メルセデスF1、控訴勝利「ほぼ確実」も撤回…なぜ? 沈黙を破ったウォルフ、その理由とレッドブルとの”不要な論争”を語る

シーズン閉幕の記念撮影に臨んだメルセデスF1チームのメンバー、ルイス・ハミルトン、バルテリ・ボッタス、2021年12月12日F1アブダビGPにてCourtesy Of Daimler AG

タイトル争いを決する事となった物議のF1アブダビGPレース結果に対する控訴撤回を経て、メルセデスのトト・ウォルフ代表が4日間に渡る沈黙を遂に破り、控訴での勝算と取り止めの理由、レッドブル・ホンダとマックス・フェルスタッペンとの”不要な論争”に対する思いを語った。

シルバーアローは控訴期限を迎えた16日(木)、ヤス・マリーナ・サーキットでのレース結果に対する控訴を取り止めたと発表した。ウォルフは、FIAレースディレクターの「自由なルール解釈」によってルイス・ハミルトンが8度目のタイトルを奪われたとの考えを示す一方、一件について「マイケル・マシと話す事に興味はない」とした。

メルセデスの指揮官は「一度もリードを譲る事なくレースを圧倒」していたにも関わらず「終盤の4分間に下された決定によって、ルイス・ハミルトンはワールドチャンピオンの座から遠ざかってしまった」「最終ラップで彼から(タイトルを)奪った事は受け入れがたい」として、最終盤での出来事を「悪夢」を表現した。

「個人的な観点からも、プロとしての観点からも、私は受け入れる事ができない。私の価値観や誠実さは、日曜日に行われた決定とは相容れない」

ウォルフは、怒りと不満の矛先はFIAに向けられたものであるとして、ライバルに敬意を表した。

「マックスはこの状況と何の関係もない。彼はチャンピオンに相応しい。彼のドライビングは並外れていたし、レッドブルは熾烈な競争相手だ。私はそこで働く人々に最大の敬意を払っている」

そして今シーズンに湧き上がった「不要な論争の多くの原因」は「コース上でのスポーツ的な判断や、コース上でのレギュレーション適用の矛盾」という「一貫性のない意思決定」により引き起こされたとの考えを示した。

メルセデスは何故、控訴を撤回したのだろうか?

ウォルフは非常に難しい決断だったと明かした上で「通常の法定で裁かれていたならば、我々が勝つことはほぼ確実だっただろう」としながらも、FIA国際控訴裁判所(ICA)で勝訴したところで、チャンピオンシップの結果が変わるとは考えていないと説明した。

ICAは既に科せられたペナルティーを取り消したり、罰則内容を変更したり、レース結果を無効とする権限はあるものの、レースそのもののやり直しを命ずる事はできない。

ウォルフは「ICAの問題点はその構造にある」「正しい事と正義を得る事は違う」とした上で「法廷で世界選手権を勝ち取りたい」とは思っていないとも主張した。

FIAは15日(水)、一連の騒動を受け「詳細な分析と解明作業」を開始すると発表した。メルセデスは先週の日曜以来、FIAのモータースポーツ担当事務総長を務めるピーター・バイエルやF1のステファノ・ドメニカリCEOらとも話し合いの場を持ち、自らの要求を訴えてきた。

ウォルフは「この数日間、FIAとは良い対話ができた。今後このようなシナリオを避けるために、全てのドライバーとチームと共に協力して、正しい判断と行動指針を策定できると信じている」とする一方で「委員会が言葉だけでなく行動を起こすことを期待している。我々は彼らに行動の責任を取らせるつもりだ」と付け加えた。

「一件を受け入れるには長い時間がかかるだろう」とウォルフは続ける。

「私は、今後もルイスがレースを続けることを強く望んでいる。なぜなら、彼は史上最高のドライバーなのだから」

ウォルフは16日(木)のFIA表彰式をハミルトンと共に欠席。代わりに最高技術責任者(CTO)を務めるジェームズ・アリソンがドメニカリから8個目のコンストラクターズトロフィーを受け取った。

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