ガスリー、レッドブルが契約解除しなければF1キャリア終焉の瀬戸際だった? トスト代表が照らすアルピーヌ移籍のもう一つの側面

アルファタウリでのラストランを前にフランツ・トスト代表とハグするピエール・ガスリー、2022年11月20日F1アブダビGP決勝レースCourtesy Of Red Bull Content Pool

スクーデリア・アルファタウリのフランツ・トスト代表は、仮にピエール・ガスリーがアルピーヌに移籍せず2023年もチームに留まった場合、キャリア終焉の瀬戸際に立たされる危険があったと考えているようだ。

セバスチャン・ベッテルの電撃引退発表により、ドミノ倒し的に勃発した昨夏のドライバーズ・マーケットの混乱は最終的にアルファタウリに飛び火した。

Courtesy Of Red Bull Content Pool

F1アブダビGPの開幕を前にファンの前でマイクを握るアルファタウリの角田裕毅とピエール・ガスリー、2022年11月18日ヤス・マリーナ・サーキットにて

2019年のシーズン途中に僅か12戦で無情にも切り捨てられたシニアチームに戻る希望もなく、チャンピオン獲得を夢見るガスリーはここ数シーズン、今後のキャリアパスに頭を悩ませる日々を過ごしていた。

当初は2023年末までの契約を有していた事から、首脳陣は重ねてガスリー残留を主張していたが、最終的には契約を早期解除してニック・デ・フリースを獲得。これによりガスリーは母国フランスチームのシートを手に入れた。

今回の移籍についてファエンツァの元上司は、単にガスリーの願いに沿うものだったという以上に、F1での進退に関わる重要な意義があったと考えている。

英「The Race」とのインタビューの中でトストは「私に言わせれば、レッドブルが彼をアルピーヌに行かせたのは本当にフェアだった。明らかにね。そうしなければ彼は2024年のシートがないという余りに大きすぎるリスクを抱える事になっただろう」と語った。

「(契約が解除されず2023年もアルファタウリに留まっていれば)全てのコックピットが埋まっていたはずだ」

この発言は、2023年末までとなっていたガスリーとの契約満了後、レッドブルがこれを更新する意思を持ち合わせていなかった事をうかがわせるという点で示唆に富んでいる。

ちなみに2024年に空きが出る可能性があるシートは契約更新が有力視されるメルセデスのルイス・ハミルトンを除き、そのどれもが中団チームであり、具体的にはハースとウィリアムズ、そしてアルファロメオしかない。

仮にアルピーヌが2023年に向けて1年契約でデ・フリースを獲得したとしても、2024年に必ず空きが出るとは言い難く、少なくともアルピーヌ以上のポテンシャルを持つ選択肢がなかった事は確かで、ガスリーが望んでいたようなトップチームの席は存在しなかった。

パドックで高い評価を得ながらも、物事が噛み合わずF1を去っていったドライバーは数知れない。いくらガスリーの評判が高くミッドフィールドに空きがあっても、シートが100%保証されることはない。

Courtesy Of Alpine Racing

アルピーヌのガレージに立つピエール・ガスリー、2022年11月22日F1アブダビテスト

トストとしては2019年の半年間を除き、2017年のデビュー以来、6シーズンに渡って苦悩を分かち合い成功を共にしてきた絶対的エースドライバーとしてのガスリーを失いたくはなかった。

「チームに多くの成功をもたらし、チーム作りに貢献してきた非常に経験豊富なドライバーを我々は失うことになる。これが損失である事に疑いはない」とトストは語る。

「(ガスリーの離脱を)受け入れるのは簡単なことではないが、結局のところ(レッドブルとの契約解除は)フェアな判断だったと思う」

「彼とは良い関係を築いている。2023年まで共にやっていけると思ってたから当然、がっかりしているが、あらゆる状況が重なった結果、(彼を引き止めるのは)筋に反すると気づいたんだ」

「(引き止めていたら)もうこれ以上F1においては良いチャンスが得られないという余りに大きなリスクが彼に生じたはずだ」

copyright Red Bull Content Pool

笑顔で話をするピエール・ガスリーとブレンドン・ハートレー、フランツ・トスト代表 F1アメリカGPにて 2018年10月20日

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