メルセデス、不振はレーキ角のみが原因に非ず…レッドブルは画期的ソリューション投入で逃げ切り体制?
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2021年F1開幕バーレーンGPを終えて、レッドブル・ホンダとメルセデスとの競争力格差の原因をレーキ哲学の違いに求める見方が注目を集めているが、当然、これに疑問を投げかける者もある。
リザルトとしては昨年王者のメルセデスが1-3フィニッシュと競り勝った格好であるものの、1発の速さでもレースペースでも、純然たるスピードという点においてはレッドブル・ホンダRB16BがメルセデスW12を完全に凌駕し、オフシーズンを経て両者の競争力は逆転したように見える。
何が違いを生み出したのか? トピックとなったのはレギュレーション変更による影響だった。
現行の13インチタイヤへの負荷を抑えるべく、F1はコスト削減の観点からマシン開発に制限を課す一方で、ダウンフォースの低減を目的にフロア、ディフューザー・ストレーキ、ブレーキダクトに関する規約に変更を加えた。
シーズンを跨いで各チームの競争力がどのように変化したのかを見てみると、あくまでも開幕戦のみのデータだが、先の空力関連の規約変更に伴う損失以上にタイムを失っていたのはウィリアムズ、メルセデス、そしてアストンマーチンのメルセデスPU勢にハースを加えた4チームだった。
ハースが競争力を落としたのは2022年の開発にリソースを集中させたからであり、今季に向けての開発は非常に限定的だった。よってこれを除外すると数字的には、大幅にパフォーマンスを失ったチームの6割がロー・レーキ(前後傾斜角が小さい)勢と言う事になる。
ロー・レーキ車は、ハイ・レーキ車と比べてベンチュリー効果を活かせないため、フロア面積を広く取る、すなわちロングホイールベース化する事でダウンフォースを補っているが、ダウンフォース低減の目玉として規約はフロア面積を縮小させた。
レーシングポイントのオトマー・サフナウアー代表によれば、ロー・レーキ車への影響はフロア変更が議論されていた段階で既に指摘があったとの事だが、ダウンフォースの低減という目的達成の手段はチームの判断に委ねられていたわけで、フロアを削るという判断は結局のところチームの合意を経たものだった。
大幅な損失を抱えた3チームの内の2チームがロー・レーキ勢という事実は、規約変更による損失がレーキコンセプトの違いに大きく依存するという事を証明するものではない。真の問題は他のエリアにあるかもしれない。
実際、元F1ドライバーでSky Sportsのコメンテーターを務めるマーティン・ブランドルは英Autosportに対して、レーキのみに注目するのは問題の本質から遠ざかる事に繋がりうるとの認識を示している。
今シーズンの重要なルール変更としては他に、構造が強化された新しいタイヤが挙げられる。
レーキ周りの空力のみに注目し過ぎると他の要素を見落としかねないが、メルセデスに限ってその心配は無用だ。トト・ウォルフ代表は、ハイ・レーキ勢がロー・レーキ勢よりダウンフォースの喪失が少ないと分析する一方で、苦戦の原因はレーキだけでなくタイヤにもあるとの考えを示している。
例年以上にキャッチアップは難しいだろうが、決して不可能というわけでもない。今シーズンはコスト削減のために開発に制限が課されているが、チームが創造性を発揮できる分野は残されている。
創造性と言えば、レッドブル・ホンダがイモラで開催される第2戦エミリア・ロマーニャGPの週末に、擬似的な後輪操舵を可能とする画期的なリアサスペンションを持ち込むとの憶測が飛んでいる。
後輪操舵はレギュレーションで禁止されているため、ディファレンシャルやエンジン、バイワイヤなどを連携させて擬似的にこれを再現するという事のようだが、その目的は新タイヤから更に多くのパフォーマンスを引き出す事にあるものと考えられる。
これを報じたMotorsport Italiaは「噂に過ぎないものの信憑性は十分」としているが、レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコはSport1とのインタビューの中で「全くナンセンスな話だ」と一蹴した。
「その”謎の”サスペンションは既に開幕バーレーンで使用している。特別なものではないが、より小さくコンパクトになった新型ホンダエンジンのおかげでリアを極端に絞り込む事になったため、最適なサスペンションを設計する必要があったのだ」
果たしてマルコの主張は本当なのだろうか? メルセデスは3週間のインターバルを経て、どこまで巻き返してくるだろうか? 第2戦エミリア・ロマーニャGPは4月16日から18日の3日間にかけて、イモラ・サーキットで開催される。