F1と金…リバティメディア体制でのフォーミュラ1は儲かっているのか?2017年業績発表

2015年のF1イギリスGPで優勝したハミルトンとファンCourtesy Of Steve Etherington for Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

リバティ・メディア体制下でのF1は儲かっているのだろうか?

アメリカのメディア関連企業リバティ・メディアは昨年1月23日、総額80億ドル(約8,456億円)を投じてフォーミュラ1の買収を終えた。あれから1年、バルセロナで行われた2018年最初の公式テストが終了した3月1日、2017年の業績が発表された。

発表によれば、昨年のフォーミュラ1・グループ全体の収益は前年比1%減の17億8,300万ドル(約1,884億円)、営業利益は同179%減の4,000万ドル(約42億円)の赤字に転落、減収減益となった。人気低迷からの脱却を図るための歳出増が大きく響いた。

費用面は、チームへの分配金が前年の9億6,600万ドル(約1,021億円)から9億1900万ドル(約971億円)へと圧縮され、原価は同12億5,600万ドル(約1,328億円)から12億2100万ドル(約1,290億円)へと削減。その一方で、ロゴ変更等のCIデザインやeSports事業への進出、新たな人材の登用等に伴う販売費及び一般管理費が9,000万ドル(約95億円)から1億2500万ドル(約132億円)へと増加した。

売上減は、開催イベント数の減少と開催手数料の減額が主な要因。2016年の21戦と比較して昨年は20戦だった事、前バーニー・エクレストンCEO体制下で、ブラジルGPの開催手数料が減額された事が挙げられる。また、スイス大手銀UBSと独保険大手アリアンツの撤退の影響も大きい。

売上の内訳としてF1の3大収入源であるグランプリ開催権料、テレビ放送権収入、広告及びスポンサーシップ収入の3つの数字を紹介しておくと、それぞれ順に6億800万ドル(約643億円)、6億87万ドル(約635億円)、2億7,279万ドル(約288億円)であった。

フォーミュラ1会長兼CEOのチェイス・キャリーは、2017年シーズンにおけるテレビ及びデジタルプラットフォームの視聴者増加の成果を強調した上で、2018年シーズンは開催イベントが増える事等を理由に今季見通しについて楽観的な姿勢をみせた。

最大の収益源である開催権料は開催国によってかなりの振れ幅があるが、発表された数字から算出すると1グランプリあたりの平均開催権料は、およそ32億円程度という計算になる。

費用負担が大きいとして契約更新を諦める国も少なくなく、また、コスト増を理由にチーム側もこれ以上のレース数増加には反対の立場を取っているため、短期的に見て開催権料に頼る業績向上策は難しい。

今後売上を増やしてくためには放映権収入とスポンサーシップ収入の増加が求められるが、そのためにはF1を支えるファンの拡大が必要不可欠と言える。リバティ・メディアは、視聴・観戦体験の向上によってこれを成し遂げようとしており、新規ファンの開拓よりも既存ファンのロイヤリティ化を重視しているフシがある。

リバティ体制2期目の今年、抜きん出た経営手腕を買われ21世紀FOXの社長からF1最高責任者の座へと就いたチェイス・キャリー、その真価が問われる一年となる。

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