ジーン・ハース、シュタイナーとは”異なる”小松礼雄の資質に期待…電撃退任と抜擢の理由・背景
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ギュンター・シュタイナーの電撃退任についてハースF1チームのオーナー、ジーン・ハースはコース上での「パフォーマンス」に起因するものだと説明するとともに、後任に小松礼雄を任命した理由を明かした。
シュタイナー電撃退任の理由
シュタイナーは年明け早々、自らが立ち上げの旗を振ったハースF1チームを去った。彼なくしてハースは存在し得ず、またこれほど長くグリッドに留まることもなかっただろうが、チームは過去3シーズンのうちの2シーズンでコンストラクターズ選手権最下位に終わった。
ジーン・ハースはF1公式サイトとのオンラインインタビューの中で、成績不振の責任をシュタイナーに押しつけるつもりはないとしつつも「今までのようなことを続けても上手くいくとは思えない」と語った。
ビッグチーム以外の小規模チームでさえ、今やF1の予算上限である1億3,500万ドルに近い予算を投じているが、ハースはライバルチームと比較して相対的に資金不足と長年に渡って指摘されてきた。
しかしながらジーン・ハースは「予算枠の1,000万ドル以内」の資金を投じているとして反論するとともに、「我々が持つあらゆる機材と人材」を以てして、何故にコンストラクターズ選手権最下位に終わってしまうのか「理解できない」とも述べた。
「我々は単にお金の使い方があまり上手くないのだと思う。多くのチームはインフラや建物、設備、人材に投資してきているが、我々のモデルはその多くを外注することだった」とジーン・ハースは語る。
「我々は多額の資金を費やしている」
シュタイナーの離脱はジーン・ハースが契約を更新しなかったためと見られており、インフラへの投資に関して両者が対立した事が背景にあるとされる。
実際、シュタイナーの離脱を知らせるプレスリリースにシュタイナー本人のコメントはなかった。これは多くの場合、円満な別れでなかった事の表れであり、英「Sky Sports」によると、シュタイナーはチームメンバーに別れを告げる機会すら与えられなかったようだ。
ハースはフェラーリとの緊密な技術提携の下、パワーユニットだけでなくギアボックスやサスペンションといったシャシー側のハードウェアを購入している。
フェラーリとのパートナーシップについてジーン・ハースは「上手くやれていないことを恥ずかしく思っている」としたうえで、今後はライバルにはないフェラーリとの強力な関係に基づくリソースを有効活用したいと付け加えた。
2023年の22戦を通して僅か12ポイントとパフォーマンスが低迷した事については「最大の失敗はエアロだと思う。空力プログラムの改善が必要だ」「毎週末屈辱を受けるのはもうたくさんだ」と述べ、現状に対する不満を口にした。
小松礼雄の”異なるアプローチ”に期待
2003年にF1キャリアをスタートさせた小松礼雄はチーム創設初年度からハースに所属。チーフ・レースエンジニアからエンジニアリング・ディレクターに昇進し、技術面からチームを支えてきた。
人材マーケットにはマッティア・ビノット(フェラーリ元チーム代表)やオトマー・サフナウアー(アルピーヌ元チーム代表)といった実績のあるマネジメントがいるものの、ハースはシュタイナーの後任を社内から抜擢する事を決断した。
その理由についてジーン・ハースは「外部から人材を引き入れると、(チームを)学ぶのに半年から1年かかる」としたうえで、小松礼雄の資質がシュタイナーとは「異なる」点を強調し、そのスキルセットがチームを前進させるうえで有益だとの考えを示した。
「ギュンターは、より人間らしいアプローチで人と接していた。その接し方は本当に上手かった」とジーン・ハースは語る。
「アヤオはとても技術的で、統計に基づいて物事を見る。これは我々に足らない部分であり、改善できるところであり、異なるアプローチだ」
「あまりうまくやれていないわけだから、我々には何か違うことが必要だ」
短期的なチーム売却を否定
アンドレッティ・グローバルが11番目のチームとしてのF1参戦を狙う状況の中、ハースF1チームそのものと言っても過言ではないシュタイナーの離脱は、チーム売却に向けたシグナルとの見方も多い。
だがジーン・ハースはF1にコミットし続ける意思を強調し、「我々はお金を稼ぐためにここにいるのではない。レースがしたいから、競争的でありたいからここにいるのだ」と述べ、今後はチームに「より多く関わる」つもりだと付け加えた。