愛と信頼…決め手の一つはホンダ、アロンソのアストンと「生涯最長F1契約」の背景にあるものとは?

メディア対応するフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)、2024年4月4日F1日本GPCourtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

アストンマーチンとの「キャリア史上最長契約」の合意によりフェルナンド・アロンソは、1975年のグラハム・ヒル以来、45歳という年齢で世界最高峰の4輪モータースポーツ、FIA-F1世界選手権に参戦する初のF1ドライバーとなる。

曰く「基本的に人生の全てを諦めなければならない」というF1での更なる挑戦へと2度のF1ワールドチャンピオンを駆り立てた要因の一つは、ホンダと日本に対する愛と信頼、そして尊敬の念だった。

Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

パルクフェルメでランド・ノリス(マクラーレン)と話をするフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)、2024年3月8日 F1サウジアラビアGP予選(ジェッダ市街地コース)

F1公式サイトによると、シーズン開幕から1ヶ月足らずでのアストンとの契約延長についてアロンソは「簡単」な決断だったと明かした上で、「引退など考えたこともなかった」とし、「走ることが好きすぎて、止めるのは今じゃないと感じた」と付け加えた。

チーム代表を務めるマイク・クラックによると、アロンソは少なくとも2026年末までチームに留まるが詳細な年数は公表されていない。ただ、アロンソは「キャリア史上最長の契約」であると明かし、自身にとっては「生涯のプロジェクト」だと説明した。

アロンソがアストンとの契約を延長した事で、レッドブルとメルセデスのシートは他のいずれかのドライバーが手にする事になる。

アロンソはアストン以外のチームとも話し合ったと認めたが、それらはいずれも「軽い」会話程度のもので、「アストンマーチンが一番、僕を必要としてくれているように感じた」と語った。

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鈴鹿サーキットのパドックを歩くフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)、2024年4月4日F1日本GP

単年ではなく少なくとも2年という今回の契約延長は、アロンソがキャリアを通して最も困難な時期を味わった第2期マクラーレン時代のパワーユニット(PU)パートナーであるホンダとの再タッグを意味する。

ホンダは現在、テクニカルパートナーとしてレッドブルおよびRBチームにES(バッテリー)を除くPU一式を供給しているが、次世代PU規定が導入される2026年からはアストンとパートナーシップを組む。

アロンソは2015年からの3シーズンに渡ってホンダと共にチャンピオンシップを戦ったが、PUの信頼性および性能不足に足を引っ張られ、いずれのシーズンも2001年のミナルディでのルーキーシーズン以来となるランキング2桁に終わった。

2015年には、ホンダのホームである鈴鹿での日本GPで「GP2(直下のジュニアシリーズ)エンジンだ!」とぶち撒けるなど、競争力不足を公に非難する場面もあり、2026年シーズンを含めたアストンとの複数年の契約延長を疑問視する声もあったが、両者は9年の時を越えて再び共闘する事になる。

その理由は、愛し、尊敬するホンダが近年のF1で成功を収めている事と、100%持続可能な燃料を含めた新しい技術レギュレーションが導入される2026年に向けてホンダが有利なポジションにいるとアロンソが感じているためだ。

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マクラーレン・ホンダの2015年型F1マシン「MP4-30」とフェルナンド・アロンソとジェンソン・バトン、2015年2月10日

アロンソが今なおF1に参戦し続けているのは3度目のタイトルを狙っているからだ。そのためには強力な車体とエンジンが欠かせない。

英「RaceFans」によるとアロンソは、アストンとの新たな契約に合意する前、日本GPの数ヶ月前にホンダの経営陣と話し合った事を明かし、次のように続けた。

「僕は日本が大好きだし、ホンダが日本でやっている事に本当に大きな愛情を感じている」

「日本における規律およびコミットメントのレベルは別次元のものだと思う。それはホンダにも通じる。僕は耐久選手権でトヨタと一緒に仕事をした事もあり、その手の規律をよく知っている」

次世代PU規定が導入される2026年シーズンについてアロンソは「確実に未知の領域」になるだろうと述べ、その上でアストンが推し進めるプロジェクトと、ホンダが供給する事になるエンジン、PUを選んだのだと説明した。

「一つには、レッドブルとアルファタウリ(RB)が非常に強力なエンジンを持っているからだ。彼らはこのスポーツを支配している。そして二つ目には、新しい燃料と新しい規制において成功するための全てのツールを彼らが持っているからだ」

Courtesy Of Red Bull Content Pool

レッドブル・レーシングのヘルムート・マルコとクリスチャン・ホーナー、HRC(ホンダ・レーシング)の渡辺康治と浅木泰昭、2023年3月5日F1バーレーンGP

マクラーレンと袂を分けたホンダはその後、レッドブルと共に成功を収め、マックス・フェルスタッペンの3年連続のドライバーズチャンピオンシップ制覇に貢献した。今季開幕4戦の動向を見る限り、4連覇も十二分にあり得る。

アロンソは「ホンダは間違いなく、F1だけでなくモータースポーツの世界で非常に多くの成功を収めているメーカーであり、僕が常にリスペクトしてきた会社だ」と語る。

「マクラーレンとタッグを組んでF1に復帰した数年間は上手くいかなかったけど、その直後に全ての問題を解決して今はF1を支配している。ここ数年、彼らはワールドチャンピオンであり続けている」

「だから僕は、彼らが2026年に向けて既に本当に力強い基盤を備えていると考えている」

「それに、さくら(HRC Sakura)には本当に素晴らしいものを作り上げる能力がある。2014年、2015年、そして2016年に僕は、さくらを訪れた事があるんだ。今はまだ行けていないけど、彼らが本当に、本当に高いモチベーションを持っていることは分かっている」

Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd

ホンダが2021年のF1でレッドブル及びアルファタウリに供給したパワーユニット「RA621H」全体像 (2)

アロンソは、アストンに持続可能燃料を供給するサウジアラビアの国営石油会社にも期待を寄せており、新燃料を担当する事になるアラムコを「素晴らしいパートナー」と評した。

「だから僕にとってはウィンウィンの状況なんだ」とアロンソは語る。

「御存知の通り、僕は日本文化をリスペクトしている。ちょうど日本GPから帰ってきたところだけど、日本でレースをするときはいつも特別なヘルメットを用意する。僕の背中には侍のタトゥーがあるし、日本との繋がりはたくさんある」

「2026年シーズンは魅力的だ。マクラーレン・ホンダやインディカーでの経験を経て、再びホンダと一緒に仕事をするチャンスだ。これは僕にとって本当に嬉しいことなんだ」

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