F1:収益8割減、新型コロナによるグランプリ中止で大幅な減益減収

アルバート・パーク・サーキットのバリア広告として掲げられたピレリのロゴcopyright Pirelli & C. S.p.A.

F1を所有するリバティ・メディア・コーポレーションは5月7日(木)、2020年第1四半期(1~3月)の決算を発表した。フォーミュラ1グループ(FOG)の収益は前年同期2億4,600万ドル(約262億2,042万円)に対して84%減の3,900万ドル(約41億5,689万円)、当期利益は1億3,700万ドル(約145億5,897万円)の赤字で大幅な減収減益となった。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による各国政府の政令・対策を受けて、F1は開幕戦から第10戦までの全てのグランプリを中止・延期している。その結果、収益の3本柱であるレース開催権料、テレビ放映権料、そして広告・スポンサー料への影響が懸念されていたが、その実像が明らかにされた。

昨年の同時期にはオーストラリアとバーレーンでのイベントが開催され、今年もこの2レースが行われる予定であったが、今季は新型肺炎の影響により中止・延期された。これによりFOGの本業=レースに直接関連する営業収益は前年同期の1億9,800万ドル(約210億3,920万円)から1,300万ドル(約13億8,136万円)へと大幅に減少(93%)した。

リバティ・メディアは今期のFOGの営業収益について「レース関連以外のスポンサーシップ料のみで、レースプロモーション料や放送料は計上されていない」と説明した。

関連ビジネスによる売上も大きく減少した。パドッククラブやその他イベント関連の活動に掛かる収益、そして放映権料を除くテレビ関連の収益の合計額は、前年同時期の4,800万ドルから2,600万ドルへと約半分ほどに落ち込んだ。

レースに直接的に関係する営業費用は例年、昨季のコンストラクター選手権の順位に応じて支払われるチームへの分配金が最も多くを占めるが、今期はチームへの支払いが計上されなかった。支払いそのものはオンシーズン中の各月末に分割で支払われるものと理解されており、3月末までに開催されたイベントがなかったためとみられる。なお前年同じ時期には9,600万ドル(約102億2,799万円)がチーム側に支払われている。

なおリバティ・メディアのグレッグ・マッフェイCEOは、収益の大部分をF1からの分配金に依存している幾つかのチームに対し、4月末の時点でキャッシュを前払いした事を明かしている。また4月3日を起算として英国政府の経済支援対策に基づく従業員の一時解雇を実施し、更にはスタッフの半数を対象とした給与削減を行っているが、これらは第2四半期の数字に計上されるものとみられる。

開幕を担う予定であったオーストラリアGPは直前になって中止が発表されたため、メルボルンでのレースに掛かる売上は消えたものの、運送費や旅費などの一部費用が発生した。ただしセッションそのものは開催されておらず「重要ではない支払いを繰り越した」事などから、営業費用全体は71%減の4,300万ドル(約45億7,300万円)に留まった。

収益から費用を差し引いた利益は、前年同期の4,700万ドルの赤字に対して、今期は1億3,700万ドルと赤字額が更に拡大した。現時点ではシーズン開幕は早くとも7月頭のオーストリアGPになるものとみられており、第2四半期も厳しい状況が続くことが予想されるが経営基盤は強固だ。

リバティ・メディアは4月22日に、FOGが持つ関連企業の株式および負債などをリバティが持つ同じグループ会社に対して移動することで流動性の高い資産へと振り替えた。この結果FOGは14億ドルのキャッシュを計上し、当面の運転資金を確保している。

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