ペレス消沈の一方、後継足る資質を示したリカルド「かつての姿」を見出すホーナー
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レッドブルのF1シートを巡る2人の候補者はメキシコGPで対照的な結末を迎えた。チーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーはダニエル・リカルドに、輝きを放っていたかつての面影を感じ取った。
骨折からの復帰2戦目にして予選4番手を刻み、ケビン・マグヌッセン(ハース)のクラッシュを受けて赤旗が振られるまで、リカルドは5番手フィニッシュを信じていた。
だからこそ、チームにとっての今季最高成績となる7位入賞によって、アルファタウリをコンストラクターズ選手権最下位から引き上げハースとアルファロメオを交わしてなお、完全には満足できなかった。
「満足してるよ。ある部分ではね」とリカルドは言った。
「本当に良い感じでレースを進めていけて5番手につけていたし、すべてが計画通りだった。赤旗が振られるまで、このまま行けると思ってた」
「でも自分の事ばかりを考えるのは良くないよね。大きなクラッシュだったから、ケビンが無事で良かったよ!」
後方に並んだオスカー・ピアストリ(マクラーレン)とジョージ・ラッセル(メルセデス)が中古のミディアムに履き替えた一方、中古ソフト以外を使い切っていたリカルドには、7周前に履き替えたハードをそのまま使う他に選択肢がなかった。
リカルドは「ミディアムを履いた他の何台かと並んで僕はハードをつけてグリッドに着いた。まぁ、失ったポジションが1つならベストなシナリオに近かったんだけど」と語る。
「最終ラップではジョージとやり合った。6位だったらもっと良かったけど、レース終盤にメルセデスと戦えた事で、今後に向けての全体像が見えたよ」
両者の差は0.550秒に過ぎなかった。プランクの摩耗により前戦では1台が失格になったとは言え、メルセデスW14は2戦連続で表彰台に上がるほどの速さを持つ。
ラッセルは、あと1周多ければ追い抜かれていただろうとして「彼にとって本当に素晴らしい週末だったと思う。彼の良い走りが見れて嬉しいよ」と付け加えた。
ハンガリーとベルギーの時点でAT04に上位を狙える速さはなかった。前戦アメリカGPに関しては、アップグレードによりポテンシャルは上がっていたものの、スプリント・フォーマットが採用されたため、これを引き出すだけの十分な時間がなく、更にはダクトの破損によりレースでは競争力が削がれる事となった。
だが、速さを備えたクルマと標準フォーマットが初めて出揃った古巣復帰4戦目のメキシコでリカルドは、待ってましたと言わんばかりに文字通り最高の結果を残した。
ホーナーは今週末のリカルドに、8度のグランプリウィナーとしてパドックの誰からも認められていたレッドブル時代当時の姿を重ね合わせた。
リカルドについてホーナーは「昨日の予選は素晴らしかったし、レースでは成熟した経験とペースを見せた。アルファタウリを駆ってメルセデスと戦い、今季ベストリザルトを残した。これは彼が最高のパフォーマンスを発揮した事の表れだと思う。赤旗がなければ、もっと上位でフィニッシュしていたかもしれない」と語った。
「ケガからの復帰を経て大いに自信を得たように見える。ここ数カ月は彼にとって厳しい時期が続いていたが、あれは我々がかつて良く目にしていたダニエルだ」
2025年に向けてリカルドが狙いを定めるシートを持つセルジオ・ペレスは対照的な結末を迎えた。
4戦に渡り表彰台から遠ざかる厳しい状況の中、ペレスは母国優勝のみを見据えてグリッドに着いた。そしてロケットスタートを決めてターン1に向けてのチャンスを手繰り寄せると、リスクを厭わずこれを掴みに行った。
その代償は大きかった。シャルル・ルクレール(フェラーリ)との接触によりクルマは宙を舞った。リタイヤするに十分なダメージを負った。観客は言葉を失った。
ホーナーは「ディートリッヒ・マテシッツの口癖は”ノーリスク、ノーファン”だった。ホームレースでトップに立とうとした彼を責めることはできない」と擁護し、ランキング3位以下に終われば今季限りでシートを失うといった「要件」は存在しないと繰り返し、2024年も共に仕事をするのが「我々の意向」だと主張した。
「チェコに関しては、自分の自信を高めるような結果を出してもらいたいだけだ。今日はその可能性があったが、そうはならなかった。だが、ダニエルにかつての姿を見ることができたのは本当に良かった」