衝撃のフランツ・トスト退任…レッドブル新経営陣による解任か、それとも辞任か

アルファタウリのピットウォールに立つフランツ・トスト代表、2023年2月25日F1プレシーズンテストCourtesy Of Red Bull Content Pool

ローラン・メキース移籍の噂に続き、パドックで2番目に長い在任歴を誇るフランツ・トストが2023年末限りでスクーデリア・アルファタウリのチーム代表を退くという衝撃のニュースが飛び込んできた。辞任か、それともレッドブル新経営陣による解任か。

成績低迷からの脱却の兆しが見られないアルファタウリは開幕3戦を終えて、フェラーリのレーシング・ディレクターを務めるメキースをトストの後任に任命し、国際自動車連盟(FIA)でF1エグゼクティブ・ディレクター兼スポーツ担当事務総長を務めていたピーター・バイエルを最高経営責任者(CEO)に起用する事を明らかにした。

Courtesy Of Ferrari S.p.A.

フェラーリのスポーティング・ディレクターを務めるローラン・メキーズとフレデリック・バスール代表、2023年3月4日F1バーレーンGP

退任発表に際してトストは、メキースとバイエルを「チームを次のレベルに引き上げてくれる非常にプロフェッショナルな人材」と評した上で、「67歳になった今が引き継ぎの時」と述べ、自らの決断による定年退職とでも言わんばかりの印象を与えた。

だが本人の口からもチームからも、辞任であるとは明確にされていない。

ファエンツァの拠点から数分の所に住んでいるトストはグランプリのために現場に赴く時以外、毎日ファクトリーに足を運ぶF1界屈指のワーカホリックとして知られる人物であり、69歳までの現役続行を仄めかしていた。

それだけに自ら進んで辞表を提出するとは、にわかには考えにくく、また突然、F1に対する情熱が冷めたとも思えず、レッドブル総帥ディートリッヒ・マテシッツ亡き後に刷新されたレッドブル新経営陣による人事判断と考える方が腑に落ちるのは否めない。

トストについてレッドブルGmbHのコーポレート・プロジェクトおよび投資部門の最高責任者を務めるオリバー・ミンツラフは「彼のリーダーシップによって傑出した勝利がもたらされ、幾つかのF1史上最高の才能が開花した」と述べ、後任がその後を継ぐのは「容易ではない」と強調した。

ただその一方で、メキースとバイエルはいずれもF1という世界のトップで「途方もない経験」を積んできた人物であり、「将来的にスクーデリア・アルファタウリを更なる高みに導いてくれると確信している」とも述べた。

Courtesy Of Red Bull Content Pool

レッドブル社の企業プロジェクト・新規投資部門CEOを務めるオリバー・ミンツラフ、2022年11月19日F1アブダビGPにて

2023年型「AT04」の競争力不足が露呈した際のトストの”もう信用しない発言”は衝撃を以て受け止められた。苛立ちは対象への情熱なくして存在し得ない。

近年のアルファタウリはコストに見合った成績を残せておらず、ミンツラフを含む上層部から少なくない圧力が掛かっていたものと見られている。

67歳のオーストリア人マネージャーは2023年の最終アブダビGPを以て現職を退くが、コンサルタントという立場で来年もアルファタウリに協力する。

具体的にどのような職務を担当するのかは明らかにされていないが、仕事の引き継ぎと若手ドライバーの育成が主と思われる。

バイエルは「彼が若い才能の育成に尽力した事で、彼の指導の恩恵を受けたドライバーはグリッドの25%に及んでいる」とトストの功績を称賛し、メキースは「ピーターも私も今後、彼の意見やアドバイスを頼ることになると思う」と述べた。

Courtesy Of Red Bull Content Pool

2017年7月12日にトラファルガー広場で行われたF1ライブ・ロンドンにおいて、教え子のセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)とカルロス・サインツと話すスクーデリア・トロロッソのフランツ・トスト代表

今回の大規模人事再編は、レッドブル新経営陣が旧体制からの変化を厭わぬスタンスである事を表すものと言えるが、トストと同じようにマテシッツのバックアップを得てきたレッドブル代表、クリスチャン・ホーナーが自らの立場を心配する必要はないだろう。

トストは18年に渡る現在の仕事を与えてくれた故マテシッツに対する感謝の言葉を口にして「これほど長きに渡ってチームを率いることができて本当に光栄だし、F1への情熱を共有するスキルとやる気満ちた多くの人々と一緒に仕事ができたことも大きな喜びだ」と語った。

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