アンドレッティF1参戦の障害…希釈化損失をリバティではなくチームが負担するのは筋違いだ、とレッドブル
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アンドレッティ・グローバルが2024年から11番目のチームとしてF1に加わる事を目指す中、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、新チームの参戦に伴う分配金の希釈化損失をリバティ・メディアではなくチームが負担するのは筋違いだと主張した。
ポルシェとアウディに関しては既存チームとの提携、または買収による参戦が見込まれるが、マイケル・アンドレッティはザウバー買収交渉が破談となった事を受け、ゼロからチームを立ち上げエントリーする方向で準備を進めている。
希釈化損失はリバティが負担すべき
既報の通り、バティ・メディアのグレッグ・マフェイCEOはF1第5戦マイアミGPを前に、将来的にF1チームを増やす可能性があることを示唆したが、それでもなお分配金問題の解決は不可避だ。
ホーナーはマイアミGPの会見の中で「理論的に言えば、チーム数の拡大を望むのであればそれはリバティが取り組むべき問題だろう。10チーム以上に数を増やすとなると必然的に、賞金分配に関わる問題がつきまとう事になる」と述べ、商業権を持つリバティが負担すべきだとの考えを初めて示した。
「つまり最終的にはお金が重要なファクターなんだ。既存チームが新規チームの参入に掛かる費用を間接的に負担するのが不公平であるからこそ、そこには常に矛盾が生じることになる」
更にホーナーは「マリオ(マイケルの父であり、1978年のF1ワールドチャンピオンでもあるマリオ・アンドレッティ)がドライバーとして戻ってくればもっと良いのだが」と冗談を飛ばして「リバティにとって、将来的に解決しなければならないのは彼らのビジネスモデルだと思う」と付け加えた。
現行のコンコルド協定には、新規参戦チームに対して2億ドル、日本円にして約325億円の支払いを義務付ける規定があり、当該支払金額を既存参戦チームが等分して自らの懐に入れる仕組みがある。
これには参入障壁を設けることで既存チームの価値を向上させると共に、新チームの参戦に伴い分配金収益が減少する既存チームへの補填的な意味合いがある。
ただしこれはあくまでも短期的なものであり、長期的に見ればさしたる額ではないとホーナーは主張した。
「2億ドルは大きな金額だと思うが、このビジネスにおいては利害関係者で分け合うとそれほど大きな金額にはならない。結局のところワンショットだし、毎年2億ドルが支払われるわけじゃないんだ」
我々に何のメリットがある?とハース
こうした事情から既存のチームの多くはアンドレッティの参戦に否定的だ。
メルセデスのトト・ウォルフ代表はマイアミGP予選の当日朝にマリオ・アンドレッティからWhatsAppのメッセージを受け取ったばかりだと明かした上で、希釈化を理由に改めてアンドレッティの参戦に否定的な立場を示した。
「もし真のアメリカチームが誕生し、アメリカ人ドライバーが起用されれば、それは本当に有益なことだと考えている。だが今は10チームのエントリーがあり、その10チームで賞金を分け合っている」
「我々はこの10年間に渡って、かなりの額を投資してきた。つまり、ここにいる各組織は恐らく、長年に渡ってF1プロジェクトに10億ドル以上を投じてきたわけで、(新チームが加わるのであれば)増収とならねばならない」
「11番目のチームというのは、既存チームにとっては10%の希薄化を意味するわけで、参入によって発生する負担以上のお金をもたらす事を証明できるチームがあるのであれば、我々はテーブルに座り、そのようなチームの参入を応援すべきだ」
「だが、それはまだ実証されていない。これは数字の話だから少しドライに聞こえるかもしれないが、F1の価値はフランチャイズ(チーム)の数が限られているところにある。故に、チームを増やす事によって、その価値を薄めたくはないのだ」
アンドレッティが新チームを立ち上げてのF1参戦に舵を切った発端であるザウバー(アルファロメオ)のフレデリック・バスール代表も当然、否定的だ。
「もしメガ級の付加価値を持つ新しいチームがやってくるなら納得する余地もあるかもしれないが、既存の2・3チームを危険にさらすリスクがある新参者を我々が迎え入れなければならない理由はない」
「既存のチームとパートナーシップを築いた方が良いだろう。私はその余地があると思っているし、新規チームを迎え入れるよりも現実的だ」
ハースのギュンター・シュタイナー代表に至っては「なぜ我々10チームが新参者のために自らの価値を進んで薄めるだろうか?我々に何のメリットがあるんだ?」と指摘した。
好意的なマクラーレンとアルピーヌ
メルセデス、レッドブル、ハース、アルファロメオが否定的な一方で、アメリカ人のザク・ブラウンがグループCEOを務めるマクラーレンと、新規参戦の暁にはパワーユニットを供給する予定となっているアルピーヌは変わらず、アンドレッティの参戦に好意的だ。
アンドレッティについてザク・ブラウンは、「これまでに見てきたような2・3年で消えるような他のエントリー」とは異なり「信頼できるブランドと適切なリソースを持ったレーシングチーム」であり、参戦によってF1に多くの付加価値をもたらすとして、改めて支持する考えを強調した。
またアルピーヌのローラン・ロッシCEOは「私は非常に好意的だ。マイケルとも話をした。アメリカにおける市場の拡大に沿うものだし、ショーにも貢献してくれるだろう」と語った。