リーマンの悪夢再来を警告する元BMW代表「自動車メーカー撤退ラッシュはあり得る」
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マリオ・タイセンは世界的な経済危機が発生した場合、負の連鎖がF1を襲う事を身を以て知っている。2009年7月、当時BMWのモータースポーツ・ディレクターを務めていたタイセンは、F1撤退の正式発表数日前になって初めて本社からその事実を聞かされた。
2008年のリーマンショックの際にはBMWを始め、ホンダやトヨタ、そしてルノーが経営難を理由に、短期間で立て続けにF1の表舞台から去っていった。だがレッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表が指摘する通り、新型コロナウイルスの方が遥かに大きな打撃となる可能性がある。
© BMW AG / マリオ・タイセンとニック・ハイドフェルド、2009年F1シンガポールGPにて
マリオ・タイセンは4月1日に公開されたポッドキャスト「スターティング・グリッド」の中で、今回の”コロナ・ショック”は12年前の世界規模の金融危機後と同じ様に、自動車メーカーの撤退につながる可能性があると指摘した。
「今はまだ初期段階であり、様子を見守る他にないと思う。今回の件は(リーマンショックとは異なる)全くの未知の問題だ。あと半年は判断できないだろうが、もちろんそれは起こり得ることだ」
撤退候補リストの最上部に位置づけられているのはもっぱらルノーだが、チーム代表のシリル・アビテブールはAutocarとのインタビューの中で、フランスの自動車メーカーだけでなく「10チームすべてがプレッシャーにさらされている」と述べ、ホンダやメルセデス、フェラーリでさえも、撤退の可能性を除外するのは難しいとの考えを示している。
© Renault / シリル・アビテブール
「我々は42年間に渡って、何らかの形でF1に関与してきた」とシリル・アビテブール。
「確かに一貫性が欠如していたし、幾つかの声明や経営陣の交代もあった。その件については理解できる。だが現実には、我々は2つの工場を持ち、1200人の従業員を抱え、今年だけでなく来年に向けての計画も順調に進めている」
「新しいコンコルド(F1の財政を各チームに分配する協定)は良い方向に進んでいるし、レギュレーションも整っている。方向性としては全てが順調だ」
「私は、自分たちが現在揺さぶられている自動車業界の一員である事は認めているし、それはルノーにも当てはまる。だが我々よりも(メルセデスの親会社である)ダイムラーの方が余裕があると言い切れるのだろうか?」
「我々のパフォーマンスがもっと高ければ、こういった質問(撤退の噂)に答える頻度は少なくて済むだろうね」