INDYCAR iRacing インディアナポリス決勝:狂気の最終周と悪意…ノリス、勝利目前で事故

クラッシュするサンティノ・フェルッチとオリバー・アスキューを尻目にトップチェッカーを受けるスコット・マクラフリン、INDYCAR iRacing インディアナポリス決勝copyright Chris Graythen (Getty Images)

インディカー・シリーズ公式のシムレース「INDYCAR iRacing Challenge」の最終戦となる第6戦「ファースト・レスポンダー175」が、米国現地5月2日にインディアナポリス・モーター・スピードウェイ(IMS)で行われ、スコット・マクラフリンが”狂気のファイナルラップ”をくぐり抜け、70周175マイルのレースでトップチェッカーを受けた。

2位には0.2609秒差でコナー・デイリーが続き、3位にはサンティノ・フェルッチが滑り込んだ。レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨は15番グリッドからスタートするも、レースを通して終始後方に沈み、13ラップダウンの30位という結果に終わった。

現役F1ドライバーとしてマクラーレンSPから特別参戦したランド・ノリスは、トップを快走していた残り3周というところでシモン・パジェノーの走行妨害に合いクラッシュ。21位でステアリングを置く事となった。


© Chris Graythen (Getty Images)、マクラーレンSPのランド・ノリス

実戦顔負けのクラッシュと驚愕の結末

この日のレースは4ラップ目からフルコースイエローが出るなど、大荒れを予感させる展開と共にスタートした。前戦ウィナーで大注目のノリスはフロントロー2番グリッドからスタートし、序盤はウィル・パワーやジェームス・デイビソンらとトップ集団を形成して隊列を率いた。

ラップをリードしていたノリスが最後のピットへと動いた残り19周、その翌周にスコット・スピード、ステファン・ウィルソン、デイビソンの3台が絡むクラッシュがバックストレートで発生し、再びフルコースイエローが出された。

このタイミングで2回目のピットストップを見送っていた殆どのマシンがピットへと動いた。レースは残り15周でレイホール、フェリックス・ローゼンクビスト、シモン・パジェノーの順でリスタートを迎えるも、その2周後にジョセフ・ニューガーデン、佐藤琢磨、カラムら多数を巻き込む大惨事が発生した。実戦であればレース再開はなかっただろう。


© Chris Graythen (Getty Images)、ターン3でスピンするジョセフ・ニューガーデンとアレックス・パロウ

パジェノー、レイホール、ローゼンクビストの順でラスト10周目にレースが再開されると、4番手を走行していた現役F1ドライバーがギアを一気に上げて2人を猛追。残り8周では、レイホールに弾き飛ばされたパジェノーが壁に激突しノリスがトップに立つと、チームメイトのオリバー・アスキューとパトリシオ・オワードが共に順位を上げて、マクラーレンSPが1-2-3体制を確立した。

その後トップ争いにマーカス・エリクソンが加わり、四つ巴の激しい攻防が展開されるが、ノリスは見事な走りでオーバーテイクを許さなかった。だが、残り3周で突如失速した周回遅れのパジェノーを避けきれずにノリスがクラッシュ。優勝争いはアスキュー、オワード、エリクソンの三者に絞られたかに思われた。

そして迎えたファイナルラップ。バックストレートでエリクソンが2台を一気に抜き去るも、オワードが最終コーナーのターンインの際にエリクソンの車体後方と激突。生き残ったアスキューがトップチェッカーを受けたかと思いきや、フロントストレートでフェルッチとアスキューの接触事故が発生し、マクラフリンがシリーズ2度目の優勝を果たした。

波紋と議論を呼ぶ接触事故

フェルッチは一件について「こうなるとは予想していなかった」と述べ、意図的な行為ではないと主張した。映像で確認する限り、スリップを使うために動いたように見受けられるが、フェルッチは2018年のF2シルバーストンで故意の接触を引き起こしたとされ、4戦出場停止処分を受けた挙げ句、所属していたトライデントを解雇された経歴があるだけに、一部にはスポーツマンとしての資質を問う声が上がっている。

また、エリクソンとの事故についてオワードは、謝罪の言葉を口にした上で、サイドバイサイドでコーナーに進入していった結果だと主張したが、エリクソンの方は「そうは思わない。あのコーナーでの動きはそうじゃなかった。君が僕のリアタイヤに突っ込んできたんだ。良い戦いをしていただけに残念だよ」と語っている。

