F1、2022年より開発競争を視覚化する新たな取り組み…チームにアップデート開示を義務化
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FIA-F1世界選手権は2022年シーズンより、チームのマシン開発競争を視覚化する新たな取り組みを開始すべく、スポーティング・レギュレーションを改定した。
F1チームは3月のバーレーンでの開幕戦以降、各週末に投じるマシンへの主だったアップデートを全て開示しなければならない。これらの詳細は新たに設けられる「車両展示(Automobile Display)」と呼ばれるイベントでメディアやファンに公開される。
F1が世界各地の様々なモータスポーツカテゴリーと決定的に異る点の一つは、その主戦場がドライバーの腕や能力ではなく技術競争にある点だ。各コンストラクターに独自開発を義務付ける条項が存在する事が象徴するように、F1においてはドライバーの腕以上にマシンの性能がレース結果を大きく左右する。
F1チームは毎戦のようにマシンに新しい開発パーツを持ち込む。時にそれは、マシンを以前とは全く別の姿へと変貌させる程の大規模なものとなるが、これまでは各レース週末において、この点に特段フォーカスするような取り組みは行われてこなかった。
だがF1は今季より、マシン開発という技術的な側面をファンに分かりやすく公開する事で、スポーツの魅力をより高めていく。
具体的には、各チームは週末に投入する「主だった全て空力及びボディーワーク」関連のアップデートについて、変更したコンポーネントの名称並びに簡単な説明を記載した文書を、FP1開始23時間前までにFIAのメディア・デリゲートに提出しなければならない。
この内容はFP1開始90分前までにピットエリアで開始される「車両展示(Automobile Display)」と呼ばれるプレイベントにおいて公開される。
各チームはFIAが指定したガレージエリアに2台のマシンを展示。これと合わせて、前戦以前に使ったものとは異る新たなパーツの名称と説明が開示される。なおこの時の展示車両はFP1で実際に使用する構成でなければならない。
同様のプログラムは予選後にも行われる。
予選Q3終了後、レースディレクターとテクニカル・デリゲートが10チームの中から5チームを指定する。指定されたチームは各々1台のマシンを「予選後車両展示(post-qualifying Automobile display)」用に用意しなければならない。
更に指定されたチームの技術部門あるいは競技部門の上級代表者1名は、FP1前の”車両展示”以降にマシンに施された変更点について、少なくとも10分間以上メディアに対して説明しなければならない。
例えエアロダイナミクスやボディーワークの変更点のみとは言え、この取り組みは手間や準備という点でもチームにとって新たな悩みのタネとなる可能性がある一方、ファンにとっては大いに歓迎すべきものと言える。特に今年は規定大改訂が行われただけに尚更だ。
F1は競争力の平準化とホイール・トゥ・ホイールの促進を目的に、2022年に向けて史上最大とも言える大規模なレギュレーション変更を行った。複雑な空力パーツは一層され、グランドエフェクト重視のアンダーフロア・トンネルが導入された。
今シーズンはバルセロナ及びバーレーンでのプレシーズンテストから11月の最終アブダビGPまで、片時も休みのない過酷な開発競争が繰り広げられる事になる。アストンマーチンが明かしているように、クルマの空力コンセプトを変更するチームが出てくる可能性もある。F1マシンの進化が例年の比でないだけに、この取り組みの意義は大きい。