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マクラーレンのザク・ブラウンCEOが、レッドブル・ホンダのファクトリーを”合法的”に見学する権利を手に入れた。得点差こそ大きな隔たりがあるが、両者は今季F1でチャンピオンシップ3位と4位につけたライバル同士だ。
空力の天才と称されるレッドブルのデザイナー、エイドリアン・ニューウェイが、若者の就業支援を行う非営利の慈善団体「The Halow Project」のチャリティオークションで、レッドブル・レーシングのファクトリーを見学出来る権利を出品。これをザク・ブラウンが最高額で落札した事が明らかとなった。
F1は、あの手この手でライバルのマシンの速さを暴こうとする世界だ。かつてマクラーレンは、不正な手段によってフェラーリの技術情報を盗み出し、コンストラクターズランキングを剥奪された挙げ句に、1億ドルもの罰金を科された。いわゆる「スパイ・ゲート(2007年)」だ。
ザク・ブラウンはスパイ・ゲート当時、完全な部外者だったが、誰も傷つけることなく”合法的”かつ”慈善的”な方法によって、ライバルチームの秘密を暴き見るチャンスを手にしたという点において、彼はロン・デニスよりも賢明と言えるかもしれない。
ザク・ブラウンが所有する英国のレーシングチーム、ユナイテッド・オートスポーツは今年9月、「The Halow Project」の認知度向上のために、FIA世界耐久選手権(WEC)に投入している22号車オレカ07に、同プロジェクトのロゴを掲載する事を発表。両者を結びつけたのは、プロジェクトのパトロンを務める1996年のF1王者、デイモン・ヒルだった。
日本ではあまりポピュラーとは言い難い寄付文化。ザク・ブラウンが今回ビットしたお金は、学習障害を持つ16〜35歳の若者たちの支援に使われる。厚生労働省の説明によると、学習障害とは「読み書き能力や計算力など算数機能に関する特異的な発達障害のひとつ」であり、日本人の6.5%がこれに該当するという調査結果が出ている。
なお、F1で6度のチャンピオンに輝くルイス・ハミルトンは、そんな学習障害の1つである発達性ディスレクシアである事を告白しており、認知度こそ高いとは言えないものの、学習障害は非常に身近な問題だ。
エイドリアン・ニューウェイとしては、ライバルチームのボスに落札される事を想定して、ファクトリーのツアー権を出品したわけではあるまい。無論ただの「権利」に過ぎないわけで、ザク・ブラウンとして自らその権利を行使する事を「辞退」する事もできる。この場合、名声は向上するだろうが、RB16の技術情報を盗み出すことはできなくなる。ザク・ブラウンは実際に、ミルトンキーンズのファクトリーを見学するだろうか? 何にせよ、楽しみである。
Big thanks to Zak, Adrian and Joe for a superb fundraising pub quiz for @halowproject. Zak will visit RedBull no doubt wearing a blindfold! Thanks for the generous gesture guys. @redbullracing @McLarenF1 @JoeMacari #f1 #joemacari #halowproject #redbullracing #mclarenf1 pic.twitter.com/DiQvTMkfBx
— Damon Hill (@HillF1) December 19, 2019