速読:フェラーリF1「SF-23」先代比較で何が変わった? 憶測を呼ぶ謎の給排気口、例の物議エレメント

フェラーリの2023年型F1マシン「SF-23」と2022年型「SF-75」のサイドポッド、エンジンカバーの比較画像copyright Formula1 Data

2008年以来、15年ぶりのコンストラクターズ選手権制覇を目指すスクーデリア・フェラーリの2023年型F1マシン「SF-23」は全体的に先代とかなり似通っているが、シャシー部門を率いるエンリコ・カルディーレは「全てが完全に再設計」された文字通りの新車だと強調する。

開発のターゲットは技術規定の変更(フロア高15mm+)により失われたダウンフォースを取り戻す事と、セッティングの幅を広げてコース特性の違いに関わらず一貫性を持たせることの2点に定められた。

2022年型「SF-75」と比較しながら駆け足でマラネッロの美しき最新作を見ていきたい。

先代踏襲の空力思想

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フェラーリの2023年型F1マシン「SF-23」と2022年型「SF-75」のサイドポッド、エンジンカバーの比較画像

細かな違いは確認できるが、それでもなおサイドポッドや、その前部に設けられた吸気口など、あらゆる空力的要素は先代と非常によく似ている。

レッドブルに敗れたとは言え、F1-75はシーズンを通して12回のポールポジションを獲得する俊足を備えていた。同一コンセプトを継続し、突き詰めるのは理にかなっている。

側面構図で確認できる明らかな違いは、エンジンカバーと後輪前部の気流排出口、エア・アウトレットの形状だろうか。

サイドポッド下部のアンダーカットには側面衝撃構造のものと思われる突起(青色)も確認できる。

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フェラーリの2023年型F1マシン「SF-23」と2022年型「SF-75」のサイドポッド周りの比較画像

正面から見るとサイドポッド・インレットの形状が微調整されているのが分かる。垂直方向に狭められる一方、幅広にする事で開口面積を維持しつつ、サイドポッド下部の空間を拡大している。

そんなアンダーカットには吸気口(黄色)と思しき奇妙な要素が確認できる。

先代のサイドポッドの側面は断崖絶壁の如く真っ直ぐな形状をしていたが、新型のそれは垂直方向に丸みを帯びており、更には車体後方に向けて緩やかなラインを描いている。

コックピット後方にはウイングレットが取り付けられ、ヘイローの上部にはフェアリングが配置されている。

盆地に設けられた謎の排気口

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フェラーリの2023年型F1マシン「SF-23」の冷却ルーバー

一部で「バスタブ」とも呼ばれる上面の独特な窪みも健在だ。ルーバーは各サーキットの冷却要求に応じて変更される事になるだろうが、ヘイロー付け根部分に設けられた排気口(図の左の方の楕円形で囲われた部分)は何を意図しているのだろうか?

内部に収められた電子機器の冷却用か、はたまた排出先のボディーワークに沿って気流を導く事で空力的な利益をもたらさんとするSダクト的なアイデアなのだろうか?

スペイン「DAZN」でアナリストを務めるアルベルト・ファブレガは、先に紹介したサイドポッド下部の謎めいた吸気口から導かれた空気の排出口ではないかと指摘している。以下のGIFアニメが分かりやすい。

最大変更点はフロントサス

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フェラーリの2023年型F1マシン「SF-23」と2022年型「SF-75」のフロントサスペンションの比較画像

カルディーレ曰く、先代からの「最大の変更点」はフロントサスペンションだ。空力学的観点から、ステアリング操作をホイールに伝えるためのトラックロッドの取り付け位置を低く変更したのだという。

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フェラーリの2023年型F1マシン「SF-23」と2022年型「SF-75」のフロントウイング、ノーズ、トラックロッドの比較画像

確かに上の図で見ると一目瞭然だ。従来とは全く異なりトラックロッドは低い位置に取り付けられている。

フロントウイングとノーズも変更された。車体中心から外側へと向かうフラップの形状だけでなく、ノーズ先端が1枚目ではなく2枚目のエレメントに接続される形になった。

昨年物議のスロットギャップ・セパレーター

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フェラーリの2023年型F1マシン「SF-23」のフロントウイングに設置されたスロットギャップ・セパレーター

フロントウイングで目につくのはスロットギャップ・セパレーターだ。いずれも気流を車体側方に導くような角度で取り付けられている。

同様のソリューションはメルセデスが昨年のアメリカGPとメキシコGPに持ち込んでいるが、ライバルからの告発リスクもあり実戦投入を見送った。

これは本来、ウイングの各エレメント間の隙間を維持するために用いられる。ただ、メルセデスのそれは空力的利益を狙うものであり、接近戦を促さんとするレギュレーションの精神に反するとの判断がFIAよりなされた。

ただしその後、技術規定が改定され、セパレーターが各エレメントを「構造的に接続」している事を証明しさえすれば合法と見なされる事となった。

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