ホンダF1撤退の衝撃、レッドブルは2022年以降にどのメーカーのパワーユニットを搭載するのか?
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ホンダのF1撤退という衝撃的なニュースは、レッドブル・レーシングとスクーデリア・アルファタウリに大きな試練を突きつける。車体があってもエンジンがなくしてマシンは走らない。両チームは2022年以降、どのメーカーのパワーユニット(PU)を搭載するのか?
レッドブルとアルファタウリは共に、ホンダとのパートナーシップを終える事は「残念」だとする一方で、自動車業界を巡るビジネス環境の変化、すなわちカーボンニュートラルの実現待ったなしという状況に対して、経営資源を重点的に投じる決断を下したホンダに理解を示すと共に、2022年以降のPUについてあらゆる可能性を模索していくとして、2チームともに参戦継続の意向を強調した。
ホンダが姿を消すことで、2022年以降のPUマニュファクチャラーはフェラーリ、メルセデス、ルノーの3メーカーに絞られる事になる。小排気量ターボに二つのエネルギー回生システムを組み合わせた現行のPU規約は2025年まで継続されるため、新規参入メーカーに期待する事はできない。
メルセデスはワークスに加えてレーシングポイント、マクラーレン、ウィリアムズの3つのカスタマーを抱え、フェラーリは本家ワークスチーム以外に、アルファロメオとハースの2チームにPU一式を供給している。ルノーに関しては、来季アルピーヌF1へのリブランドと同時にマクラーレンがメルセデス陣営に加わるため、ワークスのみの単独体制となる。
レッドブルには独自でPUを開発・製造できるだけの専門知識と技術及びインフラがなく、2022年以降は再びいずれかのメーカーのカスタマーチームとならざるを得ない。
リソースを考慮するとホンダの後任としての可能性が最も高いのはルノーだが、レッドブルとの関係性は壊滅的な状況にある。レッドブルと伊ファエンツァのチームは共に直近のシーズンでルノーを搭載していたものの、アルファタウリ(旧トロロッソ)は2017年末に、レッドブルは2018年末に関係を解消した。
ルノーは2010年から2013年までレッドブル及びセバスチャン・ベッテルと共に4連覇の偉業を達成したが、1.6リッターV6ハイブリッド・ターボエンジン導入以降、その競争力と信頼性は劇的に低下した。PUに足を引っ張られる形でタイトル争いから遠のいていったレッドブル首脳陣は公然とフランスの自動車メーカーを批判し、両者の関係は修復不可能なレベルにまで悪化。最終的に別の道を歩む事となった。
フェラーリは昨年、著しい進歩を遂げたものの、不正疑惑に関連するルールの厳格化以降はグリッド後方へと転落しており魅力は薄い。レッドブルが、以前から提携を求めていたメルセデスを第一のターゲットに据える事は間違いないと言えるが、供給枠は過剰気味であり、メルセデスにとって強力なシャシーを持つレッドブルに自社の最強PUを供給するメリットはなく、可能性は低いように見える。
“レッドブル・メルセデス”誕生の可能性があるとするならば、それは度々憶測が流れているように、メルセデスがコンストラクターとしての参戦をやめてPUサプライヤーとしてのみF1に残る場合に限られるだろう。
フェラーリとメルセデスの可能性が潰えてなお、レッドブルがF1参戦継続を選んだ場合、犬猿の仲であるルノーと再びタッグを組む可能性がある。PUサプライヤーが得られないがためにチームが撤退に追い込まれる事を防ぐために、スポーティング・レギュレーションには最も供給先が少ないメーカーに対して追加供給を求める条項が存在する。
だがこれは裏を返せば、フェラーリがレッドブルに供給義務を負う可能性もあるという事を意味している。
供給先が少ないと十分な走行データが得られず、ワークスチームにとってもデメリットとなるため、ルノーはマクラーレンに代わる供給先を探している。例えばハースかアルファロメオがルノー陣営に転向する事があれば、ルノーとフェラーリがレッドブル及びアルファタウリへのPU供給義務を負うことになる。