またノリスの件に関しては、接触事故が発生する直前にパジェノーが悪意を口にしていた事が発覚した。パジェノーのストリーミング映像では、接触した直後に「ピットに入ろうとしていただけで…そんなつもりは…」と頭を抱えているのが確認できるが、その数周前に優勝争いから脱落してピットインした際には「ランドをやっつけよう」と語っていた。

レース後にパジェノーと会話を交わしたノリスは、パジェノーが意図的に自身をスローダウンさせようとした結果、クラッシュにつながったのだと語った。

「彼は謝罪した。彼が言うには、彼はアスキューに勝って欲しくて僕をスローダウンさせたかったらしい。彼は僕には勝って欲しくなかったんだ」

「だから彼は、僕のペースを少し落とそうとしてピットに入ろうとしていた。クラッシュさせる意図はなかった。ミドルコーナーでスロットルをオフにして、僕の目の前でブレーキングしたんだ」

「(この日のレースのために)一体どれだけの時間を割いてきたと思う?完璧にこなすために、左へのターンイン(オーバルなので左にしか曲がらない)とストレートでのドライビングの練習に合計で24時間近く費やしたんだ」

「インディカー以外のドライバーがインディで勝利しそうになった事に、彼は少し腹が立ったんだ。それで台無しだ。そう、そういう事さ」

「たぶん一部の人たちは、これはただのゲームだと考えていて真剣に受け止めていないのだと思う。でもこのレースには多くのドライバーが参戦し、僕はジャービス(レースエンジニア)やストラテジーを担当してくれる人たちと一緒に戦っていたんだ」

「家族と一緒に過ごすことだって出来たわけだけど、彼らはまだ仕事に取り組んでいるし、(今後に向けて)何かをやってやろうと頑張っている。彼らは今だってレースに参加して勝ちたいと思っているけど、一部にはそういった事を気にもしない自分勝手な人たちがいる」

INDYCAR iRacing インディアナポリス決勝結果

Pos. Driver Laps
1 スコット・マクラフリン
PIRTEK Team Panske
70
2 コナー・デイリー
U.S. Air Force
70
3 サンティノ・フェルッチ
SealMaster
70
4 オリバー・アスキュー
Arrow McLaren SP
70
5 パトリシオ・オワード
Arrow McLaren SP
70
6 セバスチャン・ブルデー
ripKurrent
70
7 ライアン・ハンター=レイ
DHL
70
8 ザック・ビーチ
Gainbridge
70
9 フェリックス・ローゼンクビスト
NTT DATA Chip Ganassi Racing
70
10 スコット・ディクソン
PNC Bank Chip Ganassi Racing
70
11 マーカス・エリクソン
Huski Chocolate Chip Ganassi Racing
70
12 アレキサンダー・ロッシ
NAPA AUTO PARTS / AutoNation
70
13 グレアム・レイホール
United Rentals
70
14 ウィル・パワー
Verizon Team Penske
69
15 スコット・スピード
Andretti Autosport
69
16 エリオ・カストロネベス
Pennzoil Team Penske
69
17 マルコ・アンドレッティ
U.S. Concrete / Curb
69
18 ジャック・ハーベイ
AutoNation / SiriusXM
69
19 ジェームス・デイビソン
BYRD / Americas Best Value Inn / Tilson / E&K / OILFIRE
69
20 RC・エネルソン
Hagerty
69
21 ランド・ノリス
Arrow McLaren SP
68
22 ジョセフ・ニューガーデン
Shell V-Power Team Penske
68
23 マックス・チルトン
Gallagher Carlin
68
24 リーナス・ヴィーケイ
SONAX
66
25 シモン・パジェノー
Menards Team Penske
66
26 アレックス・パロウ
Dale Coyne Racing with Team Goh
59
27 セージ・カラム
DRR WIX Filters
58
28 エド・カーペンター
Riley Children’s Foundation
58
29 ステファン・ウィルソン
OMOLOGATO / Expedia VIP Access / Juncos
57
30 佐藤琢磨
Panasonic / Mi-Jack
57
31 ダルトン・ケレット
K-Line Insulators USA
36
32 コルトン・ハータ
Capstone
14
33 トニー・カナーン
ABC Supply
3

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