルスタッペン、3番手にセルジオ・ペレスと、後方にレッドブル勢が続く結果となった。
2022年F1フランスグランプリ決勝レースは日本時間7月24日(日)22時にフォーメーションラップが開始され、1周5842mのポール・リカール・サーキットを53周する事でチャンピオンシップを争う。