中嶋一貴、WECラストランで有終の美「最高のチームメイトに恵まれ幸運だった」トヨタ7号車の小林可夢偉、日本人初のW王者に
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2021年FIA世界耐久選手権(WEC)最終戦バーレーン8時間の決勝レースが11月6日(土)にバーレーン・インターナショナル・サーキットで行われ、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)GR010 HYBRID 8号車が優勝した。中嶋一貴はトップチェッカーという形で10年に渡るTGRでのWECキャリアに幕を下ろした。
2位には7.351秒差で僚友7号車が続き、今季のルマン24時間レース覇者である小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ホセ・マリア・ロペスの3名がハイパーカー時代の初代ドライバーズチャンピオンを獲得した。
中嶋一貴、最高のチームメイトに恵まれ幸運だった
ヘルメットを脱いだ中嶋一貴は「このような最高の結果でWECのキャリアを終えることができ、本当に嬉しいですし、最高のチームメイトに恵まれ幸運でした。チームとして最後まで全力で、諦めることなく戦い続けました」とレースを振り返った。
「ファイナルラップでは感情を抑えきれず、ドライビングに集中するのが大変でしたが、なんとかトップでフィニッシュする事が出来ました」
「僕自身としてはレースで勝利、7号車はドライバーズタイトル獲得、TOYOTA GAZOO Racingはチームタイトルを獲得するという最高の結果となりました」
「みんなの反応が本当に嬉しく感動しています。チームメイトや、TGRの関係者、ずっと支えてくれた全ての人に本当に感謝しています」
佐藤恒治TGRカンパニープレジデントは「一貴が、彼のWEC最後のレースでポディウムの一番高いところに立っている姿は、胸に迫るものがありました」と語った。
「この10年に渡る彼のWECプロジェクトへの多大な貢献に対し、TOYOTA GAZOO Racingの全員から改めて感謝の気持ちを送ります」
豊田章男チームオーナーは、10年間に渡る中嶋一貴の貢献に感謝の意を表した。
「一貴は2012年からこの挑戦に力を貸してくれていました。10年間、戦ってくれたレースの距離はおよそ3万キロ。シーズン前の30時間走行テストなども考えればもっと長い距離かもしれません」
「そして、2016年にあと13.629km長く走らせてあげることができていたら…そんなこともやはり思い出します。しかし、あの時のことも含めて我々トヨタを強くしてくれたのも一貴だと思います」
「10年間、本当にありがとう」
なおこの日は、かつてWEC TGRドライバーとして活躍した元F1ドライバーのアンソニー・デビッドソンにとっての引退レースでもあった。
豊田章男チームオーナーは「ル・マンで初めて勝てた時はドライバーという立場ではなかったけれど影でチームを支え、勝利に貢献してくれていました。改めてアンソニーにも感謝の言葉をおくります。ありがとう。おつかれさまでした」と労いの言葉を贈った。
小林可夢偉、日本人初のダブルチャンピオンに
小林可夢偉は4輪レースで初めて2度の世界チャンピオンを獲得した日本人ドライバーとなり、ロペスはアルゼンチン人として偉大なる先達のファン・マヌエル・ファンジオに並ぶ、5度目のFIA世界チャンピオンを獲得する事となった。
「今日の結果には満足しています。1回目と2回目を比べるのは難しいですが、再びマイクとホセとともに勝ち取った世界チャンピオンは最高です。このタイトル獲得を支えてくれたチーム関係者に感謝しています。特に日本からはとても大きなサポートを貰いました」と小林可夢偉は語った。
「8号車は今年毎回とても強く、彼らは最高のライバルでした。ずっとぎりぎりの戦いをしてきましたが、常にフェアに、お互いに敬意を払いながら戦ってきました。その素晴らしいチームワークが、最高のパフォーマンスを引き出したのだと思います」
「一貴はここバーレーンでも最後まで集中を切らさず、素晴らしい走りでした。若い頃から一緒にレースをして育ってきたので、彼がWECキャリアを勝利で締め括る事ができて嬉しいです」
ロペスは「日本の東富士とドイツ・ケルンの関係者全員、マイクと可夢偉の存在無くしてタイトル獲得を叶わなかっただろう」とチームメンバーへの感謝を口にした。
「正直なところ、このチームの一員としてレースに勝ち、チャンピオンを獲得できたことは本当に幸運だったと思ってる。関わってきた全ての人に感謝したい」
「一貴は本当に素晴らしいドライバー仲間で、彼がいなくなるのは本当に寂しい。一貴、セブとブレンドンは今シーズン本当に強かった。今日の勝利は彼らに相応しい」
トヨタ、WEC史上初のシーズン全勝
トヨタとしては、WEC史上初となるシーズン全勝という新たな記録を打ち立てた。前シーズンからの連勝記録は9に達した。
トヨタ勢は2台がフロントローからスタートするも、直後に3番手グリッドのアルピーヌ36号車に先行を許す出だしとなった。だが10周目に揃ってライバルを交わして1-2体制を取り戻すと、その後は他の追撃を許さなかった。
レースは折り返しの前に日没を迎え、夜間の戦いに突入した。首位の8号車は7号車との差を広げていった。
6時間経過時点で8号車はギアシフトのトラブルに見舞われステアリングの交換作業を余儀なくされるも首位を維持。最終スティントは中嶋一貴が担当し、トップチェッカーという形で10年に渡るTGRでのWECキャリアに幕を下ろした。
3度のルマン制覇と、2018-2019年シーズンにブエミ、フェルナンド・アロンソとのトリオで日本人初となる4輪FIA世界チャンピオンに輝いた中嶋一貴に敬意を払うべく、2台のGR010 HYBRIDには特別なマーキングが施された。
11月7日(日)には同じバーレーン・インターナショナル・サーキットでルーキーテストが行われる。トヨタは世界ラリー選手権(WRC)で7度頂点に輝いたセバスチャン・オジエと、今季LMP2チャンピオンに輝いたシャルル・ミレッシにステアリングを託す。
順位 | ドライバー | チーム | 周回 | トップとの差 |
1 | #8 TOYOTA GAZOO Racing/ トヨタ GR010 HYBRID |
セバスチャン・ブエミ 中嶋一貴 ブレンドン・ハートレー |
247 | |
2 | #7 TOYOTA GAZOO Racing/ トヨタ GR010 HYBRID |
マイク・コンウェイ 小林可夢偉 ホセ・マリア・ロペス |
247 | 7.351 |
3 | #36 アルピーヌ・エルフ・マトムート/ アルピーヌ A480-Gibson |
アンドレ・ネグラオ ニコラス・ラピエール マシュー・バキシビエール |
241 | 6 Laps |
4 | #31 チームWRT/ Oreca 07-Gibson |
ロビン・フラインス フェルディナンド・ハプスブルク シャルル・ミレッシ |
240 | 7 Laps |
5 | #38 イオタ/ Oreca 07-Gibson |
ロベルト・ゴンザレス アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ アンソニー・デビッドソン |
240 | 7 Laps |