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国際自動車連盟(FIA)は5日、レッドブル・ホンダら全7チームからの情報開示要求に応える形で、フェラーリ製F1パワーユニットに関する不正疑惑調査のプロセスの一部と、”秘密裏の合意”に至った経緯と理由を説明し、全ての情報を開示する事を拒否した。
昨年のF1では、フェラーリが規格外のストレートスピードを発揮してポールポジションを量産。違法な手段で燃料流量センサーを欺いて不当にエンジンパワーを得ているのでは?との疑惑が持ち上がったため、FIAが調査を開始した。
一連の調査を経てFIAは、マラネッロとの間である種の合意に達し、調査を打ち切った事を先月28日に発表した。「当事者同士の機密」という理由で詳細は明かされず、実際にフェラーリが不正行為を働いていたのかどうかは明らかにされなかった。
フェラーリ製PUを使用していないマクラーレン、メルセデス、レーシングポイント、レッドブル、ルノー、アルファタウリ、ウィリアムズの計7チームは「驚きと衝撃を受けた」として、これに強く反発。3月4日にFIAに対して情報を開示するよう求める共同声明を発表し、訴訟も辞さない構えを示した。
ライバルがFIAの調査報告に憤りを表明したのは自然の成り行きだった。合意内容は全て伏せられ、スポーツにとっての生命線とも言える透明性が欠如していた。仮に違法であればフェラーリは昨年のコンストラクター2位を剥奪される可能性があり、そうなればライバルはより多くの分配金を手にする事になる。
非フェラーリ系チームが共同声明を発表した翌日、FIAは次の声明を発表し、フェラーリが潔白であるとは断定できない状況ではあったものの、これ以上の調査が必ずしも物的証拠に繋がる保証がなかったため、調査を打ち切ったと説明した。
「7つのチームによる昨日の発表を受け、FIAは次の点を明確にしたい。FIAはF1世界選手権に参戦する全ての競技者に対して調査権を持ち合わせており、スクーデリア・フェラーリのパワーユニットに関する詳細な技術分析を行った」
「2019年シーズン中に行われた広範かつ徹底的な調査により、スクーデリア・フェラーリ製PUが何時いかなる時もレギュレーションの範囲内で稼働しているとは言い難い疑念が生じた」
「スクーデリア・フェラーリ側はこの疑惑に強く反発し、PUは常に規制に従っていると繰り返し主張した。FIAは完全に納得したわけではなかったが、この問題は複雑であり、違反を示す明白な証拠を見つけ出す事は実質的に不可能であったため、これ以上の調査が必ずしも決定的な結論に至る事はないと判断した」
「長期に渡る訴訟を行ったとしても結果は不確実であり、また、チャンピオンシップとその利害関係者の最善の利益を考慮した結果、我々はネガティブな結果を避けるために、司法および懲戒規則(JDR)の第4条(ii)に従って、一連の手続きを終了するために、フェラーリとの間で効果的かつ抑止的な和解契約を締結することを決定した」
「この種の合意はあらゆる懲戒制度において不可分なものとみなされている法的手段であり、他の多くの公的機関やスポーツ機関においても紛争処理の際に利用されている。なお和解契約の秘密性については、JDR第4条(vi)に規定されている」
「このスポーツ並びにFIAフォーミュラ1世界選手権の監査機関としての信用を守るために、FIAは必要とされるあらゆる措置を講じていく」
FIAは”守秘性”を盾にして全ての情報の開示を拒んだ格好だが、裁判を厭わぬ姿勢を示している非フェラーリ系7チームはこれにどう反応するだろうか。FIAが声明の中で「この種の合意は他の公的機関やスポーツ機関でも一般的な措置」と説明するところを踏まえると、法廷に持ち込んで口を割らせるのは非常に難しそうだ。