革新的だが最速ではない? メルセデス風の”ゼロポッド”採用を敢えて見送ったフェラーリとハース
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革新的である事は必ずしも最速である事を意味するわけではない。本場の一部英国メディアが”ゼロポッド”と呼ぶメルセデスのアグレッシブなサイドポッドに関して、少なくとも2つのライバルチームは、その方向性を検討しながらも敢えて採用を見送った。
グランドエフェクトの導入を含む新時代のF1テクニカル・レギュレーションは、サイドポッドのデザインに様々な解釈の余地を生み出した。フェラーリF1-75に代表されるワイドな方向性と、メルセデスがバーレーンテストに投じたナローなアプローチだ。
見た目は両極端だが目指す方向性は同じだ。いずれも高速回転するフロントタイヤが生み出す乱流の影響を抑える事を目的としている。前者はタイヤウェイクを車両の外側へと追いやる事で、後者は乱流がサイドポッドに当たる事を防ぐことで、空力性能の最大化を目論む。
メルセデスW13のサイドポッド処理は、ラジエーターを含む冷却系をタイトに抑えて吸気口を縦長に取るもので、他の9チームとは明らかに異っているために独自性が際立っているものの、ハースとフェラーリは2022年型マシンの設計に際し、このソリューションを評価した上で敢えて現行の”ワイドポッド”を選択したようだ。
独AMuSによるとハースのギュンター・シュタイナー代表は、設計の初期段階でこのアイデアを見つけ出し、昨年7月の風洞実験を経て低速コーナーでの優位性を確認したものの、パッケージング全体として見た場合にはワイドなソリューションの方がより多くのポテンシャルがあるとの判断に至ったと説明した。
ハースと密接な関係にあるフェラーリもまた、メルセデス型のソリューションを評価した上で、現在のF-75に採用されているワイドポッドにより多くの可能性を見出したようだ。
跳馬の母国イタリアのF1ジャーナリスト、ジュリアーノ・デュケッサはフェラーリの関係者からの情報として、マラネロの技術チームもメルセデスと同様の方向性を検討したもののそれを捨て、現行ソリューションの可能性を追求する事にしたと伝えた。
ポーパシング(バウンシング)に苦しみ続けている事もあり、現時点でのW13のパフォーマンスはレッドブルやフェラーリに見劣りしているように見えるが、どちらの手法が次世代F1の最適解なのかはまだ誰にも分からない。