メルセデスF1とUCLの呼吸補助装置、無償公開で世界105カ国に広まる
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メルセデス製F1パワーユニットを製造するMercedes-AMG HPPとユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)らが共同開発した呼吸補助装置「UCL-Ventura」が無償公開された事で世界105ヶ国に広まり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘いに役立てられている。
「UCL-Ventura」は肺炎患者の呼吸を補助する持続的気道陽圧装置(CPAP)で、英国政府からの10,000台のオーダーを受け、英国ブリックスワースに位置するメルセデスF1エンジン部門所属のエンジニアとUCLが、24時間体制でリバース・エンジニアリングに取り組み開発した。
© James Tye / UCL.
これは英国に拠点を持つF1チームによる「プロジェクト・ピットレーン」の一環として実施されたもので、レッドブル・ホンダ、メルセデス、マクラーレン、レーシングポイント、ルノー、ウィリアムズ、そしてハースの7チームは、新型肺炎の感染拡大による人的被害を最小限に抑えるべく英国政府に協力している。
世界を転戦しながら毎戦に渡って車体を改良し続けるF1においては、コース上のみならずマシン開発においても速さが求められており、メルセデスは得意とするラピッド・プロトタイピングによって、キックオフ・ミーティングから僅か100時間で最初のプロダクトの製造に成功した。
量産のために、普段はF1エンジンのピストンやターボチャージャーの製造に使用されている40台の機械がUCL-Venturaの製造に充てがわれた。製品は既にイギリス全土の病院に納入されている。
© Daimler AG、メルセデスAMGハイパフォーマンス・パワートレインズにて製造される呼吸補助装置「UCL-Ventura」
プロジェクトは先月頭、設計図などのデバイスの製造に必要なあらゆる詳細を全世界に向けて無償公開した。これに対し、これまでに3,100件以上の問い合わせが寄せられ、この内の世界105ヶ国、1,800件のリクエストが承認された事が明らかにされた。
このライセンスパッケージにはデザインのみならず、ラピッドプロトタイピングのプロセスにおいて使用する材料やツール、キットも含まれている。