失態はもう許されない…F1オーストリア、違反漏れ”完全防止”に向けレッドブルリンクに巧妙なトラックリミット対策

トラックリミット対策としてグラベルと白線の距離が縮められたレッドブルリンク、2024年6月27日F1オーストリアGPCourtesy Of Red Bull Content Pool

昨年のレースで84回のトラックリミット違反が発生したことを受け、新たなグラベルトラップを敷設するなど、国際自動車連盟(FIA)は2024年のF1オーストリアGPに向けてレッドブル・リンクに徹底した対策を施した。

2023年大会では最終2コーナーで走路外に飛び出すドライバーが多発し、トラックリミットの疑いがあると報告された件数は「1,200件以上」に及んだ。レースコントロールはパンクし、レース中に全てを処理できない事態に陥った。

これを受けアストンマーチンがリザルトに異議を申し立て、レース後に行われた検証作業により、最終的に計84件(公式文書では連番が83まで振られているが、抜けがあるため正確には84件)ものラップタイムが抹消された。

結果、8名に追加ペナルティが科されて14台の順位が変動。世界トップレベルと見なされているF1ドライバーが走路違反という素人のような過ちを大量に重ねた事を受け、スチュワードはレッドブル・リンクにおける走路違反の取り締まりに関して解決策を見つけるよう強く勧告した。

FIAからの要請を受けレッドブル・リンクは6月28~30日のオーストリアGPに向け、昨年のレースで28回の違反が確認されたターン9および、36回が確認された最終ターン10の出口縁石のアウト側、白線から1.5mの場所に2.5m幅のグラベルを敷設した。

この1.5mというのが肝だ。通常は2mに設定されている。現行マシンの車幅は2mであるため、トラックリミットを犯した場合、確実にホイールが砂利に落ちる仕組みで、ラップタイムを稼ごうと意図的にコース外に出るドライバーが存在する余地はない。

グラベルが新たに設けられたのは高速のターン9・10のみだが、ターン4・6・8では白線とグラベル間の距離が1.8mに短縮されており、ターン1・3に関しても黄色のソーセージ縁石と白線との距離が狭められている。

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レッドブル・リンクのコースレイアウト図2021年版

興味深いのは、縁石を変更せずに白線をアウト側へと移動させた点だ。白線を既存の縁石の上に移動し、コースイン側部分の縁石および旧白線を黒くペイントすることで擬似的にコース幅を増やしてグラベルと白線間の距離を狭める手法が取られた。

また、映像処理によるトラックリミット判定の際に検出しやすいよう、新たな白線のアウト側には目立つ水色のラインが設けられた。

完璧とも思われるこのアプローチの懸念点の一つは、コースとグラベルとの距離が近いがために、コースアウトするクルマが出た場合に砂利がコースに飛散する可能性がより高いということだろう。

Courtesy Of Red Bull Content Pool

トラックリミット対策としてグラベルと白線の距離が縮められたレッドブルリンク、2024年6月27日F1オーストリアGP

レッドブル・リンクでレースを行う他のシリーズ、例えばMotoGPは、こうした高速コーナーの端にグラベルが設置されることを好まないが、F1グランプリ終了後に白線は以前の位置に戻され、コースからグラベルまでの距離は大きく空くことになる。

新たに敷設されたグラベルが8月16~18日のMotoGPオーストリアGPに向けて撤去されるのかどうかは現時点では分かっていない。

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