F1、予算上限を更に引き下げ年150億円に着地の見通し…コロナショックが大きく後押し

F1カナダGP公式記者会見に出席した田辺豊治、ギュンター・シュタイナー、トト・ウォルフ、マリオ・イゾラ、フランツ・トストcopyright Red Bull Content Pool

F1のスポーティング・ディレクターを務めるロス・ブラウンは、F1は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを契機として更なる予算削減を目指しており、新しいコストキャップは現行案よりも更に3,000万ドル(約32億307万円)低い1億4500万ドル(約154億8,152万円)に削減される見通しだと明かした。

チーム間競争力の平均化のためにF1は、長らく参戦コストの削減を目指してきた。新型肺炎の影響で、当初2021年に予定されていた新しい技術レギュレーションの導入が翌22年に延期された一方で、コストキャップは予定通り2021年に導入される。

予期せぬ感染症の影響でF1カレンダーは凍結され、大小を問わず全てのチームは厳しい経済的プレッシャーに晒されており、現在の状況は積年の悲願とも言うべきコスト削減策を実現させるという点においては、これ以上ない好機と言える。ロス・ブラウンは4日(月)にF1のチェイス・ケアリーCEOと会談を行った後、英Sky Sportsのインタビューに応じて次のように語った。

「メッセージは明確だ。我々はコストを削減しなければならず、予算上限を更に引き下げるための新たな段階に突入した。長い戦いを経て1億7500万ドルをスタート地点とする事が決まっていたが、現在の危機的状況を受けて1億4,500万ドルへの引き下げが行われる。今後数年間でこれをどの程度下げられるかが議論の的だ」

「詳細は数日中に各チームに通達されるだろう。多くの議論を経て、最終局面に入ったところだと私は認識している。まもなくすべてが明らかになるだろう」

予算が削減されれば、多くの従業員を抱えるチームはリストラなどの構造改革やサプライヤーとの契約の見直しなど、ビジネス環境の再構築を強いられる事になる。また、参入障壁が低くなることでバーニー・エクレストン体制が培ってきた一種の権威性が崩壊するとの懸念もある。

このような背景から、唯一フェラーリのみが1億7,500万ドルを割る厳しいコストキャップに対して声高に反対の立場を示していたが、新型コロナウイルスが事業環境に与える影響はそのスタンスすらをも揺るがすほどに深刻で、全てのチームに支出額の再考を迫っており、コスト削減の実施の目的は「競争力の平準化」から「経済的な持続可能性」へとすり替わったと言える。

コストキャップと同じく2021年の施行が決定している商業規約では、コンストラクターランキングの順位に応じて支払われる賞金の算出方法にもメスが入る。ロス・ブラウンは、メルセデスやフェラーリのようなトップチームとマクラーレンやレーシングポイントのような中堅チームとの間のリソースギャップは、ミッドフィルダーへの分配金が増えることで更に縮まるはすだとの認識を示した。

この記事をシェアする

関連記事

モバイルバージョンを終了